ANTI HEROISM~爆殺少女アヤメの暴虐

MASU.

第1話 変な子

ピピピッピピピッ!と目覚まし時計が五月蝿い。

睡眠不足で頭が痛い。

仕事のことを思い出すと眠れないのだ。

新米刑事の檜山蒼士(ひやま そうし)。24歳。独身。

先日、殺人事件の捜査で現場を経験した。

充満した鉄の臭い、痛々しい傷口。死に顔。

鼻に目に焼き付いて離れない。

夢に見るほどだ。だから眠れなかった。


「はぁっ。顔洗お」

溜め息をきっかけにしてベッドから降りて洗面所へ。

洗顔を済ませてシャコシャコと歯磨きしながら一旦リビングへ行きリモコンでテレビをつけた。

すると昨日の事件のニュースが目に飛び込んできた。

気分が悪くて見ていられないのでチャンネルを変えた。

うがいを済ますとリビングに戻ってソファーに座る。

いつもの朝の情報番組のお天気お姉さんに癒しを覚えつつ、食パンにバターを塗って噛る。

それを牛乳で流し込むとテレビを消して着替えて玄関へ向かう。


家を出るのも憂鬱だ。

しかし、自分で憧れて志した仕事。逃げるわけにはいかない。

「よし!」

気合いを入れ直してドアを開けると眩しい日射しが蒼士を出迎えた。


車に乗り込んでシートベルトをしてエンジンをかけた。

ハンドルを握って出発しようとしたところで、ふと1人の少女が目に入った。

黒々とした艶のある長い髪に黒いセーラー服。膝上5cmほどのスカートの少女。

数メートル先から歩いてくるのだが何か食べながら歩いている。

ハンバーガーだ。こんな風に朝からバーガーを噛りながら歩いている学生を見たことがない。

サイドメニューとドリンクが入った袋もぶら下げている。

少女は蒼士の車の隣でピタッと立ち止まった。

引き続きバーガーを食べながらじっと蒼士を見つめた。

ゴクンと口の中のものを飲み込むと少女は何か喋りだした。


「お兄さん、気をつけて。その強すぎる正義感、仇になるかもよ?」


「え!?えぇ…」少女のいきなりの忠告にただ呆気にとられた。

それだけ告げると少女はガサガサと袋からポテトを取り出し、それを食べながら去っていった。


「変な子だ。なんだったんだ?正義感?俺のこと知ってる?あの子、誰なんだ?」


新たなモヤモヤを抱えながら、とりあえず車を走らせて署に向かった。

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