エッジ・サークル・エターナル

じほにうむ

機神、惑星ヘブンに立つ 0

0.プロローグ 

 

 その日は石田一久いしだかずひさという人間にとって最悪の日となったであろう。

 彼は今、己の命を狙われている。それも見知った人間にだ。そして銃を突き付けられているという危機的状況が今である。なんて説明的なんだ。

 だが私は手を出せない。出していいのかが分からない。今この場においておそらく私は眼中にいない。

「イッキュウ。何か言い残すことはないか?」

 背の高い女、銃を向けている方がそう言った。

 それに対して彼は答える。

「髪型、ポニーテールよりツインテールの方がいいと思います」

 ふざけているのだろうか。いや違う。むしろ冷静なのであろう。なぜなら知っている相手だからこそ、これが本気なのだと分かってしまっているからに違いない。そう思いたい。

「お前、ふざけているのか」

 女は怒った。それもそうだ。今にも引き金に手をかけ彼を殺そうとしている。

 そう。手を出すなら今だ!今しかない!

「お二人とも。特にそこの、えっと、お嬢さん?悪いが彼に死んでもらうと困るのでね。ちょっと彼を借りるよ!っと」

 煙幕弾を地面に投げつけた。部屋にはたちまち煙が広がり視界が悪くなる。

私はしっかりと一久の手を取り、その場から逃げ去ることに成功した。

「この!エヴォリスの分際で邪魔をしおって!どこだ!どこにいる!」

 何か言っている気がするが今は無視だ。とにかく逃げねばならない!

 しかしなんと悲しいことなのだろうか。この時は私も、一久自身も知りもしなかった。これがすべての始まりでしかなかったのだと。

 石田一久の運命はここから動き始めるのだ。

 もう止まらない。もし止められるのだとしたら、それはおそらく彼次第なのだろう。



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