第115話 世界の覇者

ニュースでは昨日の出来事がテロの一環として取り上げられていた。


犯人は不明。


高級ホテルを襲った悲劇。


そう綴られた事件の真相を知るのはあの場に居た者達だけだ。


スピカとは……


「クイーンと連絡先を交換して、私と交換しないのは不公平です!」


ということで連絡先の交換を行った。

滞在できる間に、もう一度仕切り直しで会うことを約束してその場を離れることにした。

一応、あれほどの大事件だったこともあり、警察が来て調査などが入ったようだが、レイカに事情を話すと裏から手を回したようだ。


「厄介な相手まで招いてしまったようね」


レイカにしては珍しく爪を噛んで苛立った様子を見せていた。


マリア・クイーンという人物について調べるとすぐにヒットする項目が現れる。


世界一の大富豪クイーン財閥の後継者

世界の半分を指一つで動かせる権力者

世界は彼女のために存在している。


など様々なマリア・クイーンについての記事がネットに乱立していた。


あまりにも有名人だったので調べる必要もないほどの情報量に驚ていしまう。


「凄い人なんだな」


そんな人が俺のワイフになるためにやってきたという言葉に案外悪い気はしない。


そして、年齢を見てさらに驚いた。

彼女は俺の一つ下だったのだ。


世界の覇者たる存在である彼女はいったいどんな世界を見てきたのか興味が湧いてくる。


貞操概念逆転世界に転生して、そろそろ二年が経とうとしていた。

最初こそ、女性に愛されるない日々に思っていたのと違うと思っていたが、最近はやっぱり俺はモテるから貞操概念逆転世界通りなんだと思えるようになってきた。


多少変わった人格の人々は多くいるけど。


見た目が綺麗な女性たちに好かれるというだけでも幸せで、流されるままにどんどん綺麗な女性が寄ってくる日々は楽しくもある。


「だけど、本当にこのままでいいのかな?」


ふと、立ち止まったとき自分の進んでいる道に迷うことはないだろうか?それは人からすれば些細なことに思えるかもしれないけど。

俺にとっては重要な分岐立っているように感じる。


このまま彼女たちとただ幸せな日々を送るのか?

【邪神様】として成功して多くの人に認められる人になりたいのか?


世界の覇者と言われる彼女はどんな世界を見ているのだろう。


覇者はこの世に一人。

王は孤独。


そんな言葉が浮かんでは消えていく。


俺にはみんながいるから孤独を味わったことはない。


だけど、彼女はどんな思いで覇者としての日々を過ごしているのだろう?それは幸せなのだかな?


あの強烈な出会いを経てからどうしても俺の頭にはマリア・クイーンの顔が浮かんでは消えていく。


「連絡してみるか?」


渡されたIDはまだ登録していない。

スピカやレイカから、IDを入れた瞬間から俺の居場所が特定されるから絶対に登録するなと言われた。


「めっちゃ恐いけど……怖いもの見たさってあるよな」


一つ年下の少女と話してみたい。


そう思わせるほど強烈な印象を与えられた。


「兄さん」

「うわっ!ツキ。いつから?」

「ずっといましたよ。兄さんがリビングに来てどうしようか何度も悩んでいるので、声を何度かかけましたが気付いてもらえませんでした」

「それはごめん」


最近、色々なことがあったせいで、ツキと二人きりになることが少なくてあまり話せていなかった。

やっと帰って来た自宅もタエや暗部の人たちに護衛されている状況は変わらない。


「先ほどから何を悩んでおられるのですか?」


ツキが隣に座って、もたれかかってくる。


「えっとな……う~ん。この間、ブリニア王女に会いに行ったときに遭った事件があるだろ」

「ええ。レイカ姉さんから聞きました。兄さんが無事で本当によかったです」

「うん。全然無事だったんだけど。そのときの犯人が凄い人だったんだ」

「凄い人ですか?」

「ああ。ヘリコプターから窓を突き破って入ってきてね」

「危ない人ですね」

「だね」


ツキの感想に俺は苦笑いを浮かべる。

確かに、危ない人に間違いはないな。


「でも、そのときに会ったときの人が凄く印象的でね」

「その女性が気になるのですか?」

「まぁそうだね」

「兄さん」


彼女でもあるツキに他の女性の話をしてしまったので怒られると覚悟する。


「……はい」

「兄さんは、全ての女性を選ぶ権利があります。それがどんな女性が相手であっても変わりません。兄さんが気になるならその女性は兄さんに選ばれたと言うことです」

「えっ?そうなの?」


思ってたのと違う内容に戸惑う。


「はい。兄さん。あなたは世界の王となれる資格を持っているのです。気になったなら落としちゃいましょう。全ては兄さんが思うがままに!」


ツキの瞳が本気だ。


詰め寄られて……


「うっうん」


返事をしてしまう。


思ってたのと違うけど、めっちゃ応援された。




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