超ノンフィクション日記
かぎろ
はじめてのぺぷし
かぎろです。小説も短歌も書けなくなっちまいました。リハビリに今日あったことの体験記を書きます。
壱百満天原サロメちゃんのYouTubeを見てゲラゲラ笑いながらタンブラーでペプシのコーラを飲んでいた。壱百満天原サロメ、知っていますか? バーチャルユーチューバーの。やべえ新人が爆誕しましたわよね。ゲーミングお嬢様ファンとしてもドハマりしそうで怖いですわ。でも最推しが魔使マオなのは変わりませんことよ~~~~!! とか言いながらペプシを飲んだらペプシがなくなった。おいしいもの、飲んだらなくなるのなんで? 仕方なくPC前の椅子から立って冷蔵庫まで、歩く、その途中で、見知らぬ幼女に出くわした。
ガチで見知らぬ幼女だった。
知らん幼女が家にいる。
しかもなんだか、この世のものじゃないっぽい。
暗黒の陽炎のようなオーラを纏いながら、ちょっとだけ宙に浮いている。背丈は低い。一三〇センチくらいか? 軍服と黒ビキニを組み合わせたような露出度の高い服装。肌は雪白、髪は漆黒。瞳の色は黄金で、妖しい光を湛え、おれを見つめている。
「しゅうえんのときはきた・・・」
なんか喋るし。
「あの、どちら様……」
「ぼくか・・・? ぼくは、しゅうえんのめがみ、おわりちゃん。このせかいを、とうとつに、おわらせるもの・・・」
にやー・・・!
みたいに不敵な笑いを浮かべる幼女。薄ピンクの唇が弧を描き、星のイヤリングがちりんと揺れる。かわいいね。かわいいねじゃないんだけどね。
「ええと……どこから入ったのか知らないけど、出てってくれるかな……」
「このせかいは、ぶんめいを、はってんさせすぎた・・・」
「聞いてないんだね」
「うちゅうにしんしゅつし、ぎんがけいをとびだした。せいめいのじゅみょうを、むげんにのばすことにもせいこうした。それいがいにも、いろいろ、じんるいは〝かみのりょういき〟をおかした・・・」
「……ん?」
「ゆえに、ほろぼさないとだめ・・・」
姿もおかしければ言ってることもおかしい。おれは冷静に指摘した。
「まだ人類そこまでいってないよ」
「ふん・・・いいのがれは、むだである・・・」
「銀河を飛び出してもないし、寿命を無限に伸ばしてもないよ。というか新型コロナウイルスとかに四苦八苦してるくらいだから全然まだまだ人類は神に届いてないよ。神が何なのかは知らんけど」
「・・・・・・」
幼女が固まった。ぽかんとするところもかわいいね。
それから幼女は周りを見回す。
おれの住む1Kアパートのこの部屋は脱いだ服が放り出されていたり、ペットボトルが散乱していたりしてて、めっちゃ汚い。すみません。
「おかしい・・・じんるいは、じぶんたちをしんかさせ、せいりせいとんができるようになっていたはず・・・」
「進化が地味だな」
「それに、ころなういるすだと・・・? にんげん。いまは、せいれきなんねんだ」
「二〇二二年です」
「・・・・・・」
幼女が固まった(二十秒ぶり二回目)。
それから少し間をおいて、ふふん・・・と小さく鼻を鳴らした。
「こうりんするじくうを、まちがえたのだ・・・!」
開き直りドヤ顔かわいいね。
「さいですか……」
「なので、かえります・・・」
「待った」
「・・・?」
おれは冷蔵庫のところまで行って、ペプシを取り出した。
「神様ちゃんはペプシ飲んだことある?」
「ぼくのなは、しゅうえんのめがみ、おわりちゃんだ・・・」
「おわりちゃん。ペプシ飲んでみてよ。おいしいよ」
コップにペプシを注いで、おわりちゃんに渡す。炭酸が泡立っている。
「ぺぷし・・・」
「そう。ペプシ。人類の生み出した最強のジュースだよ」
おわりちゃんは、ペプシとおれを交互に見ていたが、やがて、おずおずとコップに口を近づけ、ちゅずっ、と飲んだ。
そして、目を輝かせ、こくっ、こくこく、ごくごくごく!と一気に飲み干してしまった。
「あ、そんなに一度に飲んだら……」
「けぱっ」
「なんだ今のかわいいげっぷ」
「にんげん・・・! これ、おいしいぞ・・・!」
「そうだよね! わかるかぁ~このおいしさが!」
「もっとのみたい・・・! ささげろ・・・!」
「どうぞどうぞ、どんどん飲んでくれ」
「ごくごくごくごく! けぽ!」
「かわいい!」
「ごくごくごくごくごくごくごくごく! けぱぱ!」
「かわいい~!」
「ぷっはー! おいしい・・・! かみのりょういきだ! すごー!」
「これが領域を侵すのはありなんだ」
かぎろのツイッターアカウントをフォローしてくださっている方はもしかしたらご存知かもしれませんが、かぎろはペプシLOVE勢です。おわりちゃんにも人類の叡智の結晶を味わってほしかった。幼女には優しくしてあげたいし。
それに……
寂しかったし。
一人暮らしをしていると、どうしても寂しくなる日はやってくる。友達と連絡を取り合ったり、ツイッターでクソツイを投稿していいねをもらったりで紛らすことはできるけれど、寂しさはいつでもおれを呑みこめる位置でスタンバっている。
だからおわりちゃんという謎の存在と少しでも話をしていたかった。
何気ない日常のなかにひょこっと出てきた非日常。
でも、おれの性格上、これ以上引き留めることはできない。
神様には、神様の仕事があるのだろう。それを尊重していたいと思う。
それに、おわりちゃんを好きになってしまう前に、お別れしてしまいたかった。
「にんげん・・・! はじめてのぺぷし、おいしかった!」
おわりちゃんが無垢な笑顔を咲かせる。あ~やめて好きになっちゃうよ~。まあ本心を言うとペプシで釣って同居生活ワンチャン!?みたいなことも思っていますがそれは無理だよな。
「ここで、いっしょう、ぼくのおせわをすることを、ゆるす!」
ワンチャンあった~~~~~~!!!!!!!!! やった~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!
全部妄想です。
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