第48話 体育祭 序
体育祭は青葉高校の大イベントとして恥じない巨大な規模で開かれる。
その期間は三日間もあり、
一日目は球技競技
二日目は陸上競技
三日目は運動会競技
の三日間に分けられる。
「運動会競技ってなんだ?」
教えてセイヤモ~ン
「騎馬戦、棒倒し、借り物競争、玉入れ、綱引き、二人三脚、応援合戦、ダンス合戦、組体操とかだよ。
一応陸上競技ではあるんだけど。運動会特有の競技ってことで、青葉高校では運動会競技って言われるみたいだね」
マジでこいつ、何でも知ってやがる。
「そんなことよりも、僕等は今回競技には参加しないけど。いくつかの競技の応援にいくことが決まってるんだ。今年は僕らとチア部が応援に走り回るから応援合戦も中止だそうだよ」
体育祭に特殊な参加をする男子応援団のメンバーは、早朝に部室へ集められた。
セイヤから最終打ち合わせをするという連絡がきたからだ。
ヨウヘーは来るだけ来て、早々にベッドに倒れて眠りについた。低血圧で朝は弱いらしい。
実際、競技が始まればヨウヘーが一番機材を運んで音響として裏方にと体力を使う。
本番は誰よりも真剣に動いてくれるので、問題はない。
ハヤトは、夏休みの間にボディーガードの人と体力作りを頑張ったようだ。
朝からシャキッと目を開いて本を読んでいる。
「他の男子も競技はしてるのか?」
「うん。普通に男子の競技もあるからね。
参加する男子は少ないから、運動している男子を見たい女子は見学に行くみたいだよ。
結構人気もあるみたいだね」
一学期のハヤトを思い出して、あれが平均だとするとショボい結果になりそうだ。
「まぁ、俺たちには関係ないか?」
「そうだね。男子応援団の目的は女子を応援することだからね。それで?今日はどこの応援に行くの?」
球技大会は、各クラスでも人気の球技に参加者が集中する。
ただ、スポーツ科の面々は推薦を受けて入学した競技には参加できない。
サッカー部に推薦入学した者は、体育祭では、サッカーの試合には出てはいけないということだ。
ただ、スポーツ推薦をもらう者達は総じて運動神経が高いので他の競技に出ても活躍する者が多い。
「1ーA組は何に多く出てるんだ?」
「クラスメイトの応援?う~んと……ほとんどがドッジボールだね。
体育祭は全三日間で、各学年から優勝クラスを選出するんだけど。
得点を競い合うクラス対抗戦は、競技によってポイントが違うみたいだね。
皆二つ以上は参加しているみたいで、他にもチラホラと分かれてはいるよ。
一番多いのがドッヂボールで、続いて卓球かな?」
セイヤが体育祭要項なる分厚い冊子を読み上げながら説明してくれる。
「ドッジボール?意外だな?」
「そう?他のクラスでもドッヂボールは人気があるみたいだよ。
参加人数は一クラス15名まで。
補欠が認められていて。
他の競技との併用可。
何よりポイントが一番高いみたい」
なんでポイント制なんだ?各クラスで対抗する意味があるのか?
「ちなみに優勝者には、学園側から願いを一つ叶えてもらえる権利が与えられるらしいよ」
「願いを一つ?」
「うん。まぁだいたいがスポーツ科が優勝して、各スポーツ科の部費アップとか、今年の遠征場所の宿泊を豪華にとかみたいだね」
学校側も意気な計らいをするもんだな。
「まぁ今年はちょっと趣向が変わった願いを持っている人が多いみたいだけど」
「変わった願い?」
「僕らだよ」
セイヤが男子応援団メンバーを指さして賞品だという。
「はっ?」
「だ・か・ら~優勝したら、男子応援団に応援してもらう権利だって。
まぁいつもみたいなゲリラ的な応援じゃなくて、水泳部にしたみたいな決起集会?をしてほしいって子が多いみたい」
確かにあれは初依頼だったから気合を入れて取り組んだ。結構手間がかかるし恥ずかしいので。
あれ以降は決起集会は無しにした。
試合会場に乗り込んで歌って踊るゲリラメインにしたんだったな。
「地道な活動が認められたってことだな」
「地道ねぇ~まぁそうかな?ヨルにとっては地道……なんだろうね」
セイヤは遠い目をして隣の部屋へと視線を向ける。
会議を行っている部室は、ほとんどリラクゼーションルームと言ってもいい。
ゆったりのんびりアイテムが揃っており、ベッドやソファー、リクライニング椅子などがメインだ。
隣はほとんどがセイヤとヨウヘーの作業部屋と化している。
他にも倉庫として、衣装とかグッズも置いているそうだ。
「ハァ~僕もね。ここまで規模が大きくなるって思ってなかったんだよ」
椅子に座ったセイヤは燃え尽きたように真っ白になる。
元々髪が白銀なので、白さが際立つ。
「毎日、毎日、撮影した動画を10分くらいに編集してnewtubeに流さないといけないような義務感にとらわれて……
コメントで、グッズとかブロマイドを販売してほしいって言うから、商売チャンスだと思ったら在庫が足りないぐらい飛ぶように売れて……
ねぇ、ヨル。僕はね、ヨルと二人で楽しく部活を出来ればよかったんだよ……」
え~グッズ売るの止めたらいいと思うけど。
「凄く売れるんだよ!もうやめるなんてできないよ!
だって見たこともないお金が口座に入ってくるんだよ!!!」
メッチャ金に目がくらんどるがな!!!
貞操概念逆転世界でも、やっぱりお金はほしいのか???
「セイヤ!ステイ!」
「はっ!」
「いいか、俺らは高校の部活動として活動をしてるんだ。商売でやってるんじゃない。
商売をしたいと思うなら、会社にして給与を払って人を雇え!」
もう何言っているかわからん。
「それだ!!!そうだよ。一人でやるからしんどくなるんだ。募集をかけて……僕がやっている編集を外注すれば……ありがとうヨル!僕は自由だ!!!」
セイヤも色々大変だったんだな。
今度からは全部を任せるんじゃなくて、もう少しこいつの事も気にしてやろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます