side幼馴染 ー 1

【青柳悠奈】



私には幼い頃から結婚を約束した相手がいる。

親同士が決めた婚約者ではないけれど。

私の心では結婚を約束したのだ。



あれは、私が2歳の頃。



私は一人の男の子と出会ったことで、この世界に意識を持った。



名前は黒瀬夜君。私の最愛の人。



出会いは母同士が友人なので、子供の間に友達に成ってほしいと紹介された。


この世界では珍しい男の子、小さな私は性別などわからなかった。

だけど、私は物心ついたその日に感じたのだ。



「ずっと一緒にいようね」



ここまでハッキリと口に出来たわけじゃない。

ただ幼い私がそう言うと、ヨル君は頷いてくれた。


これは将来を誓い合った仲であると言えるだろう。



私の世界はヨルと共にある。



幼稚園、小学校、中学校。ずっと同じ学校に通った。

毎日私が迎えに行って学校に行く。

妹のツキちゃんがいるので、二人でというわけにはいかず。

常に三人でずっと一緒だった。



でも、中学生になる頃には私にも思春期の恥ずかしさが生まれてきた。



「ねぇねぇ。青柳さん。黒瀬君と幼馴染なんでしょ?恋人なの?」



思春期になれば、同級生の子たちがからかうようにそんなことを聞いてくる。


私は恥ずかしくなって



「あっあんな奴、恋人じゃないし。むしろ男なんてキモいじゃん」



心とは裏腹に私は否定を口にしてしまった。

ヨルに聞かれた訳じゃないから問題ない。

友達に茶化されるのが嫌で、学校では距離を取るようになった。



幼い頃から始めていた水泳の大会に出るようになり優勝できるようになった。

ただ、中学生になってからヨルの態度がおかしい。


ヨルは元々人と話すのが得意な方ではなかった。

どうやら自己紹介でやらかしてしまったようで、クラスでも浮いていた。



同じクラスではないし、学校では距離を取っていた私は水泳の朝練などで一緒に登校できなくなった。

どんどん、ヨルに会う時間が減っていった。

それでも毎日のように夜になれば、mainにメッセージを送って連絡は取り合っていた。



ヨルとの距離が開いていく。

そんな風に寂しく感じていたとき、ヨルの妹であるツキちゃんからヨルを他の女たちから守る作戦を持ち掛けられた。


ツキちゃんはたまにうちに泊まりに来て、ヨルについて語り合う。



「ユウ姉、お兄のカッコ良さがトドまることを知らなさ過ぎだよ!」



ツキちゃんは重度のブラコン。

私はツキちゃんの理解者だ。



「分かる!分かるよ。ツキちゃん。ヨルはヤバい!何がヤバいって。中学生であのエロさだよね。大人っぽい容姿。小学生時代から鍛えられた身体。話すのが苦手なせいで寡黙でクールな雰囲気。全部がエロい!」



他の子の前では恥ずかしくて言えないことも、ツキちゃんの前でなら何でも話せた。



ツキちゃんとならヨルを分け合っても嫌じゃない。



「中学生になって、ますます大人っぽくなったよね。私も幼馴染だから毎日のように紹介してって周りの子たちに言われてるよ」



私が恋人ではないと言ってから、色々な女子から紹介してくれと言われていた。

そのたびにイラっとしながらも丁寧にお断りしていた。



「まだクラスの女子は、お兄に声はかけていないんだよね?」


「あ~あれはね。ヨルが自己紹介のとき。恥ずかしくて話せなかったんだって。

小さい声で名前を言って座ったら、周りの女子はヨルの容姿と話さない寡黙さに、尊い存在として扱うようになったんだよ」



自己紹介を失敗したことを話してあげると、ツキちゃんは気持ち悪い顔でニヤニヤと笑っていた。

ツキちゃんはヨルのことになるとちょっと変になる。


ただ、ツキちゃん以外にも男性の兄弟を持つ女子は、ブラコンを拗らせる子が多いと聞くので、普通のことだと納得している。



「やっぱり間違ってなかった。潜入したときに、クラスの女子数名が恥ずかしそうにお兄を見ていたからね。だからね……」



恥ずかしそうにしていた?えっ?ヨルを他の女子が見てたの?ヨルが誰かに取られる?


ツキちゃんの言葉を聞いて、私の胸は締め付けられる痛みに襲われた。

それは今まで感じたことのない痛み。

幼い頃からヨルには私しかしなかった。

ツキちゃんは姉妹で、ヨルに一番近い女の子は私だけ。



「ヨルにキモイって言う?」



ツキちゃんの作戦はヨルを精神的に孤立させるというものだった。



「そう。お兄は話すのが下手で他の子たちから情報を得ることがないでしょ。そこで、お兄はキモイから他の女子から避けられてるから話しかけちゃダメって言えばいいんだよ」



キモイというのはツキちゃんだけ、私は嫌われない。


内心、ほくそ笑む私がいた。

他の女子にヨルを渡したくない。



それはにも



ツキちゃんから、裏から【お兄に話しかけない協定】を作ってほしいと言われた。


それは簡単なことだ。だってヨルは自分から女子に話しかけない。

話が出来る女子は私だけ。



「なるほどね……ツキちゃん。あんた……天才だね!そうすれば、私とツキちゃんだけがヨルを独占できるじゃん!」



私は運動部の子達にお願いして、ヨルに近づく女を牽制するように仕向けた。


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あとがき!


ここまで読んで頂き本当に感謝です!


1万pv達成。

日間ラブコメランキング5位!

日間総合ランキング21位


になることが出来ました!


私の作品としては初めての出来事でめちゃくちゃ嬉しいです!


これも読んでくださる方々のお陰です!

本当にありがとうございます!


ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•

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