第17話『ゴールデンウィークの始まり』
4月29日、金曜日。
今日は昭和の日で祝日。なので、学校はお休みだ。
そして、今日から今年のゴールデンウィークがスタートする。調津高校は暦通りのお休みなので、今日から日曜日まで3連休、来週の火曜日から木曜日まで祝日で3連休という形になる。
連休の間は一日中バイトのシフトを入れている日もある。それでも、漫画やアニメやラノベといった好きなものを謳歌するゴールデンウィークにしたいな。あと、最近始めたジョギングも。
ちなみに、今朝は体調が回復してから初めてジョギングした。気候のいい時期だから、気持ち良くジョギングできた。
また、今年は11年ぶりにあおいが調津にいる中で迎えたゴールデンウィークだ。あおいと楽しく過ごせたらいいなと思っている。もちろん、愛実とも。
今年はどんなゴールデンウィークになるだろうか。楽しみだな。
「今週の話も面白かったね!」
「面白かったな」
「面白かったですよね! 何度観ても面白いですっ!」
午前11時過ぎ。
あおいと愛実が俺の家にやってきて、昨日の深夜に放送されていた日常系漫画原作のアニメと、ラブコメのオリジナルアニメを観た。俺が淹れたアイスティーを飲みながら。
日常系のアニメの方はみんな原作を持っているから。ラブコメのアニメの方は第1話を観たらみんな面白いと思ったから。なので、毎週こうして3人で一緒に録画したものを観ることにしているのだ。
また、どちらのアニメも結構遅い時間に放送されている。今日が祝日なのもあって、あおいはリアルタイムでも視聴したとのこと。さすがはあおい。
「いつもは放課後か土日に観ていますから……こうして、金曜日の午前中から一緒に観られて嬉しいですっ!」
「そうだな」
「さっそく、ゴールデンウィークらしい時間を過ごせているよね」
「ですねっ!」
あおいは元気良く返事をすると、愛実と一緒に楽しく笑い合っている。
普段なら学校で授業を受けている。そんな時間に、あおいと愛実と一緒に前日深夜に放送されたアニメを観られる。愛実の言う通り、さっそくゴールデンウィークらしい時間を過ごせているなぁ。それがとても幸せだ。そう思いながら飲むアイスティーはとても美味しい。
俺がアイスティーを飲んだからなのか、あおいと愛実もアイスティーを一口。それぞれ、自分専用のマグカップを持っているので、飲んでいる姿がとても可愛く見える。
「……アイスティー、冷たくて美味しいな」
「美味しいですよね。最近は冷たいものがとても美味しく感じられるようになりましたね」
「そうだね。結構温かい日もあるもんね。これからは冷たいものがもっと美味しくなりそう」
「そうでしょうね」
「愛実の言う通りだろうな」
そう言って、俺はアイスティーをもう一口。ほんと、冷たいものがいいなって思える時期になってきたな。
そういえば、最近もバイトしていると、アイスのドリンクを注文されるお客様が多いな。中にはLサイズを頼むお客様もいる。期間限定で発売されているアイスのみのドリンクを注文されるお客様も多い。
「あの……話が変わるのですが、涼我君と愛実ちゃんって日曜日の予定はどうなっていますか?」
「日曜日は特に予定ないよ」
「日曜日なら、俺も特に予定はないよ。土曜日はずっとバイトだけど」
「そうですか。それは良かったです!」
愛実も俺も日曜日がフリーなのが分かって、あおいはとても嬉しそうにしている。日曜日に何かあるのかな。
「実は日曜日に、都心の方でオリティアという同人誌即売会がありまして。オリティアには私の好きなサークルがいくつもサークル参加しているので、同人誌を買いに一般参加しようと思っているんです。もしよければ、涼我君と愛実ちゃんと一緒に参加してみたいなって。どうでしょうか?」
あおいは真剣な面持ちで、愛実と俺にそうお願いしてくる。
同人誌即売会に参加するのか。これまでレモンブックスで、オリジナルも二次創作も問わずに同人誌をいっぱい買っているあおいらしい。
「俺はいいぞ」
「私もいいよ」
「ありがとうございますっ!」
予定を知ったとき以上の嬉しそうな表情で、あおいは俺達にお礼を言ってくれる。
あおいとはまだ、同人誌即売会に行ったことが一度もない。あと、同人ショップのレモンブックスでも楽しそうにしていることが多いから、会場に赴いたらあおいはどんな反応をするのか。色々な意味で楽しみだ。
「ちなみに、お二人はオリティアってご存じですか?」
「うん。知ってるよ。樹理先生に代理購入を頼まれて行ったことがあるから」
「俺もそのときに一緒に行ったよ。確か、二次創作は禁止で、オリジナル作品の漫画とか小説とかグッズとかの頒布をするイベントだよな」
「そうです! 毎年数回開催されていて、ゴールデンウィークの時期には必ず開催されているんです。ただ、今までは福岡や京都に住んでいたので、会場に足を運んだことがなくて。ですから、とても楽しみにしているんです!」
