第8話 初めてのパーティ行動(1)
昼食を終えて、再びダンジョン前に戻ってきた。
小太刀さんも一緒だ。
彼女もこれからダンジョン探索に向かうつもりだったらしい。
つまり何のことはない。
焦らなくても、今日の午後は小太刀さんとパーティを組んでダンジョン探索をすることは、普通に可能だったわけだ。
そんなわけで、お試しで一時的にパーティを組んでみることになった俺と小太刀さん。
ただ3レベルで経験も浅い俺が、いきなり第三層に踏み込むのは危ないかもしれないと考え、肩慣らしのためにひとまず第二層を二人で探索することになった。
総合案内の預かり所で二人分の装備品を回収して、それぞれが身に着ける。
俺は槍だけだが、小太刀さんは
しかし俺のほうも、装備を強化する余地はある。
俺は小太刀さんに断って、先に武具店へと向かった。
「おっ、何だい兄さん。小太刀ちゃんと知り合いだったのか?」
小太刀さんと一緒に武具店に入ると、店員のスキンヘッドのおっさんがそう声をかけてきた。
それには俺が答える前に、小太刀さんが返事をする。
「ううん、初対面ですよ~。さっき偶然会って、私が声をかけたんです。それで話の流れで、パーティを組んでもらえないかってなって、これからお試しで第二層に行ってきます」
「ほう。確かに兄さんは【アースヒール】を使えるって話だったしな。パーティメンバーとしては有望株だわな」
「ですです。私のほうが役に立つかは、今日の探索で六槍さんに見てもらうってことで」
「ま、単純に頭数が増えるだけでも違うからな。──で、何か買いに来たんじゃないのか?」
「あ、それは俺が。ウッドシールドが4000円だったと思うので、お金が入ったから買っておこうかと」
そんなわけで俺は、4880円に増えたなけなしの予算のうち4000円を払って、ウッドシールドを購入。
残金は880円になった。
ちなみにラーメン代などの生活費は、ダンジョン予算とはひとまず別勘定にしておくことにする。
初期投資で1万円は突っ込む気で来たが、それ以上際限なしに投入すると普段の生活がヤバいことになりそうだ。
ともあれこれで、右手に
鎧なしで武器と盾だけって、蛮族みがすごいな。ド偏見だが。
買い物が済んだので武具店を出る。
そして今度こそ、ダンジョンに向かった。
小太刀さんと二人で魔法陣に乗って、ダンジョンの中へと転移。
ダンジョン内に突入したあとで、俺はもう一つ、やっていなかったことを思い出した。
「そうだ、スキルを取ってなかった。小太刀さん、少しだけ待ってもらえますか」
「いいですよ~。ごゆっくり」
3レベルになったときに得たスキルポイントをまだ使っていなかったのだ。
俺はステータスボードを開いて、スキル取得画面へと移行する。
修得可能スキルのリストを眺めて、思案する。
俺の脳内で、いくつか有力候補があった。
一つは、せっかく槍を買ったのにずっと取得していない【槍攻撃力アップ(+2)】。
武具店のおっさんが言った「これを持っている
一つは、遠隔攻撃手段として【ロックバレット】の魔法だ。
たいていの遭遇では近接戦闘になる前に一手ぶんぐらい間があるので、遠隔攻撃ができると攻撃の手数が増えて大幅に有利になるはず。
ただ当然MPを食うので、【アースヒール】の使用回数を削ってしまうのが難点か。
一つは【HPアップ(耐久力×4)】。
スキルなし状態でのHPが「耐久力×3」なので、HPが一気に3割以上爆上がりすることが見込める。
つまり純粋に強い。
一つは【気配察知】。
モンスターなどの気配をいち早く察知するスキルだ。
効果の程度は分からないが、奇襲を回避できたり、逆に奇襲を仕掛けるチャンスが生まれたりするスキルと考えると、強スキルの可能性が高い。
さて、どうするか。
ここは一つ、ダンジョン探索の先輩の意見も聞いてみるか。
俺は小太刀さんに、獲得スキルについて相談してみた。
迷っている四つの選択肢について聞いてみると、小太刀さんは少し考え込む仕草を見せてから、こう返してきた。
「まず大前提として、どのスキルを修得するかは自分のことなので自分で決めるべき、と断った上でですけど。一つ確実に言えるのは、【気配察知】は私が持っているので、私と一緒のときは効果が被るってことですね。私とパーティを組む前提なら優先度は下がるかと」
「なるほど」
「でもソロで探索する前提なら間違いなく優良スキルですし、それも参考程度にしてほしいかなと」
うん、余計に難しくなったな。
まあいいか。
悩んでいても完全な正解は分かりそうにないし、適当に決めてしまおう。
俺は直感で、【HPアップ(耐久力×4)】を修得することにした。
これから高レベル
これで俺のHPは「27/27」から「36/36」にアップした。
レベルアップのときもそうだが、最大値が伸びるときに現在値も最大値側に引っ張られるのは地味にいいな。
「お待たせしました。完了です」
「了解です♪ じゃ、行きましょうか。第二層への階段はこっちですよ~」
小太刀さんは最初の広間から、左手側の道に向かって進んでいく。
俺は先導する先輩
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