第56話 最終話

「シロオオオオオオオオオオ」

 雪篤は涙を流していた。

 そして、姿はもはや人間ではなくなっていた。

 筋肉は隆々と盛り上がり、骨格がメリメリと成長する。

 口から唾を垂れ流し、目は正氣ではない。

 まるで……魔力喰いだった。

 暴走。

 信也の操る、雷、溶岩、雨、風、土、の自然の力も暴走した雪篤にぶつかると、それらは霧散していった。

 為すすべはなかった。

 信也は思った。

 雪篤に殺されるなら、かまわないと。

 俺は一度、雪篤を殺してしまっている。

 雪篤になら殺されても文句は言えない。

 雪篤は信也の目の前にいる。

見下ろす雪篤。

見上げる信也。

 お互いにぼろぼろに汚れていた。

 雪篤の腕が頭の上に振り上げられる。

 それを信也はただ眺めていた。

 爪で信也の体を貫こうとしてピタと寸前で止まった。

そよ風が吹く。

 花びらが、二人の間をすぎさった。

「ありが……とう」

 雪篤の体は、砂粒に変わりどこかに消えていった。

 信也はぽたぽたと涙を流していた。

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