オナラから始まるラブコメディ~オナラをしたら何故か美女二人に好かれてしまった~

九傷

第1話 完全犯罪ーパーフェクトプランー

 

 ――とある会社のミーティングルームにて



 俺は現在、プログラムに関するオンラインセミナーを受講している最中だ。

 ノートPCの画面には専門的な用語がいくつも表示されており、説明を聞き逃すと瞬く間に意味がわからなくなる。

 だというのに、俺は完全に別のことに集中していた。



(どうする……?)



 ゴロゴロと唸る腹を抱えながら、逡巡する。

 選択肢は二つまで絞り込まれていた。


 音に紛れさせるか、スかすか……


 そう、俺は今、いかに誰にも悟られず屁をこく方法について真剣に考えているのである。

 我慢をするというフェーズは、とうに過ぎ去った。

 屁は何度となく引っ込んだが、最終的に出口付近で停滞している状態を保っている。

 気を抜けば、いつ発射されてもおかしくない状況だ。


 この部屋には現在、俺を含めて6人の受講者がいる。

 オンラインセミナーなので講師はおらず、窓もない狭い密室だ。

 こんな状況で屁をこけば、無臭でもない限りはバレバレだろう。

 しかし、誰がしたか特定されなければ、屁こき野郎のレッテルを貼られることはない。

 幸い、受講者の中には女性も含まれているため、犯人の追及は緩くなることが予想される。

 つまり、完全犯罪が成立するということだ。



(屁を隠すなら音の中……イケるか?)



 例えば、わざと咳をしたり物を落とすなりして発生した音に、屁の音を紛れさせる方法だ。

 俺は人生で何度か、この方法でピンチを乗り切ったことがある。

 しかし、今回の屁は大物だ。

 屁の音の大きさが上回った場合、この方法は成立しない。

 また、耳の良い者がいれば、そうでなくとも悟られる可能性がある。

 となると、やはりスかすしかないか……


 選択肢は一つに絞り込まれたが、正直気は進まない。

 というのも、スかしっ屁にはリスクがあるからだ。

 具体的には、コントロールをミスると音が発生することである。

 特に今回は大物であるため、五割くらいはその覚悟が必要だろう。

 しかし、俺に残されている時間は少ない。もはや決行するしかなかった。



(南無三!)



 静寂。そして次の瞬間広がる臭気。

 俺は賭けに勝った!

 そう思った瞬間、全員の視線が俺に向く。



「な、なんだよお前ら、まさか俺がしたとでも?」



 バレバレの反応をしてしまい次の瞬間後悔したが、他の5人は皆確信に満ちた目をしていたので隠しても無駄だったろう。

 しかし、何故バレた……?



「お前、さっきまで超真剣な顔してたけどさ……、今、すげぇスッキリした顔してるぜ……」


「っ!?」



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