第85話 スケベ?

 最近はツキやタエさんと夕食を取ることが多かったのだが、その日はどちらも予定があるということで一人で食事だと思っていると、ユウナがやってきた。



 ユウナと二人きりになるのは体育祭の夜以来で緊張するが、ユウナが手作りで夕食を作ってくれるというので招き入れた。


 材料を見るに肉じゃが?かと思ったが、最後にカレーのルーが出てきたのでカレーを作ることが分かり、二人分のカレーが作れる少し大きめの鍋を用意する。



「ありがとう。一時間ぐらいで出来ると思うから、ヨルはゆっくりしていて」



 ゆっくりと言われても、ユウナが料理をしたところを見たことがない。


 それに風呂にも入ってゆっくりしていたのでやることが無かったりする。




「久しぶりにnewtubeでも見るか」



 最近は色々と忙しくてゆっくりと動画配信を見ていなかった。



 ヒデブンさんは相変わらず人気で一億アクセス達成とか凄すぎだな。



 オトネさんの会社からプロモが出ているのを思い出して、自分たち男子応援団の動画を再生する。


 撮影は大変だったけど。


 良い記念になったな。


 でも、相変わらず歌詞が女子を虜にするとか、俺様の子猫とか慣れない。

 受けはいいのは分かるが、俺のキャラに会っていない気がするんだよな。



「えっ?ヨウヘー新曲出してるじゃん」



 ヨウヘーはオトネさんの下で作曲家として、男性アイドルへ楽曲提供が行われてキラキラしたアイドルたちがヨウヘー作曲の歌を歌っている。

 編曲と歌詞はプロの人に頼んでいるようで、名前が違った。



「ヨウヘーも前に進んでるんだな」



 セイヤも彼女を作って前に進もうとしている。




「ヨル~出来たから運ぶの手伝って」



 動画を夢中で見ている間に、いつの間に料理が完成したようだ。



 カレーの良い匂いがしてくる。



「おっ!まともなご飯だな」


「なに?私が料理出来ないと思ってたの?」


「ちょっとな。料理しているところを見たこと無いからな」


「まぁね。本当はユイ母さんにほとんど作ってもらってるんだけど。部活を始めてからは中学の合宿とかでカレーとハムエッグぐらいは作れるようになったよ」



 簡単な物だけではあるが、まったくしないよりは出来る方がいいだろ。




「なら、ユウナの初料理を頂きますか」



 他の彼女たちと話すときは、ユウナほどの気軽さを感じない。



 ツキとは、兄妹としてのこれまでの関係があるので踏み込めない。



 ラン、レイカ、テルミとはそういう雰囲気にはなるのだけど、どうしても緊張してしまうところがある。



 ツユ、タエとはそもそもいい雰囲気になる機会が少ない。




「ありがたく頂きなさい」




 気軽さと言う意味でユウナと過ごすのは楽でいい。




「いただきます」



 スプーンですくって口に含めば、カレーの独特の味が広がって……普通に美味い。



「美味いよ」


「でしょ。あたしだって出来るんだからね」



 得意げな顔を見せるユウナは嬉しそうに笑う。



 こうしてユウナとゆっくりと話すのは中学時代にメッセージのやり取りをしていた以来だ。



「なぁ、ユウナ」



「何?」



「ユウナは俺の彼女だよな?」



「なっ何よいきなり……そうだよ。どうしたの?」



 慌てるユウナ。


 たぶん、他の子たちならこんな風には聞けないと思う。



「ユウナは、俺とエッチなことをしたいって思うのか?」



「ぶっ!!!」




 ユウナが口に含んでいたカレーを拭き出す。


 俺は吹かれる前に避けたので被害はない。



「汚いぞ」


「ヨルが悪いんじゃない!いきなりそんなこと聞くから」


「だけど、ユウナが一番聞きやすいって言うか、ユウナってスケベだろ?」



 これまで何度か襲われそうになったり、肌を見せてきた回数はユウナが一番多い。


 そこから導き出される答えは、ユウナはスケベってことだ。



「なっ!む~私はヨルだけなのに……ハァ~もういい。それでエッチしたいだったよね?もちろんしたいよ。だって私女だよ。目の前に彼氏がいたら襲いたくなるのが普通でしょ」



 レイカやランさんに比べると小ぶりな胸を張るユウナ。


 運動をしているのでバランスの取れた身体をしているので、お粗末ではないが堂々と言われることでもないと思う。




「そっか……なぁユウナ。最後までするのはまだ怖いけどさ。ちょっとだけしてみないか?」


「えっ?」


「だから、ちょっとだけエッチなことしてみないか?」



 しばしの沈黙が流れる。



 俺はミスったかと思うが……ユウナの喉が盛大に鳴り響く。



 ゴクリ!!!!




「いいの?」



「いいって言うか、俺から言ってるけどな」



「他の彼女たちじゃなくて私で良いの?」



 ああ、そこが気になるところか……



「うん。ユウナが一番気軽って言うか……ユウナがいいなって」




 またも沈黙……



「……わかった」



 しばらく時間が流れてユウナは何かを決意したように一気にカレーを食べ終える。




「ちょっと準備してくるから待ってて」



「準備?」



「いいから」



 促されるがままにカレーを食べ終えて洗い物をする。



「歯磨きしといてね」



 ユウナはそれだけを告げると家を飛び出して自宅へと帰っていった。




「俺も一応用意するか」



 俺は歯磨きをして脱ぎやすい?パジャマへと着替える。



 しばらく待っているとユウナが戻ってきた。



 バスローブ?を纏ったユウナはお風呂に入ってきたのか、少し髪が濡れている。



 それでもリップは塗ってきたのか、唇はプルンとして薄い化粧。



「お待たせ……ねぇヨル。ヨルをその気にさせたら最後までしてもいい?」



「あっああ。俺も初めてでわからないから止まらなくなったらごめん」



「ううん。それはいいよ。じゃあ、ヨルの部屋に行こ」



「ああ」



 バスローブ姿のユウナと共に俺は自室の扉を通った。

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