死ぬより苦しい時間を永遠と


「ここなら問題ないでしょう。さて、始めましょうか」


 花蓮とともにやってきた山の奥で、花蓮は真衣を大木に縛り付けて報復を始める準備をしていた。一方真衣はその途中で目を覚まして、逃げ出そうと抵抗しようとしていたけど、強く縛られた縄を解くことができずに哀れにももがくことしかできない。


「ふ、ふざけんな! は、離せ!」


「忠告を無視したご自分を恨むんですね。さっさと先輩のことを諦めていればこうならなかったのに……バカですねぇ」


「う、うるさい! 私は、私は……明彦程度にフラれたら、プライドがへし折られるから諦めなかったの! 私は……いつだって、誰からも羨まれる存在なんだから!」


「……悲しい人ですねぇ」


 本当に、花蓮の言う通り悲しいやつだと思った。思えば、真衣はビジュアルがとても良いし、明るい性格でみんなからの人気者だった。そんな真衣だからこそ、俺は付き合えた時に驚きもあったし、本当に嬉しかった。


 でも、もうそんな気持ちはない。怒りを通り越して、真衣のことが不憫にすら思えてきた。


「……じゃあ、なんで俺と付き合ったんだ?」


「……昔はいいかなって思ってたから。でも、子供っぽい恋愛しかできない奴だってわかってから、ちょうどその時に夏樹から関係を持ちかけられて浮気したの。だから、あんたも悪いの。浮気されたのは明彦だって悪い!」


「うっさいですよゴミカス!」


「がはっ…………」


 躊躇することなく真衣のお腹を花蓮は殴る。一度で止まらず、花蓮は何度も何度も殴り続け、抵抗する姿勢を見せていた真衣はもう、そんな態度は取らなくなっていた。


「何が先輩が悪いですか。浮気する方が悪いに決まってます。先輩を苦しめておいて、よくそんなことが言えますね。ほんと、今日はとことんやってやりましょう。さて、久しぶりにこれにご対面するんじゃないですか?」


「……ひっ!」


 花蓮は服に忍ばせていたのか、ナイフを取り出してそれを真衣に見せる。きっと、あれで最初の時も真衣や夏樹を痛めつけたんだろう。


「いっぱい傷跡をつけましょうね。そうだ、クソビッチって体に書き込んじゃいますか。それ、それ……おお、やっぱりこれは切れ味がいいですね」


「あ、ああああああ、あああああああああああああああああ!」


 無理やり服を脱がされ、ナイフを通じて無理やり真衣は身体に屈辱的な文字を刻まれる。幾度となく叫んでも誰も助けてくれない、心底可哀想で絶望的な様子を見ているのに、俺に同情の念は一切湧かなかった。


「も、もう……や、やめ……」


「前回骨を折った時もそう言ってましたけど、結果無意味でしたのでやめません。さて、次は顔ですね。もう二度と、誰からも愛されない人生を送ってもらわなくてはいけませんから」


「う、うそ……や、やめて……やめて、やめて、やめて、やめてぇぇぇぇ!!!」


 そこから先は、あまりに悲惨だった。初めに痛めつけられた時よりも、ずっとずっと酷く残酷に傷つけられ続ける真衣は途中から悲鳴すらあげることができず、ただただされることを受け入れるしかなかった。


 ここまでされて、また俺たちの前に来たらもう、それは称賛するべきなのかもしれない。でも、きっとそれはないだろう。真衣はこの日で失いすぎた。もう、普通に生活なんかしていられない。誰からも愛されない、醜い身体で生きていかないといけないんだから。


「これくらいでいいでしょう。では先輩、帰りましょうか」


「……ああ」


 そして、俺らは宿に戻った。真衣の後始末は、花蓮が済ませておくとのことだったので、俺は後のことは知らない。でも、もう会うこともないだろう。


――――――――――

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