第21話 図書室


 潤一は図書室に足を運んでいた。


 今日も推理小説と自然科学の書籍を借りに来た。


 潤一は毎度恒例で本を見つけることができなかった。


 推理小説は何度も足を運んだため、発見できたが、自然科学は今まで図書室で借りた経験が無いため、本の置かれたコーナーを見つけられなかった。


「また、図書委員の人に頼るしかないか」


 潤一は自身の能力に多少の苛立ちを覚えながらも、図書室のカウンターに向かおうとした。


「どうしたの?どんな本を探してるの?」


 たまたま図書館に足を運んでいた丸井三波が潤一に上目遣いで問い掛けた。


「・・・ああ。自然科学の本を探しているだが、残念ながら見つからないんだ」


 潤一は胸中で言おうか逡巡したが、無視するわけにはいかず、現在置かれた状況を打ち明けた。


「そうなんだ。私、自然科学のコーナー知ってるよ?」


 三波は首を45度に傾け、あざとくピンクの小さな唇に手を当てた。


「ああ。じゃあお願いしようか」


 潤一は無表情で受け答えを行った。


 彼は三波に案内を受けながら、本棚を横切った。


「ここだよ!ここが自然科学のコーナーだよ」


 三波は本棚を紹介するように自然科学コーナーを指差した。


「ありがとう」


 潤一はお礼を述べ、自然科学のコーナーで目の付いた書籍を手に取った。


「・・・どうして、面識の無い俺にコーナーの場所を教えた?」


 潤一はカウンターに向かう足を止め、振り返り、三波を視界に据えた。


「う〜ん。それはね。困ってた顔を浮かべてたから、助けてあげないと、と思ったからだよ」


「そうか。わかった。助かった。わざわざ親切にしてくれてありがとう!」


 潤一は微笑を浮かべ、踵を返した。

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