　何か向こうが騒がしい。

　行ってみると他の冒険者があるリングの舞台を見ている。視線の先には赤い毛並みと銀色の毛並みの獣人が向かいあっている。

「……」

　何か話し合っているようだが、周りがうるさく聞こえない。

　周りの冒険者はうきうきしながらリングの方を見ているが、その瞬間　パン　という大きい音が広がる。それが合図のように冒険者は静かになる。

「今から組手を始める！私は金級冒険者メルト。いざ勝負！」

「私は金級ガリウ。勝負！」

　その声が聞こえると、リングの2人は姿が消える。いや、本当に消えたのではないその証拠にリングでは今、車と車がぶつかったような激しい音が鳴り響き、リングの表面の石が削られていく。

　俺はこの光景が信じられず、近くの冒険者に聞く。

「す、すいません。これってさっきの人たちが戦ってるんですか？」

「ん？ああ、お前さんには見えんか。お前さんあれか？冒険者の登録したばっかか？」

「はい。そうですけど」

「なら仕方がない。今組手してるのはな、金級のトップの奴らなんだ。俺は銀級なんだが、あいつらの動きは全て見えん。あいつらの強さは化けもんレベルだ」

「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」

「いいってことよ」

　冒険者と話し終えてリングの方を再度見ようとすると爆音が鳴り響き、前で見ている冒険者が俺に向かって吹き飛んでくる。

「へっ！？」

　俺は冒険者と思いっきりぶつかり跳ね上がった。そして重力に従い、思いっきり頭をリングに激突させる。

　そこで俺の意識は切れた。

……

　ゲームから意識が戻り、ヘルメットの黒しか見えない。俺はそれを取り去る。

　久しぶりに見たような自身の汚部屋に懐かしさを感じながらも、さっきの光景を振り返る。

「なんだっんたんだ、あれ！」

　驚くのも無理なかった。リングの方を向いたらいきなり冒険者吹き飛んで来たのだから。ただ、吹き飛んできたのだったら楽だった。普通に横に回避すればいいのだがら。だが、実際は吹き飛んで来た冒険者の速さが速すぎて、それに突然のこともあって回避出来ず地面に叩きつけられこととなった。

「くぅー、とにかくまたゲームを再開するか。」

　俺はまたヘルメットをつけ再開しようとするが、

　『死亡デメリットゲーム参加3時間不可』と表示される。

「まじかよ…」

　俺はふてくさって布団をかぶって寝た。

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