第6話 クラスの自己紹介

入学式が終わり、各クラスへと生徒が分かれていく。



進学クラスは1~11クラスまであり、女子が一クラスに26名、男子が4名の30人。男子生徒が最後に教室の後ろの扉から入っていく。

最後尾が男子の席になるように配慮されていた。



窓際の一番端に名前が記されていたので席についた。



男子生徒が全員着席すると、教卓に手を突いた美女が声を発する。



「まずは、入学おめでとう。私は君たちのクラス担任をする神崎椿だ。この1ーA組は、進学クラスの中でもトップの成績を納めた者達上位26名集められている。

我が校は成績によって女子は一年ごとにクラス替えが行われることは知っていると思うが。それがどういう意味を成しているのか、我が校に入学したなら知っていると思うのであえて説明はしない」



先生の言葉に女子たちから闘志が漲っているような気がして、教室の熱が上がったような気がする。



「よし。お前たちの気持ちは伝わった。それじゃ自己紹介からしていくぞ」



先生の呼びかけに応じて自己紹介が始まる。



「はいはい。一番は私」



そういって立ち上がった廊下側の一番先頭に座る女子生徒は見知った顔だった。

朝に出会った巨乳ギャルが、後ろを振り返ってクラスメイトたちを見る。



「私の名前は天宮樹里です。趣味は手芸とコスプレ。アニメとかも大好きだよ。部活は手芸部に入るつもりです。みんな仲良くしてね。よろしく」



明るく元気にそして、その笑顔は男子全員に向けられていた。

彼女は彼女らしく、全力で男子へアピールして見せた。

そこから女子の自己紹介は一人一人男子へのアピールタイムのようだった。


俺の目の前に座っていた最後の女子が立ち上がる。



「皆さん、初めまして倉峰飛鳥です。ここにいるみんながライバルだと思っています。勉強だけでなく、恋愛でも絶対に負けません」



それまで女子たちに向けていた視線を、振り返ってセイヤ一人へと注ぐ。



他の女子の視線もセイヤに集まって、セイヤは驚いた顔をした後。



ニッコリと笑顔を向けた。



綺麗な顔をしたセイヤが笑えば、クラス中で悲鳴にも似た歓声が上がった。



「はいはいはい。お前ら騒ぐな。他のクラスに迷惑だろ。女子の自己紹介が終わったな。それじゃあ男子諸君。挨拶をしてくれるかい?」



神崎先生が、配慮したように声をかけて廊下側の男子から挨拶をしていく。



隣のセイヤの番になり席を立つ。

女子たちから生唾を飲み込む音が聞こえてくる。



「僕の名前は白金聖也です」



それまでの男子生徒はどこかオドオドとした雰囲気で自己紹介をしていた。

セイヤはハッキリとした口調で、クラスメイトの女子たち一人一人を見るように優しく笑いかけてゆっくりと名を名乗る。



それをされた女子は、まるで自分に言われたような錯覚を覚えてしまう。



理想の王子様が自分に笑いかけてくれた。



これだよな……俺がカク〇〇で読んでいた貞操概念逆転世界の主人公の行動。

キラキラと輝いていて、その笑顔で無自覚に女子たちを魅力していくんだ。



「中学時代に事故に合ってしまって記憶がありません。常識外れなことをしてしまうかもしれないです。皆にも迷惑をかけてしまうかもしれません。それでも仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」



