第23話 NPCとプレイヤー
「そうそう、おばあさんが言ってっていたんですけど、これをカジさんに渡してあげてって」
ナナシはポケットをゴゾゴゾすると何やら小さな赤いビー玉のような物を俺にくれる。俺はそれを鑑定スキルで見てみる。
『スキルの石
ランク5 品質A
砕くことにより、使用者に眠るスキルを呼び起こす不思議な石。一度しか使うことはできない。』
とっても貴重なものだった。これをなんで俺に?と思ったが、多分ナナシを守ってあげてという意味なのかも。ランク5なんて貴重なものを俺にくれるということはよっぽどナナシを気に入ってくれてるようだ。
スキルの石を眺めているとナナシがそうそうと続ける。
「おばあさんがもう一つ言っていたんですけど、最近この近くで盗賊団がでるらしいです」
「盗賊団?」
「はい!自分達を義賊と名乗ってはいるのですが『食料をくれーーー!少しでいいから!!ほんのちょっと!!』なんて言いながら襲い掛かって根こそぎ食料品を奪っちゃうんです」
「普通に悪党だな」
「はい。けれど彼らの力は本物らしくて力が常人の比ではないらしいですよ!こう、パンチでがっ!っと」
ナナシは盗賊団の強さを表すためかパンチを高速でするマネをしているが全然強そうには見えず思わず苦笑いしてしまう。
「心配ありがとう、ナナシ。注意しておくね」
ナナシはパンチのマネを止め、笑顔で頷いた。
……
ナナシと別れ、冒険へと出ることにした。まず、冒険者ギルドに立ち寄り、クエストを見ておくとする。
初めての子鬼の森での探索の際、金級冒険者カラルのせいでギルドはあの時使えなくなっており、そのまま冒険へと行ったがあれはよくなかったらしい。
このゲームは新大陸の調査を主の目的としており、珍しい場所や迷宮を踏破していく。だが、ギルドには様々な依頼であるクエストが出されており、それを並行して探索を続けていけばお金を効率よく稼ぐことができるわけだ。それによって装備を作り、スキルを鍛え、レベルを上げていき強敵を倒し新たな地へ行けるようになる。
冒険者ギルドへ向かっている途中、ある不審な獣人を発見する。その獣人は自分の手を見つめたと思うと自らの尻尾や耳を触り感嘆の声を上げ、そして周りの獣人に引かれていた。
俺はそれを見ながら分かるよと心の中で頷いた。
あれはNPCの行動なのかと言えばそうではない。あれはプレイヤー独自の行動だ。
このゲームにはNPCとプレイヤーを区別する指標というものが存在しない。一般的なもので言えばキャラクターの上にNPCとプレイヤーを区別するマーカー的なのがつくのだがそれが一切ない。
よってプレイヤーは相手の仕草により相手がNPCかプレイヤーかを見分ける必要が生まれる。そしてさっきの行動こそプレイヤーの典型的な行動だ。ここは獣人領の場所だからプレイヤーは獣人を選択する。そうなると普通存在するはずがない耳や尻尾があるわけで……。
だからこんな変態じみた行動をいくつも見ることができる。俺はそれを笑いたいが自分も最初にガッツリとやっているため何とも言えない気持ちになり、歩を早めていった。
早めたからかいつもより早く冒険者ギルドについた。冒険者ギルドへ入るとメアリーさん達のいる事務の場所の横に掲示場があった。近づき、何かいいクエストがないか探していく。
真ん中のほうから探していくがどうにも割に合うクエストが見当たらない。隅のほうを見ているとある依頼が目に入る。
『クエスト 盗賊団を倒してくれ!
討伐対象: 盗賊団
報酬: 10000ゴールド』
討伐対象はどうやら盗賊団らしい。
これはナナシが言っていた盗賊団のことか?どうしようか、ナナシに気を付けてと言われているからな……。
一人クエストの紙を見ながら悩んでいると横側から小さな手が伸び、クエストの紙を掴んだ。そして紙を持っていこうとしたところで俺は反射的にその手をつかんでしまった。
「カジ!?」
そこにはエマがいた。
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