仕事

 オレはダンサーを辞めてから広告企業に就

 職した。

 

 はじめは、わからないことだらけだったけ

 ど、会社のみんなはオレによくしてくれて

 おかげさまでこの会社に勤めて三年となる。

 

 かわいい後輩もできた。

 特にバリバリ働いて出世したいとかはない

 がまあ、出世できるならしたいところだ。

 

 なぜなら給料が上がるかもしれないし。

 ま、

 そんな感じだから当然出世できるわけがな

 い。

 

 しかし、とある金曜日オレは何故か社長に

 呼ばれる事となる。

 

 …え。

 社長⁉︎

 

 普通に働いていたら社長に呼ばれることは、

 まずないそうだ。

 

 みんなに

「おいおい、何したんだよ?」

「大丈夫か?一緒についていこうか?」

 なんて心配されたがとりあえず一人で社長

 室に向かった。

 

 

 …あー、やべー。

 ドキドキしてきたー。

 オレ何しでかした?

 大赤字こいたかなー…

 わかんねーなー。

 

 と、色々考えているうちに最上階でエレベ

 ーターが止まった。

 

 …うーん。

 入ったらいきなり怒鳴られるパターンかな。

 それともオレのプレゼン資料投げつけられ

 るか?

 

 

 あ、企画書…

 この前部長に送信したやつ全然違うやつ送

 信してたとか⁈

 

 

 …わからん。

 しかしもう社長室の前まで来てしまった。

 

 初めて入るな。

 社長室。

 

 ドアが大きくそして冷たく感じるぞ…

 

 

 よし‼︎

 意を決してドアをノックした

 

 

 コンコン。

「失礼します」

 オレは覚悟を決めて社長室に足を踏み入れ

 た。

 

 

 広く明るい部屋だ。

 

 ドキドキ…

 

 大きな広い部屋。

 奥の机に社長が座っていた。

 

 すると社長は、ニコニコしながら

「よく来たねぇ」

 と言った。

 

 え…

 こ、これは…

 

 よくもノコノコやって来られたもんだって

 意味だろうか…。

 

 やばい。

 変な汗が脇の下をつたった…。

 止まらない汗…。

 

「あの、紀田です。お待たせして申し訳あり

 ませんでした。」

 というと社長は、

「あー、いいんだよ。さ、ここに座って」

 とまたにっこりした。

 

 そのにっこりがこえーよ…

 

 とりあえず、社長に言われるままオレはソ

 ファーに腰掛けた。

 

 うわっ。

 なんだよこのソファー。

 フッカフカじゃん。

 雲の上にいるみたいだ。

 

 油断したらあっという間に寝てしまうだろ

 う。

 

 なんてソファーを堪能していると社長が、

「君は、なんでここに呼ばれたかわかるかい

 ?」

 なんて質問をされた。

 

 えっ…

 わかんねーよ。

 わかってたら、こんな汗でねーし。

 と言いたいところだったがそんなこと言え

 るわけがない。

 

「あの、すみません。わからないです」

「わっはっはっ。そうだろうとも。」

 

「…はい。」

 

「実はだねぇ、君の企画書をみて大物デザイ

 ナーさんがどうしても君と組みたいとおっ

 しゃっているんだよ。」

「デザイナーさん?ですか?」

「うむ。サキさんというデザイナーをご存知

 かな?」

 

 ⁉︎サキ⁉︎

 

「はい‼︎承知しております。前職でお世話に

 なったデザイナーさんです。ですがまだ、

 一度もお会いしておりません。」

「おぉ、そうか。ま、一応知り合いみたいな

 もんだろう。ならぜひ君にお願いしよう。

 これがうまくいけば億単位だよ。しかし、

 デザイナーさんがもしこの仕事をおりるよ

 うなら我が社は、倒産寸前だ。頼んだよ、

 紀田くん」

 

 社長は、オレの肩にポンと手を乗せた。

 …すごい圧力。

 

 ま、でも

 デザイナーのサキさんとは一度お会いして

 見たかったし、これも何かのご縁だ。あり

 がたく仕事を受けさせていただこう。

 

 と、オレは軽く考えていた。

 

 しかし、これからオレの人生が大きくかわ

 ろうとしていたのである。

 

 

 続く。

 

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