武器屋レッセル。



「目的の店はその中の…………、十四階だね」

 

「…………わかた」


 驚く事に、ビルの中にバイオマシンそのままで入って行ける作りに成ってるらしく、駐機場に停める事も無くシャムでビルの中に入って行く。

 

 ああ、なんだ。ビルに入ってる店が軒並みバイオマシン関連なのか。そもそも徒歩では入れないビルなのか。

 

 端末で少しビルの情報を調べてると、ネマがペダルを踏んで進む先に超巨大エレベーターが見える。

 

 マジか。目的の階までバイオマシンごと運ぼうって事? 効率って言葉をご存知ですか?

 

 普通に生身の人間が入って、買った物を外に運ぶ方が楽だと思うんだけどなぁ。


「………………おも、しろぃ」

 

「発想は確かに面白いね」


 四基程が稼働してるバイオマシン用エレベーターの内の大型用に、他の利用客の乗機と共に乗って上階へ。

 

 行きたい階の設定は機体からコンソールで操作するみたいだ。それをエレベーターのAIに送信して動く。

 

 ネマがコックピット脇のコンソールパネルを引っ張り出してポチポチしてる。目的の階まで任せたぞネマ。

 

 一度に四機まで乗せられるっぽくて、機体同士の幅はある程度保つのがマナーみたいだ。まるで普通の人間が乗ったスカスカのエレベーターみたいな利用方法だ。


「…………けっこぅ、むずか、し」


 比較的上手いとは言えまだ初心者のネマは、エレベーターに同乗した他の大型とバランス良く距離を保つのに苦慮してる。

 

 ダングシャムはスライド出来ないから、こう言うのに乗る時は一発勝負するか、入ってから中でこまめに前進と後進を刻むしかない。

 

 そんな微妙な下手を打って恥ずかしそうにするネマを見守りながら、ズワッとエレベーターが動いて目的地まで上昇していく。流石にバイオマシンくらいの質量が有ると速度が出せないのか、二○秒ほど掛かった。

 

 エレベーターには入口と出口でゲートが二つ有って、内部で回頭しなくても良かった。入口から入って、止まって、到着したらそのまま真っ直ぐ直進して出口から出る形だ。

 

 このエレベーターに同乗したのは一機だが、その一機も目的地が同じだったのか一緒にエレベーターから出る。


「なんか、店に行くだけでも大変だな」

 

「…………ぅん。たぃへん」


 そうしてやっと辿り着いたのは、超大型ビルの中にある、超大型ガレージ店舗『武器屋レッセル』だ。分かり易い名前いいゾ〜。

 

 レッセルはエレベーターから出た時点でもう既に店内って形の店で、僕らが降りたエレベーターには買い物を終えただろう大型戦闘機がのっしのっしと入って行く。

 

 店内はバイオマシンが人間の様に店内を歩き回って買い物を楽しめるコンセプトらしく、今すれ違った大型戦闘機もそうやって買い物をしたんだろう。

 

 なんと言うか、イメージで言うと人間用雑貨店舗をそのままバイオマシンサイズにした感じ。

 

 これ、操縦が下手な人はそもそも利用出来ない気がする。他の客の機体にぶつかったりしたら大変だし。


「………………ちょっ、と、こぁぃ」

 

「がんばれぇ〜」

 

『指摘。応援が雑』


 コックピット内には流石に多目的ボット君は入れないけど、それなら別途ホロ装置をコンソールソケットに挿しとけば良いので、メイドシリアスは依然として一緒だ。


「そも、武器屋だもんね。此処を利用する戦闘機免許持ちなら、これくらい余裕やろって事なのかな」

 

『恐らくはそう』


 ネマが慎重にシャムを進めて店内へ。

 

 店舗の端には機体を停めて降機し、その上で見て回る人間用のスペースも有った。僕らが探してる武器の規格を思えば、多分目的地はあそこだ。

 

 気の所為じゃなければ周囲から微笑ましい視線と邪魔に思われてる視線が半々くらいの中でやっと辿り着いた人間用スペースにシャムを停めて、全員で降りる。

 

 この『全員』にはシリアスも含まれてる。それも機体本体じゃ無くて多目的ボット君を率いるメイドシリアスだ。

 

 なんとシリアス、都市回線が利用出来る場所で有れば多目的ボット君が入れる場所って制限はある物の、何処でも行けるらしい。最高かよ。これからずっと一緒だからね!

 

 そうやって僕、ネマ、シリアスの三人は人間用スペースに降りて、品物を見て回る。


「人間サイズの場所とは言え、そもそもバイオマシンに積む武器を並べてるから、どれもコレも大きいね」

 

『ビークルのディーラーガレージがイメージとしては近い』

 

「あー、なるほど。サイズ感で言うとそうかな。でも陳列形態が全然違うけど」


 武装が詰め込まれたコンテナがデデンと口を開けて中を見せてたり、専用の什器に乗ってたりして、色々とある。

 

 僕達が探してるマンイーターだけじゃなくて、通信機能を補助する為のアンテナとか、ゼロカスのデザリアに着いてる様な精密作業用マニピュレータとか、色々と置いてある。

 

 良く見れば人間用の武装も申し訳程度に置いてあるけど、見てる者は少ない。


「ああ、この辺がマンイーターかな」

 

『中々種類が豊富』

 

「…………しゅごぃ」


 マシンガン、ガトリング、ミサイル、ロケット、グレネード、果てにはチェーンにくっ付いたハンマーとか有るぞコレ。

 

 …………いやアリだな? ハンマーはアリだな? 僕はシリアスの体でゴミクズを直接潰すのが嫌だったから避けたけど、対人用の格闘質量兵器は充分にアリだな?


『否定。それなら、グラディエラのシザーアームにプラズマエッジ加工を施し、格闘攻撃で消し飛ばす方が良い。対バイオマシン戦闘でも使用出来る武器の方が費用対効果が見込める。何より今回の依頼を終えて腐らせる事も無い』

 

「………………それもそうか」


 いくら弾薬費も無くクレイジーを殺せるハンマーだと言っても、それなら対バイオマシン戦闘にも使える武装で、対クレイジーにも有効な武器を探した方が有意義だ。

 

 ふむ、判断基準が複雑化して来たな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る