第15話 応援

平日を全て使って部活見学を行ってはみたが、所属したいと思う部活に出会うことが出来なかった。



どこに属しても女の子たちと交流がもてることは間違いない。だけど、ここに属したいと思う部活に出会えていない。



文化部を一人で回ったとき、セイヤに群がる女子を見ることはなかったが。

女子はそれぞれに高校生活を楽しんでいた。

邪な気持ちで邪魔をしてはいけないように思えた。



「おはよう」



「ああ、おはよう」



週末になり、朝からセイヤと待ち合わせをしてサッカー部の応援に向かう。

約束したということもあるが、週末まで部活を決められなかった俺はセイヤと話したいと思ったからだ。



「今日はどこまで行くんだ?」



青葉高校校門前で待ち合わせした。

セイヤに目的地を訪ねる。

本日サッカーの試合が行われる場所を俺は知らない。



「何言ってるんだよ。ここでするんだよ」



「ここって、青葉高校で?」



「そうだよ。ドームでやるのは全国大会の決勝戦だけだけど。普通の予選はグランドの整備されたサッカー場でやるんだよ」



セイヤに連れられてサッカー場へやってくる。

多くの高校が集まり予選大会が開かれていた。



「これだけの女の子が集まると壮観だな」



スタンドの観戦席には男性専用座席があり、席はチラホラとしか埋まっていなかった。

他の席に座ることも考えたが、他の席には他校の応援に来ている女子生徒がいたので、邪魔にならないことを考えて男性専用座席を選んだ。



「……ねぇ、ヨルは女の子が好き?」



席に到着して、女子たちを眺めているとセイヤがそんなことを言ってきた。



「うん?どうした?まぁ男だからな。普通に好きだぞ」



セイヤの意図していることがわからず、サッカーをする女子たちを見ながら気の無い返事をする。



「普通にか……僕はね。ちょっと最近、女の子が怖いなって思うようになってきてるんだ」



話題が思っていたこよりも深刻そうだったので、セイヤの顔を見る。



「怖い?」



「うん。ヨルが今週は一人で行動している間に、僕は倉峰さんと一緒に行動してたよね?」



倉峰が友達がいないと生徒会室で聞いたので、ヒロインと主人公をくっつけるために配慮したつもりだ。



「ああ」



「倉峰さんって、一緒に行動してると暗い所に連れて行こうとしたり、二人きりになろうとしてくるんだよ」



倉峰が残念美人なのは知っていたが、そこまで誘うのが下手な肉食系女子だとは知らなかった。



倉峰……露骨すぎるぞ。



「それにね。皆、僕は優しくて接しやすいって言ってくれるのは嬉しいんだけど。運動部のときみたいに、もみくちゃにされるのはちょっとね」



俺からすれば羨ましい光景だったが、セイヤには苦痛だったようだ。



「体をまさぐられたり、服を脱がそうと手が伸びてくるんだ……」



うわ~肉食女子の欲望満載じゃねぇか!!!

普通の世界でも、女子を囲んで男子が胸触ったり、服を脱がせば犯罪だぞ。



「高校に入ったときは、男子も女子も別に大丈夫だと思ってたんだけど。

最近はね……あと家族に聞いたんだけど。中学の時に起きた事故って女の子のせいで起きたんだって」



超絶イケメンで陽キャラだと思っていたセイヤの告白に、俺はなんとも言えなくなってしまう。



もしも貞操概念逆転世界の男として生を受けたなら、草食系男子になる者達は、女子から受けるイヤらしい視線や無遠慮な痴漢行為に精神的に追い詰められていくのだろう。



そうすれば行為を求められすぎて、気持ちが萎えてしまう。



「ヨルは、凄いよね。いつも堂々としていて……」



なんて答えればいいのか……俺にはわからなかった。



歓声が上がり、青葉高校のサッカー部がゴールを決めた。



決めたのは宗田愛さん。

応援に来てほしいと言っていた女子だ。



「なぁ、セイヤ」



「なに?」



「女子の事……嫌いか?」



セイヤは女子を怖いと言った。



女子が原因の事故に遭い。

優しく接することで、無遠慮な視線を浴び。

倉峰のようなスケベな奴に暗闇に連れ込まれそうになった。



もし、セイヤが怖いと思って、女子を嫌うなら……



「……まだ、わかんないよ」



「そうか、ならさ顔を上げて見て見ろよ」



活躍する馬場鹿江さんと宗田愛さんを指さした。



「二人がどうしたの?」



「頑張ってると思わないか?」



「それはスポーツだからね。勝つために頑張るんじゃないの?」



「ああ、スポーツもさ。恋愛も勝つためにみんな頑張ってるんじゃないかな?」



「どういう意味?」



何かを伝えなければ、セイヤは貞操概念逆転世界に飲み込まれてしまう。

他の草食系男子たちと同じダメな男になってしまうかもしれない。

それがダメなことなのか、良いことなのかはわからない……だけど、それは正常な状態じゃなくてやっぱり変だ。



「不器用な奴。上手く出来る奴。才能のある奴。才能の無い奴。

色んな子たちがいて、自分の得意なことをアピールして選んでもらうために頑張ってるんだよ」



文化部の女子たちが俺に向けてアピールしていたのもそういう理由なんだ。



「今日、サッカーが得意なあの子たちは、俺たちに応援してもらうために力を発揮してる。

そして、頑張ったことを褒めてほしいと思ってるんだ」



セイヤが二人の姿を追いかける。



「お前は彼女たちに応援してほしいと言われて、ここにいるんだろ?」



「それは……怖いと思う前だったから」



「確かにそういう面だけで見れば、女子は怖いかもしれない。

だけど、まだわからないから迷ってるってことだろ?



なら、もっと女子を知ればいい。



頑張ってるところも。

可愛いところも。

どんな風に考えてるのかも。



スケベなことを考えて男子に興味があって、襲ってしまいたくなる衝動を抱えた彼女たちを知ればいい。



みんな、お前に選んでほしいと思ったから、頑張ってる姿を見てほしいはずだ」



俺は立ち上がる。



「宗田さん!馬場さん頑張れ!!!」



声援を送る。



他の男子は誰も応援などしない。

他の高校の女子達は、男子である俺が大きな声を出したことで驚いた視線を向ける。



俺の声が届いたからか、宗田さんは拳を突き上げた。

馬場は真っ赤な顔をして、走り抜けた。



反応は違うけど、二人の動きが見違えるほどよくなった。



「なぁ、俺たちは男で、彼女たちは女性として男を求めている。それは当たり前のことで気持ち悪いことじゃないと思うんだ」



俺は伝えたいことを伝えて、大きな声で声援を送くることに専念した。



「……やっぱり……ヨルは面白いね。女子なんかより、ヨルの側にいる方が僕は面白いと思っちゃうよ」



セイヤが独り言を呟いていたが、俺は声援を送ることに集中していて聞こえなかった。







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