第59話 体育祭の特典 前半

体育祭の優勝クラスには、学校側が可能な範囲で特典を授ける権利がある。



そして、進学科1-Aの女子たちが願った特典は……



【男子応援団から個別に応援されたい】



という内容だった。



1-A女子25名。



彼女たちが望む相手から応援される権利を、神崎先生から頼まれた男子応援団は、彼女たちのお願いを承諾した。



応援の仕方はそれぞれの女子に任され、男性に配慮をもった応援の仕方を考えなければならない。

内容は本人の許可を得たものだけが可能となる。



制限時間は一人30分。



男性側が延長を申し出れば延長も可能とした。



用意された空き教室にて、毎日一人ずつ相手をする。



俺の待つ空き教室を希望したのは、6名だった。



三森一花

木築梅乃

最上晴美

報上道子

天宮樹里

座敷露



6人の順番が決まったところで初日を迎えた。



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「しつ、失礼します」



ハヤトには悪いと思うが、女子の希望なのでこれは仕方ない。


初日に教室に現れたのは三森一花


彼女と話すのは、一学期の時以来なので少し緊張する。



「こうして二人で話すのは久しぶりだね。イチカ」


「はっはい!名前を覚えていただきありがとうございます!!!」



どんなお願いをされるのか、緊張していたけど。

イチカの方が緊張しているようで、少し笑ってしまう。



「そんなに緊張しないで。イチカのお願いを叶える時間だから、俺に何をしてほしい?」



俺は緊張をほぐすために優しく声をかける。



「はっはい!私は、デッサンをさせていただけないでしょうか?」

「デッサン?デッサンって絵を描くことだよね?」



30分しかない時間を絵に費やしたいという。

意外にたいしたことのないお願いに表し抜けする。

会長のようにみんなの前で頬にキスをさせてほしいというお願いに比べれば可愛いものだ。



「そうです。私、本を読むのが好きなんですけど。

自分で書くのも好きで。今は自分で漫画を書いているんです。

その絵のモデルとしてとってほしいポーズがあるんです」



漫画のモデルってことは、男性が出てくる漫画なのかな?ちょっと興味あるかも。



「いいよ。どんなポーズをすればいい?」


「でっでは!」



イチカが俺に近づいて、ポーズを取らせる。


メガネを外したイチカは、俺の腕を腰と頭へ。

イチカを抱きしめるようなポーズで、イチカを見下ろす。



「よし!このポーズでお願いします。すぐにデッサンを始めます!」



えっ?ちょっとキスされるかと思ったんだけど。



このまま固まるの?



確認しようと顔を動かそうとして



「動かないで!!!」



めっちゃ怒られた!!!


