紫苑の嘘
アカギメラン
Prologue
窓から漏れ込むなんとも言い難い風が、頬を掠めた。
しとしとと、冷たい雨が
紫苑国は1つの都と6つの州を持つ王国であり、それぞれ違った色を持ちながらも終いは中央の気高きお上のため尽くしている。
暁学園は、そんな王国の中でも最も人口の少ない”松龍州”の空の様子を間近で見られるほどの高地に位置し、そして国内最大規模の女子学園である。
一見普通の名門女子校であるが、実態は紫苑国の傘下にある紫苑軍事学校3校のうちの1つである。
暁学園はこの3つの中では『月』と呼ばれ、他の2つ、『陽』『陰』の学校とはひと味違って、最も国との繋がりが強く、更に暗躍する機会が多い学園である。
その学園のトップに降り立つものは”生徒会長”という役目となり、その座に就いた者と数人の役員で成り立つ生徒会は学園の一番上の作戦班として行動することとなる。
そして今年2050年_第225代生徒会長、藤堂千里を始めとする合計9名がこの組織に属している。
その組織の名は_____【玉響班】。
名の通り、この玉響班は暁学園の統括だけでなく、戦場においても前線精鋭として活躍し、その動きの速さと華麗さは初代から途絶えること無く現代まで継がれてきている。
玉響班の下には3つの組織があり、特攻・前衛を担当する【
暁学園では入学時の適性検査で、生徒達はこれらの班に振り分けられることとなっている。
それでは、上の玉響班に選ばれるためにはどうすればよいのか。
玉響班に入るためには、難関試験で好成績を取らなくていけないのである。
検査では筆記試験である”座学検査”と武芸試験である”戦闘検査”の2種類が行われ、5段階の評価がつく。
しかし、こんな言い伝えがある。
玉響班以外の者には、どちらも5はつかない、と。
すなわち、5が1つでも付けば玉響班への加入を見事果たすのである。
そんな高嶺の花の存在である生徒会は全生徒から、そしてその活躍を見た国民から託された希望を命を賭して守らなければならなかった時代が200年前に起きた。
いつもと同じ____。
それがいかに、馬鹿げた理想で、そして脆いものかをきっと、誰もが忘れていた。
200年間の安寧はこれからも保たれて同然だと、根の底では思っていたのだろう。
しかし、それが本当に”幻想”であったことを告げる紫苑の雨が、今この生徒会室の窓に打ち付けていた______。
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