わたしはうさぎ

かさのゆゆ

第1話





 わたしはうさぎ。




 


ヒトと暮らしているの。




 


おうちの中と外にあるお部屋を行ったり来たりしているわ。




 


いつ生まれたのかは分からない。




どのくらい生きているかも分からない。




 




でも、最近はおねむの時間がふえたわね。




きっと、もうけっこう生きてるんだわ。






いつも同じ場所から、景色のまちがいさがしをしたり、夢をみて過ごしているの。




目を開けたまま“ねむねむ”できるのも、わたしの特技なんだから。






 




 「ままー!うさぎさんだよ!




 おおきいねー!ふさふさだねー!」






 「こら!そんな近づかない! 食べられちゃうでしょ!」









 まただわ。




あの黒い大家族。このあたりだけで一体どれほどいるのかしら。




今日だけでも……えっと。




ふぁ~あ。多すぎてかぞえられないわ。ねむねむ。















 「あー!あれもおいしそー!うさぎさんのおいしそー!たーべーたーい~」




 




「あとにしなさい。ほらうさぎさん見てるじゃないの」








 ね、また。




 さっきの大家族かは分からないけど、いつも元気なこと。




 




 「ごめんなさいねぇ。うちの子たちが。


──ふふ、あなたいちわなのね。“あのうさぎ”なのに。ふふふ」




 




 ふぁ~あ。むしむし。




 




「こっちには頼もしい仲間がいっぱいいるわ。あなたもさびしいだろうけど、つよく生きなさいね!」







 いろいろ数が多いのも問題ね。




“いち”しか知らなくて良かったわ。






「え? ごめんなさいねぇ。仲間にはしてあげられないのよ。かわいそうだけどおいていかなきゃ」





 まあ。わたしにひけをとらないくらい、豊かな想像力ね。


どうぞどうぞ。おいてって。


わたしはうさぎだもの。


むだに一目おかれちゃうくらい可愛いうさぎ。




黒くひかるのは瞳とまつげ。


からだは柔らかくふさふさ。もふもふのまっふまふよ。


 






「いやね、返事もなし? うさぎさーん。ほらほら、私たちが見えてますか~聞こえてますか~」




 


 うるさいわね。わたしはうさぎ。


“おみみ”だってすごいのよ。


前より遠くはなったけど、今だって──…


むぅ?


 





 “ゆらゆらゆら”





 “ゆらゆらゆら”




 






 むむう、気になるわ。







 「きゅきゅっ?


(あなた方がゆらゆらさせているもの、それはあなた方の“おみみ”?) 」


 




「ふっ。“きゅきゅっ”ですって。もしかしてうさぎより私たちの方が賢いんじゃない?


きゅっきゅー!ふふふ。あなた達もなんか話しかけてあげなさいよ。“きゅきゅー”って」


 


「ねえ~まだ~? あれたべたいよ~」


「「たべたいよ~」」







 だめね。まったく会話にならないわ。


こんなに数は多いのに、分かる方はだれもいないだなんて。




 ──あら? おかあさんのうしろにいる子どもたち、よくみると黒色だけじゃないのね。


えっと。いち、いち、いち、いち……。



こちらも多すぎて数えられそうにないわ。






 「もうちょっと待ちなさい!


いい? みみと鼻をよくみるのよ」


 


「「おなかすいた~」」






“ゆらゆらゆら”





“ゆらゆらゆら”







 ふぁ~あ。なんか草みたいね。


 


わたしの“おみみ”もああなのかしら。


ふわっとお花みたいになってたりして。


 


たくさんの“おみみ草”の中で咲くいちりんの花。


さみしくなんかないわ。きっときれいに目立ってるもの。




 


もふもふまふまふのお花。


とっても愛らしいでしょ。


カサカサしてるそちらのお母さんにも、少しわけてあげようかしら。


 




 ふわふわおふとん、ぽかぽかマフラー。


美味しいわたがしやパンにだってなるのよ。




でもぬくぬくしすぎちゃったら、あなた方だいかぞくも、きっともっと増えてっちゃうわね。


あらやだ、ごめんなさい。下品だったわ。




 


 ふかふかもふもふ。


今はわたしだけが楽しむことにするわ。


 







 ねむねむ……。また眠くなってきたわ。


黒いちがいち、黒いちがまたいち、おみみもいち……と、いち……。黒みみが……いち……ぐぅ。





 






「お母さん! あのうさぎさん寝たっぽいよ! もうあのエサ食べにいっていいでしょ」


 


「ったく、はいはい。みんな行ってきなさい」


 


 「「わーい!!」」






 








 ──ベシンッッ!!








 ブチ













 ぐぅぐぅ。


 










 まあ! わたしがせかいでいちばんかわいいだなんて!




もう! チャックさんったら!





 ぺしん♪


 






 







 ──あら? チャックさん??


 




 なんだ。また夢だったのね。


 




 ふぁ~あ。ごしごしごし。


 







 わたしはうさぎ。からだのおていれも日課なの。


 


あら、なかなかとれないわね。


 


チャックさん。チャックさん。チャックさん。


 


また会いたいわ。ごしごしごし

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る