とりあえず固まったまま、20分が過ぎた。


説明を入れるとそろそろ……



「よし!あっあのありがとうございました!!!すみません。ずっと同じ姿勢でしんどかったですよね。本当に本当にありがとうございます!!!これで作業が捗ります!!!」



イチカは何度もお礼を言って空き教室を飛び出していった。


ずっと同じ姿勢で疲れた身体はストレッチをしてから教室を後にすることになった。



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二人目は木築梅乃



「黒瀬君。いえーい、来ちゃった」


「ウメノ。僕を選んでくれてありがとう」


「もっもちろんだし。あーしは、最初からヨルッち押しっていうか……もう、あのね。あーしは褒めてほしいっていうか……」



照れくさそうにお願いを口にしようとして言い淀む。



「いいよ。ウメノを褒めればいいんだね。それこそ応援団の役目だから大丈夫だよ」


「はっはぁ~別に……お願いします」



恥ずかしそうにウメノが俺の前に座る。



「ウメノは面倒見がよくて、始めて話したときもイチカを助けていたよね。

男子応援団でも、動画撮影をしてくれてるってセイヤに聞いてるよ。

いつも応援団のことを見てくれてありがとう」



俺はふと、テルミ先輩にした応援を思い出す。



「ウメノ、目を閉じて」


「えっえっ?」


「いいから、俺を信じて」


「はい!」



俺は立ち上がってウメノの横で膝を曲げる。


座っているウメノの耳元へ声を発する。



「ウメノは美人で、いつもみんなのことを気遣える優しい人だよね」


「ふぇ!耳元!!!」


「ギャルっぽい話し方をしてるけど。言葉の端々に人を気遣う綺麗な心が見えてるよ。いつもありがとう。ウメノがいるからクラスのみんなも俺も助かってるよ」



こうして、10分ほど耳元で褒め続けた。


最後の方は可愛いとか、良い匂いとか、もう自分で言ってても変態的な言葉になっていたけど……大丈夫かな?



「ハァハァハァハァ」



ウメノ自身は、途中から呼吸が荒くなって動悸があるのか胸を抑えていた。



「ウメノ?大丈夫?」


「ぜっぜんぜん平気だし……どんとこいって……一生追っかけするし……やっぱ神!!!!」



何やら息も絶え絶えでウメノは教室を出て行った。



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三人目は、最上晴美



「失礼します」


「ハルミさん。こんにちは」


「はい。こんにちは。えっとイチカとウメノから凄かったと聞いてます」


「二人のお願いを聞いただけなんだけどね。ハルミさんは何をしてほしい?」



正直、合宿のときもあまり話しておらず、ヨウヘーとセッションをしていたので自分とは関わりがあまりなかったので意外な人物だ。



「あっあのですね……にっ匂いを嗅がせていただけないでしょうか?」


「へっ?」


「ひゃ!やっやっぱりお嫌ですよね。すいません」


「あっいや。全然嫌じゃないよ。えっと、どこの匂い?恥ずかしいところじゃなければいいよ」



脇とか股間は嫌だなぁ~



「あっあの、首と頭でお願いします」


「首と頭?ならいいかな?」


「ありがとうございます!!!」



俺はハルミさんが嗅ぎやすいように椅子に座って目を閉じる。



「いきます!」


「はい」



そっとハルミさんが近づいてきて、俺の首筋に鼻を近づける。


「ス~」


小さな息を吸い込む音。


ハルミさんから女子らしい。甘い香りがして……嗅いでいるのか、嗅がれているのか……



「ハウッ!」



匂いを嗅いでいたハルミさんから奇声が上がる。



「えっ?大丈夫?」


「だっ大丈夫です……あまりに良い香りで!!!」



良い香り?そんなこと始めて言われたけど。



「あっあの……頭の方も」


「うん。どうぞ」



そのままジッとしていると、頭にハルミさんが近づいてくる。



「くんくん、ハァーハァー、スースーうふ」



何やらもの凄い嗅がれてる……それから10分ほど、首とか頭を嗅いでいたハルミさんが満足したのか離れていった。



「あっあの……今日はありがとうございました……出来れば、他の子には何をしたのか秘密にしていただければ嬉しく思います」


「了解」


「ありがとうございます。それでは……」



教室を飛び出していくハルミさん。


あれだな……テルミさんは声が好きそうだったけど。


ハルミさんは匂いが好きで、姉妹でそれぞれ好きなモノがあるんだな……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがき


どうも作者のイコです。


妹、ツキの話を書くとコメントが荒れますね(^_^;)

楽しく読ませて頂いております。


皆さまの応援のお陰で100話達成できました。

本当にありがとうございます。

モチベーションを維持出来のは本当に読んでくださる方がいるからだと思います。



また、【僕はエッチである】、過去に書いていた作品ですが、連載を再開しました。

読んでレビュー頂けたら嬉しく思います。

皆さんの暇つぶしになれば嬉しく思いますので、どうぞお立ち寄りください^ ^



第三章も中盤を超えました。

残り半分頑張ります!

どうぞ、お付き合いください(=´∀`)人(´∀`=)


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