第27話 トカゲの魔物

「グギャアアアアア」


 咆哮と共に2メートルを超えるほどの巨大なトカゲが、俺とエマに向けてその巨体で突進してくる。


 俺たちはギルドでメアリーさんに依頼書を渡し、盗賊団討伐の依頼を引き受けた後、買い物やら罠の作成などの準備を行い、子鬼の森の奥深くへの調査、盗賊団の討伐を目標に子鬼の森へと来ていた。そして、ある程度の森の深さまで進んだ後、休憩しているところへこの巨大な魔物が現れたのだ。


『ポーチ容量 アイテム:56/100

 金貨:13500/50000


アイテム(経年劣化無し):

ポーション(下級)×15

ポーション(中級)×3

ホットドック×2

おしぼり×2

スキル強化の実×1

スキルの石×1

トラバサミ×13

簡易落とし穴×4

森の罠×5

エレキトラップ×5

弓矢の罠×2

タイムトラップ×2

生活用品』


 俺たちは両方とも余裕を持ってステップで奴の進行方向から抜ける。すると、魔物は俺たちが先ほどまで休憩していた場所に突進し、腰かけていた岩を粉々に破壊した。


「避けやすいけど当たったらヤバイな」


「援護は任せて」


 ここに来るまでに俺たちはすでにゴブリンなどの魔物を相手しており、今は十分にチームとして協力することが可能となっていた。


 エマは俺よりも後ろの方へ陣取る。俺が前線で後方のエマが弓で援護してくれる。


 俺のステータスは貧弱だからあまり前線に向かないが、しょうがない。


「グギャァァァァ!」


 再度の咆哮と共に突進を仕掛けてくる。


 行動がワンパターンなのだが、攻撃する隙がないな。どうにか罠で奴の突進を止めることができないだろうか?


 大口を開けて今にも飲み込んできそうな魔物姿にビビりながらも俺はアーツを発動する。


「『罠設置』」


 俺と魔物との間に森の罠を設置する。罠が設置される騒音に魔物は特に気にすることなく、突進を続け見事に森の罠を踏み抜いていく。


「よし」


 森の罠から獲物が来たと一斉に触手が飛び出し、魔物の体に絡みついていく。


「グアア!?」


 魔物の突進は触手によって完全に止まっていた。


「今の内だ、エマ」


 弓で攻撃してくれと後方にいるエマの方を振り向いて言うが、後ろからミシミシという音が聞こえ振り向く。すると、魔物は触手に絡みつかれながらもその巨体の力を持って無理矢理に進もうとしていた。


 徐々に徐々に魔物は進んでいき、森の罠の触手がピンと張り詰めるほどまでくると一気に触手がちぎれ、魔物はそのちぎれた勢いのままこちらに突っ込んでくる。


「!」


 触手という鎖から解き放たれた魔物は最初から全速力でこちらに突っ込んできており、予想以上に速い。このままでは回避することができない。


「カジ!」


 エマが弓矢を放ち、魔物の脚に命中し出血させるが魔物は勢いを止めない。いや、心なしか逆に勢いが増したように感じられる。


 魔物に至近距離まで近づかれ、視界全体に魔物の大口が広がる。俺はなぜか魔物の口の鋭い牙に絡みつく粘っこい唾液を見やり、こんなところまでリアルなのかよと状況とは分相応なことを考えた。


 一撃で終わりだろうなと考え、その次に俺が死んだらエマはどうなるんだろうかと考えた。エマがプレイヤーだったなら良いが、もしNPCだったら……、どうなるんだろうか。このままこの魔物に殺されるのだろうか?そしたらプレイヤーみたいに生き返るのか?それとも……。


 だが、俺の予想は思いもしなかった方向に大きく外れることとなる。


「大丈夫か」


 視界に何かの影が映ったと思った瞬間、俺の前には2メートルもある魔物の大口を斧で食い止める大柄な獣人の姿があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る