あおいは京都に住んでいた頃も同人イベントに参加したそうだけど、それは関西地区で開催されたイベントに限ってのこと。交通費や移動時間、宿泊を伴うかもしれないという理由で、東京で開催されるオリティアにはまだ参加したことがなかったのだろう。
「涼我君と愛実ちゃんと一緒に参加できることになって、より楽しみになりました!」
「俺も楽しみだよ、あおい」
「私も」
あおいと一緒に同人イベントに参加する日が来るとは。これまで、佐藤先生の代理購入中心に、何度も同人イベントに参加したことがあるけど、あおいと行くなんて一度も想像したことがなかった。
「あと、樹理先生はオリティアに参加したことがあるのですね。さすがです」
「以前聞いた話だと、学生時代から何度も一般参加したことがあるらしい」
「中学生の頃から参加したことがあるって言っていたよね」
「そうだったなぁ」
「中学生からですか。羨ましいですね」
柔らかな笑顔でそう言うあおい。それだけ、オリティアに行ってみたかったってことか。東京やその近郊だけで開催される同人イベントは結構多いので、オリティア以外にも行ってみたいイベントは色々あるのかもしれない。
それにしても……佐藤先生か。先生もオリティアに一般参加しそうだな。先生もオリジナルの同人誌を結構持っているから。
あと、オリティアを含めて、愛実と俺は佐藤先生の買いたい同人誌を代理購入しに行った経験が何度もある。頼みに来るのは、イベントの2、3日前から前日までが多い。明後日開催のオリティアの代理購入を頼んでくる可能性は十分にあるだろう。
――ブルルッ。ブルルッ。
ローテーブルに置いてある俺達のスマートフォンが鳴る。この鳴り方だと、複数人のスマートフォンが鳴っているようだ。俺達はそれぞれ自分のスマートフォンを手に取る。
スリープを解除して通知を確認すると……噂をすれば何とやら。LIMEで佐藤先生から、先生と俺と愛実のグループトークにメッセージが届いている。このグループトークにメッセージが届くってことは、用件は何なのかおおよそ想像がつく。愛実の方を向くと、俺と同じことを考えているのか、愛実は俺のことを見ながら微笑んだ。
通知をタップすると、
『おはよう、涼我君、愛実ちゃん。君達は日曜日って何か予定はあるかな?』
おぉ、日曜日。日曜日のことを訊いてきたよ。俺の予想がますます当たる予感が。
「樹理先生から、日曜日に予定はあるのかメッセージが届きました」
「俺もだよ」
「リョウ君と私は1年の頃から使っているグループトークだけど」
「そうですか。とりあえず『オリティアに参加します』って返信しましょう」
「それがいいな」
「むしろ、樹理先生ならその方が嬉しいと思うかも」
やっぱり、愛実も佐藤先生はオリティア絡みで用事があって、日曜日の予定を訊いてきたんじゃないかと考えていたか。
俺はスマホをタップして、
『愛実とあおいと一緒にオリティアに参加します』
と送信した。佐藤先生もグループトークを開いているのか、送信すると直後に『既読2』とマークがついた。俺のメッセージの直後に愛実が『リョウ君とあおいちゃんとオリティアに参加する話をしていました。』と送っている。
さあ、俺達のメッセージを見て、佐藤先生はどう思うのか。
『とても素晴らしい予定だね! 実は3人にオリティアのことで相談したいことがあるんだ。お昼過ぎに、君達3人のところに伺ってもいいかい?』
予想通り、佐藤先生はオリティアのことで連絡してきたか。先生の笑顔が容易に目に浮かぶ。
午後は俺の家で、昨日までの授業で出た課題をみんなですることになっている。来てもらうなら俺の家になるな。
「あおい、愛実、どうする? 俺はいいと思っているけど」
「私はかまいませんよ。同じイベントに参加するのですから、樹理先生の話を聞きたいです」
「私もいいよ。きっと、同人誌の代理購入だと思うけどね」
「俺も2人と同じ気持ちだ。じゃあ、俺が返信するよ」
俺はスマートフォンを手に取り、
『いいですよ。午後は3人で俺の家で集まる予定なので、俺の家に来てくれますか?』
佐藤先生と愛実とのグループトークに、俺はそう返信した。愛実とあおいは愛実のスマートフォンを見ており、直後に「これで大丈夫だと思う」と言ってくれた。
俺の送ったメッセージはすぐに『既読2』とマークが付いて、
『了解だよ! ありがとう! では、午後2時頃に涼我君の家に伺うね』
と、佐藤先生からのメッセージが届いた。
午後に佐藤先生が家に来ることになったからだろうか。あおいと愛実は楽しそうな表情を見せているのであった。
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