笑顔の後にやってくる女子たちの庇護欲をそそるエピソード。

それでも健気に女子たちに仲良くしてほしいと正直な気持ちで発せられる真摯な言葉。



このクラスの女子で誰がセイヤを嫌いになることが出来るだろう。

嫌いなる女子はいないと断言できる。むしろ、守ってあげたい。私がセイヤを支えるんだと思う女子たちが量産されることだろう。



「次は、ヨルだよ」



セイヤに声をかけられて、いつの間にかセイヤが座っていた。

女子たちの視線が俺に向けられていることに気が付いた。



ここで慌てて立ち上がったところで、セイヤが作り出した空気をぶち壊すだけだ。



俺はゆっくりと席を立ち。一呼吸おくように女子たちに視線を向ける。



「黒瀬夜だ。よろしく」



挨拶だけを口にすると席についた。

女子たちだけでなく男子も驚いた顔をしている。



「ヨルってさ。クール過ぎ」



隣のセイヤだけは楽しそうに笑っていた。



「んっゴホン。えっと、全員の自己紹介が終わったな。それじゃあ皆一年間よろしく頼む。今日はクラスメイトの顔合わせだからな。明日からは本格的な授業が始まるぞ。それじゃあ起立、礼」



強引に締めくくった神崎先生に申し訳なさを感じつつ、セイヤによって醒めてしまった心はどうしようもない。



手荷物らしき荷物も無いので、早々に立ち上がって教室を出ようとする。



「待ってよ。ヨル」



呼び止められて振り返れば、セイヤと数名の女子が俺を見ていた。



「……どうした?」



一呼吸おいて返事をする。



「えっとね。この後、同じクラスになれたからみんなで親睦会に行こうって、なってね。ヨルにも声をかけさせてもらったんだ。他の男子は帰っちゃったんだけど。ヨルも一緒にどうかな?」



セイヤの後ろにいる数名の女子たちは、俺が視線を向けると怯えるように視線を逸らす。中学時代と同じだ。

セイヤは声をかけてくれるが、女子たちはどうやら俺を避けている。



「声をかけてくれたのに、悪いな。今日はやめとくよ」



醒めた気持ちのまま向かっても、盛り上がれる気がしない。

何より、俺が一緒に行っても盛り上がらないだろう。



「そっか、じゃあまた今度ね」

「ああ。またな」



セイヤはしつこく食い下がることなくすんなり引いていく。


女子たちもホッとしたのか、「ハァー」に大きく息を吐く女子が多くいた。


やっぱり行かなくて正解だったと思って帰路へ着いた。


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家について、気が抜けていたのだろう。

某有名洋服メーカーで購入したシンプルな服装に着替え。

俺は何かをする気力がわかなかったので、リビングのソファーで横になり眠ってしまった。


どれくらい寝ていたのだろう。


目が覚めると日が沈んで、ツキが帰ってきていた。


「あれ?俺寝てたんだ。ツキ、おかえり」


睡眠から覚醒したことで、いつもより滑らかに口が動いた。


毎日、部屋で発生練習をしたり、鏡で話す練習をしていた成果が出たのかもしれない。


「たっただいま」


俺から声かけられたツキは、顔を真っ赤にして驚いた顔をしている。


相変わらずキモイと嫌われているのかな?妹のツキとは仲良くしたい。



「そろそろご飯かな?今日は俺が作るよ。一緒に食べよ」



俺は料理が上手く出来るわけではないが、チャーハンが食べたくなった。



ご飯を二人分ボールに取り出して冷ましておく。



卵をかきまぜ、ハムを切ってレタスを千切る。

フライパンに油を注いで、卵をさッと焼き上げる。

焼目が付いたら取り出して、ハムを焼いて色が付いたところでレタスを入れる。

その上に冷ましたご飯を入れて、最後に卵をぶち込んで塩コショウと、軽く醤油で

整える。



味は、まぁ普通だ。



「はい。食べよ」



インスタントのわかめスープを付けて完成とした。



「……お兄。ご飯作れたの?」


「ううん。newtubeで見た」


太った男性がやってるnewtubeは、あれからも見ている。

最初こそ笑顔で再生数を稼いでいるように見えたが、料理をしたり、歌を歌ったり、ダンスをしたりとエンターテインメントとして頑張っていることが分かるので見続けていた。



「お兄の料理……」



「いやだった?」



やっぱりキモイかな?と思って問いかける。



「ううん。食べる」



ツキは席についてチャーハンを食べ始めた。

自分が食べても普通なので、美味しいとは思わないけど。

まぁ初めてにしては上手くいった方だ。



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