朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる

いかぽん

第1話 朝起きたら探索者《シーカー》になっていた

「あっ。俺、【探索者シーカー】になったのか」


 ある日の朝、俺は目覚めたベッドの上でそう思った。

 起き上がって右手の甲を見ると、不思議な紋様が浮かび上がっていた。


 俺は六槍むそう大地だいち

 現代日本で暮らすしがないフリーターだ。

 十九歳、独身、一人暮らし。

 高校卒業と同時に就職して家を出たが、就職先のあまりのブラックぶりに三ヶ月でドロップアウト。

 今はバイトで日銭を稼ぎながらどうにか暮らしている。


 そんな俺にも、千載一遇のチャンスがやってきたのかもしれない。


 現代の地球に【ダンジョン】が生まれてからおよそ三十年。

 それは人類の中に探索者シーカーと呼ばれる者たちが生まれるようになってから三十年たったということでもある。


 世界中に突如現れたダンジョンには、多数の【モンスター】が徘徊している。

 それが地上にあふれ出てきて一時期は大騒ぎになったのだが、今ではその対策もまとまっている。


 ダンジョンの発生とほぼ同時に、人類の中に現れた探索者シーカー

 ダンジョンに潜り、モンスターと戦う力を与えられた人々だ。

 ダンジョンの対策は彼らに一任されることになった。


 探索者シーカーには、ある日突然、前触れもなく「なる」らしい。

 それまでになかった「力」や「感覚」に目覚めるのだという。


 今の俺は、それに「なった」という感覚があった。

 寝ている間に覚醒したみたいな感じだ。


「【ステータスオープン】」


 俺は家賃五万九千円の狭いボロ部屋のベッドの上で、一人ぽつりと口に出す。

 すると視界に半透明のボードのようなものが浮かび上がった。




六槍大地

レベル:1

経験値:0/10

HP :24/24

MP :21/21

筋力 :7

耐久力:8

敏捷力:6

魔力 :7

●スキル

(なし)

残りスキルポイント:1




 誰から教わったわけでもないのに、俺はこのこと──「【ステータスオープン】とつぶやくと自身の【ステータス】が表示されること」を感覚的に知っていた。


 なお半透明のボードは物質ではなく、手で触っても透過する。

 でも指先でタッチするように触る仕草をすると、いろいろと操作できる。


 ほかにもいくつか、もともと知らないはずのことを今の俺は知っていた。

 探索者シーカーに「なる」というのは、どうもそういうことらしい。


「よし、ダンジョンに行ってみるか」


 今日はバイトも休みだ。

 俺はトーストと目玉焼きなどで簡単な朝食を済ませてから、最低限の身支度を整えて家を出た。



 ***



(作者より)

 本作の書籍版(1巻)が2023年2月28日に発売となりました!

 Web版からブラッシュアップし、tef先生の素晴らしいイラストも掲載された作品となっておりますので、よければお手に取ってみてください!

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