第123話 男子会

卒業式が終わった昼下がり、夜には彼女たちと過ごす予定が入っているので、昼間の間に元男子応援団員で集まることした。


「先輩方、ご卒業おめでとうございます!!!」


卒業生五人に対して、キラや桃田たち在校生から別れの言葉を受け取る。

キラたちが主になってからは、部員が増えて現在は20名ほどの部員が男子応援団として活動していた。


活動内容は、専属カメラマンとマネージャーを務めてくれる同級生がいたので、その子達の後輩が受け継いでいってくれるそうだ。


「ありがとう。今後はキラ団長の元で頑張ってくれ」


俺がキラの肩に手を置くと、キラは涙を流し始めた。


「先輩の頼りになる背中にたくさん助けられました」


入学当時、キラには色々なことを起きていてそれは彼の心を不安定にさせていた。

だけど、カオル先生の元で普通の生活を送るようになってキラは、女性への嫌悪感を無くして男性として成長を遂げている。


まだ、女性と付き合うまではいかないが、今後の男子応援団を任せることに不安はない。


「キラ、お前は成長した。今では頼れる団長だ。今後の男子応援団を頼んだぞ」

「はい!」


一人一人に声をかけて応援していく。

俺を慕ってくれている団員も多くいたので、涙を見せてくれる奴もいて嬉し泣きしてしまう。


「「「「卒業おめでとうございます!!!」」」」


団員達と別れて、卒業生五人だけが残る。


部室を使うのも今日が最後になるので、五人でお別れ会をすることにしていた。


「改めて、卒業おめでとう」

「「「おめでとう」」」

「ウェーイ」


男子応援団の部室を借りて、飲み物を掲げる。


「みっみんな!」


乾杯をしてすぐにハヤトが立ち上がる。

目にはいっぱいの涙をためて、若干引いてしまう。


「ぼっボクは!!!高校生活がこんなにも楽しいものになるなんて思ってもみなかった!ぜんぶ!全部みんなのお陰だ。ボク……ボクをダンし応援団にサゾッデグレデアリガトウ」


最後の方は涙が出すぎて何を言っているのかわからないが、それでも気持ちは伝わってくる。


「おいおい、今生の別れじゃないんだぞ。俺たちは一生友達だろ?」


クールぶっているヨウヘーも若干涙目である。


「僕はさ……途中から参加させてもらって、ハヤトと二年間だけ男子応援団として活動させてもらった。僕は自分の世界にこもっていて妹がいなかったら皆と出会うこともできなかった。【邪神様】がいたから今の僕がある。僕は芸能界に行く!そう思えたのも皆のお陰だ。本当にありがとう!」


ユタカは涙こそ浮かべてはいなかったけど、立ち上がって深々と頭を下げた。


「ふふ、みんな熱いね。色々、思っていることがあったんだね。

まぁ、僕からは……ヨル団長。みんなを集めてくれてありがとう」


セイヤが俺を見て笑顔を見せる。

最近は髪を伸ばして、ヒカリさんと瓜二つの美少年まっしぐらだ。


「ヨルが、僕に一緒に部活やろうと声をかけてくれたから、みんなが集まって楽しい高校生活が送れたよ。いっぱい悩みを抱えて、いっぱいイベントをして、いっぱい思い出が出来た」


話しながら、セイヤの瞳が潤み滴くが溢れる。


「あれ、はは。泣かないつもりだったのに……はは。うん。僕はね。ヨルが大好きだよ。ここにいるみんなも大好きだ。本当にありがとう」


セイヤの言葉に全員が拍手を送る。


「最後は、ヨル。締めてくれよ」


ヨウヘーの茶化すような言葉で俺は立ち上がる。


「…………」


そして……深々と頭を下げる。


「ありがとう」


俺は四人に向かって心から感謝を口にした。


「ハヤト!」

「ふぇ?」

「お前は最初、本ばかり読んでてムッツリスケベな真面目な奴だった」

「ほっ放っておけよ!」

「はは。でも、俺が筋トレに誘えば最後まで頑張るし。夏帆先輩と付き合ってからは一人の女性を愛するいい男だ。お前はどこに行っても大丈夫だと俺は思う。好きなように生きろよ」


俺の言葉に号泣していたハヤトが笑顔になる。


「ヨウヘー」

「はいよ」

「男子応援団のデザインから音楽……男子応援団を演出して作ったのはヨウヘーだと俺は思っている。ヨウヘーがいなかったらもっと男子応援団は地味で目立たなかっただろう。お前は凄い、天才だよ」

「へへ、わかってるっての。でもさ、ヨルがいなかったら俺の今はないからな」


ヨウヘーは照れくさそうな顔をして、一気に飲み物を飲み干した。


「ユタカ」

「ああ」

「ユタカとは活動できた時間が短い。だけど、俺たちが活動できない間。ハヤトと一緒に男子応援団を支えてもらった。俺からしたら、ユタカの方が男子応援団のリーダーだと思っているぐらいだ。男子応援団に来てくれてありがとう」

「はは、【邪神様】に認めれちまった。ずっと憧れていた人にくぅ~ハァ~泣くつもりはなかったのに、ああ、もうダメだ」


ユタカは俺の言葉の途中から涙を流した。

ユタカにとって【邪神様】が特別であることは、ツキから聞いていたので、喜んでもらえたなら嬉しく思う。


「セイヤ」

「うん」

「お前がいてくれたから物を知らない俺は助けられた。

たくさんの悩みを聞いてくれて、アドバイスをくれてありがとう。

学校に来て初めてあった日から、セイヤは俺に取って参謀であり一番の親友だ」


俺は拳を突き出す。


四人は俺の拳に向かって拳を突き出してくれる。


「男子応援団!!!」


「「「「押忍!!!」」」」


「今日をもって解散する!!!ありがとう!!!!」


「「「「押忍!!!ありがとうございました!!!」」」」


俺たちは、最後に言いたいことを言い合ってそれぞれの道へ向かって歩き出した。

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