第13話 閉じ込められた小さな生命!

 先程ビックワンに行った電波障害による操作ダメージを一時的にでも与えられれば反撃に繋がる可能性があると感じて、グラスファイバー製のネットを上空へ運び落下させ、そこに被せ、再び羽根から放たれるパウダーを振り掛けて、静電気イナズマを落とし、ライジング・シールドを連射した。

放電が再びビル全体を電波塔にして、周辺に強烈な電波障害を発生させた。

黄色いドラゴンアイが輝きを無くし、電子制御機能に支障をきたし操作コンピューターがストップした。

作戦は成功したかの様に見えた。

周囲の逃げ遅れた人が負傷して動けずにいるかを人感センサーで確認していると1箇所だけ反応が出た地点へ向かった。

ビルの倒壊による瓦礫に潰され、絶望的な状況であったが何か微かな物音が聞こえて来た。

『ガサガサガサ・・・ガサガサガサ・・・』と続いていた。

その音のする方向にイメージスキャニングで透視して見ると生命反応と共に丸い物体が瓦礫となっているコンクリート破片をほじくり返して出ようとしている。

『大きな岩の様なコンクリートがある為、それ以上は君には無理だよ!』と言うと少しだけ入っているひび割れ部分に先程の風に話しかけた。

『少しだけこの隙間を広げて!中にいる小さな命を救い出すお手伝いをして下さい。それとまわりの瓦礫が崩れない様にお願いします。』と話しかけるといくつもの風達が隙間から出入りして、その奥から助けを求める小さな命の声が聞こえた。

『フォン・フォン・ワァン・ワァン・・・・・』次第に声は大きく響き出し、風による風化が進み、細かく指紋の線の様にヒビが広がり始めた。

その部分だけが粉々に崩れ去る様に初めのひび割れ部分が空洞になり始めて、更にその叫び声は大きくなって来ていた。

見事な位に風による摩擦現象がトンネルの様に貫通したコンクリート表面がツルツルに研磨され走り飛び出して来たのは、砂埃で汚れ黒っぽく見えたがまだ大人にはなっていない柴犬の様だった。

一度は走って表に出て来て何かを訴える様に吠え続けて、それからまたそのトンネルの中へ戻って行き、それを繰り返していた。

良く見ると汚れていて見落としていたが首輪と何か紐を引きずっている。

これはもしかするとちぎれてはいるがリード紐たまろう。

もう一度この柴犬が出て来ている内に人感センサーレーザーで内部をうかがってみた。

やはりその直感は的中した。

中に人がいるイメージスキャニングで確認して見ると微かではあるが生体反応があった。再びスクリューフローでトンネル状の隙間を2m近くに広げ両サイドに周辺にあった薄型の自動販売機を4機並べた。

中へ入って行くと上手く瓦礫が支え合い中腰で立てる位の空間が出来ていた。

人感センサーレーザーで反応する付近には潰れかけた車が埋まっていた。

その前で狂った様に再び柴犬が吠え始めた。暗闇の中でガス漏れなどによる引火爆発などを考えライトアップをさけて、ナイトビジョンでこの車の運転席に閉じ込められた人影が映し出された。

後方のガラスを壊して中の状況を確認した。奇跡的な事が続いていた。

信号機の丈夫そうな鉄柱が支えとなり、ギリギリで重たい瓦礫で出来た山の重さを分散化出来た事で車全体が潰されずに残ったのだろう。

内部の閉塞状態を少しでも広げて奥に閉じ込められた人を救い出すにはジャッキアップが必要と思われた。

特にこんな時はエアージャッキがあれば!代用品にトラックのタイヤを運び風圧を掛けて隙間を広げた。

奥に居たのは身体の細い小柄な女性の様だった。

この状況で引き摺り出すには時間が限られていた。

暴れられたら崩落の危険もある為、イメージコントロールで草原の中を散歩している映像を送りココロを静ませ何とか車外に担ぎ出した。

柴犬が喜んで抱き抱えられた飼い主に向かって飛び付こうと何回もジャンプを繰り返していた。

自動販売機が並ぶ出口付近まで来た所で『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ・・・』と豪音とともに振動で瓦礫も震え出し、砂埃が隙間から溢れ始めた。

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