最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。
倉敷紺
幸せな日常
「ふあぁ……やーっと授業終わったね、明彦」
退屈な授業に終わりを告げるチャイムが鳴って、あくびをしながら最愛の彼女、「日高真衣(ひだかまい)」が俺の頰をツンツンしながら話しかけてきた。
「真衣はずっと寝てたんだからあっという間だっただろ」
「ぶー、寝るのだってすごい疲れるんですー。そういう明彦だって、うとうとしてたじゃん」
「うとうとするのも疲れるんだ」
「あ、私のパクった! 罰としてくすぐってやる!」
「なんの罰だよ……ひ、ひぃ!」
豊満なボディを俺に押し付けながら、真衣は俺の脇をこしょこしょとし始める。はたから見れば、明るくて胸が大きく、顔もアイドルと遜色ないぐらいぐらい可愛くて、おまけにツインテールがよく似合い彼女にこんなことされたらうらやましく見えるだろう。
ま、実際自慢の彼女だし今の状況も楽しんでるけど!
思えば俺、「菅原明彦(すがわらあきひこ)」が真衣と付き合うことができたのは奇跡みたいなものだと思う。高校一年の頃、たまたま環境美化委員で一緒になって、趣味のゲームで意気投合して仲良くなった結果、いつの間にか俺が真衣のことすごい好きになってて……告白したらOKをもらえた。
正直今でも夢なんじゃないかって思うこともある。だけど、この前ようやくキスをすることができたことで、少しは自信を持つことができた。
なかなか真衣はそういうことを恥ずかしがってしてくれなかったから……ようやく一歩前進といったところだろう。
「お、今日もあついねお二人さん」
じゃれ合っている俺たちのことを冷やかすように、親友である「三宅夏樹(みやけなつき)」がやってきた。
夏樹とは小学生の頃からの付き合いで、当時はバスケが得意な彼と公園で遊ぶのが日課だった。今となってはプロ注目の選手となった彼にバスケでは敵わないけど、たまに真衣と3人でゲームをするのが俺にとって些細な楽しみだったりする。
「へへーん、羨ましいでしょ?」
イチャイチャを見せつけるように、真衣はドヤ顔で夏樹にそう言う。
「真衣のおっぱいが当たってるのは羨ましいな」
「なっ! えっち! すけべ! 夏樹のばか!」
夏樹はこういうところがあるから結構女子から嫌わられている。……まぁ、顔がイケメンだからそれでもモテてはいるらしいけど。
「てか明彦。今日は一緒に帰れそうか?」
「あーごめん。今日も部活で文化祭に向けての準備で遅くなりそう」
そう、一ヶ月後に迎える文化祭に向けて、文芸部に所属している俺は部誌の政策に勤しんでいる。俺含めて二人しかいないけど、唯一の後輩が色々と手厳しいから苦労が絶えない。
「そっか。真衣は?」
「わ、私も委員会で遅くなりそうかな」
「ふーん、色々と忙しいんだな。まぁ、明彦は花蓮ちゃんの要望に答えないといけないから大変だよな」
「まーね。でも花蓮はしっかりとした意見くれるし、俺もみんなを感動させる小説を書きたいからさ」
「すごーい! それじゃ、完成したら私が一番に読んでもいい?」
「真衣は小説なんて読めないだろ」
「読めるよ! 明彦が頑張って書いた小説なら、きっと面白いだろうし……楽しみにしてるね!」
「ああ、期待に応えられるよう頑張るよ!」
それから放課後。俺は文芸部の教室に入って執筆に勤しむ。その数分後、この部活唯一の後輩である「福原花蓮(ふくはらかれん)」がやってきた。
「お疲れ様です先輩。進捗はどうですか?」
端正な顔立ちに、艶のある長い黒髪、透き通るように綺麗な肌。そして、見とれてしまうほどスラっとした美しいスタイル。それらを全て兼ね備えた、まさに美少女と言って過言ではない彼女は、淡々と俺の進捗を聞く。
「まぁまぁかな」
「先輩のまぁまぁはあまり進んでなさそうですね」
「うっ」
彼女は結構ズバズバいうタイプで、加えてあまり笑わない。だから初めて会った時は少し怖い印象があった。でも、たまーに見せる笑顔が可愛いことを、俺は知っている。
「図星ですか。もうそんなに時間もありませんし、頑張ってください。私の方はもうすぐ完成しそうですので」
「は、はや……さすが花蓮」
「夜中こっそり彼女と通話してる先輩と違って、しっかり書いてますから」
「な、なんでそれを!?」
「カマかけただけですよ。でも事実なんですね……はぁ」
まんまとひっかけられた。いや、最近放課後はなかなか一緒にいられないから、せめて声だけでも聴きたいなと思って電話してるだけだし……。
それに最近は真衣が疲れているのか、数分ぐらいに止まってる。
「ごめんて花蓮。ちゃんと書くからさ」
「ええ、お願いします。先輩の小説が好きで、私はこの部活に入ったんですから。新作が読めないのは嫌ですよ?」
「ああ、わかってるよ。さぁ、今日も頑張るぞ」
これが、俺の日常。大好きな彼女がいて、腐れ縁の親友がいて、可愛い後輩がいて。彼らと一緒に過ごす日々は、本当に幸せな日常と言っても過言ではないと思っていた。
でも、この幸せが崩れる時がもうすぐ来ることを俺は知らない。
この時も。
放課後、俺の知らないところで。
「んんっ……」
「いい顔してんじゃん、真衣」
そんなことが起こってるなんて、知りたくもなかった。
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新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。
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