色々な変化

 最近何度もこのビルに来ている。

 

 はじめはびっくりしたけど意外と慣れてく

 るもんだ。

 

 最近は、見学だけじゃなく一緒に参加させ

 てもらっている。

 

 何回目かの時、講師の先生にワレくるくる

 やってみちゃってよと言われたのでバク転

 や、側転、宙返りを披露した。

 

 するとみんなから力強い拍手が送られた。

 

 みんなみた⁉︎

 ワレのこの華麗な飛び方!

 みんなもこのようにしなやかにできるよう

 に特訓してよ!

 と、オレはお手本として褒めていただいた。

 

 オレは見習いみたいな立場なのに、なぜか

 バク転とかは、オレがみんなにアドバイス

 をしている状態になっていた。

 

 はじめは緊張していたのだが今はもう、み

 んながオレを一員として接してくれている。

 

 そしてオレはついに決めた。メンバーの一

 員としてみんなについていこうと。

 

 卒業と同時にメンバーに迎え入れてもらえ

 ることとなった。

 

 不思議だ。

 

 ずっと画面越しから見ていた人たちと踊っ

 たり喋ったりしているのだから。

 そしていろんなことを教えていただいた。

 パフォーマーはルックスも大事だから、こ

 れ使うと顔引き締まるよ、とかヘアスタイ

 ルや洋服とかもアドバイスいただいている

 日々だ。

 

 なのでオレはいつのまにか道を歩いている

 だけなのに振り向かれたりコソコソかっこ

 いいとかささやかれるようになっていた。

 

 しかし学校では、一応彼女がいるふりを美

 崎さんがしてくれているから告白とかは、

 されない。

 

 でも、オレのファンクラブがあると友達か

 ら聞いた。

 …ファンクラブ。

 …何するんだろう?

 よくわからない…

 

 

 

 ある日メンバーの一人に

「彼女いる?」

 と聞かれた。

 なのですかさず

「いないっすよー。」

 と答えると、

「だよな。彼女とかいると女同士のなんかさ、

 色々あるって聞くもんな。妬みみたいなの

 ?嫉妬とかな」

「あー、たしかに」

 と他のメンバーもうなずいた。

 

 …そんなもんなのか。

 

 ってか、オレは美崎さんと付き合ってるっ

 てことになってるけど、大丈夫だよな⁉︎

 

 最近告白とかされてないし…

 でも…

 何かオレのせいで美崎さんに迷惑がかかっ

 てたりすんのかな。

 

 次の日オレは一緒に下校した時美崎さんに

 聞いてみた。

 

「あのさ、美崎さん」

「ん?なあに?」

 くるっと振り向く美崎さん。

 髪がふわっと揺れてなんとも素敵だ。

「あのー、オレと付き合ってるフリしててさ、

 なんか困ったり嫌がらせされたりとかして

 ない?」

 と聞いてみた。

 すると、一瞬顔を強張らせる美崎さん。

 

 ⁉︎やっぱり何か嫌がらせを⁉︎

 オレは思わず美崎さんをガシッと掴み

「何⁈もしかしてオレのせいでひどいことさ

 れてるの⁉︎」

 と聞いた。

 

 すると美崎さんが困った顔をして、

「嫌がらせとかはないんだけど…その…ほん

 とに付き合ってるんですか?とかなんでい

 つも友達っぽいんですか?ってファンクラ

 ブの下級生に聞かれたりするんだよね。」

 なんて少し困り顔をした。

 

 …たしかに一緒に帰ってるけど帰り以外話

 さないな。

 

 さらにいつまでもお互い苗字で呼んでるし。

 

 …   …   …

 

「うん。たしかに…」

 

 …どうすればいいのだろう。

 

「えーとー…」

 オレはどうしたらいいのか困惑した。

 

 すると美崎さんが真顔ですごい提案をして

 きた。

「ねぇ、わたしいつまでも紀田くんにお世話

 になりっぱなしとか申し訳ないから恋のキ

 ューピッドするよ」

 と言った。

 

 …うん。

 それは無理だよ。

 

 だってオレが好きなのあなたですよ⁈

 と言いたい。

 

 …しかしそんなこと言えるわけがない。

 

「うーんと…オレは無謀な恋をしてるから…

 その…キューピッドとかの問題じゃないっ

 てか…」

「もしかしてアイドルとか?」

 まー、美崎さんは学園のアイドルっちゃー

 アイドルか。

 

「アイドル…かなー。」

「そっかぁ。わたしじゃ役に立たないか。も

 し紀田くんとその人が付き合うならば、わ

 たし身を引こうと思ったんだ」

「えっ⁉︎身を引く?」

「うん。いつまでも迷惑かけてられないじゃ

 ん」

「あー、美崎さん。前も言ったけど全然迷惑

 なんて思ってないよ。それに毎日一緒に帰

 れて嬉しいくらいだし」

 と言ったら美崎さんは、

「…うん。でも、でもね…それじゃわたしが

 辛いの」

 と言い出した。

 

 やっぱりオレは美崎さんに迷惑をかけてい

 るに違いない…

 

 どうする⁈

 この恋人ごっこを解消するべきか…

 

 

 続く。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る