今日が真の初日なり。



「さて。ある意味で今日が初日とも言える」

 

「…………きのぅ、よる、だった、から?」

 

「そうそう。いや到着は昼過ぎだったけどさ、寝て起きて飯食って寝て、それで一日終わりって言うのはちょっとね」


 つまり昨日はゼロ日目とでも呼ぼうか。

 

 僕とネマがシャムの中で寝起きして、サーベイル二日目、いや一日目の朝、調整剤のお陰で二人とも時間ピッタリに、ほぼ同時に起床した。

 

 うん。昨日はゼロ日なので、今日が一日目なのだ。異論は認めん。


「いや『滞在初めて一日目』って表現なら間違っても無い? 昨日は現地入りした日だから滞在した日じゃないし、ノーカンで。アレは準備期間的な?」

 

「………………ねぇ、それ、って、じゅー、よぅ?」


 ネマに言われてしまった。全然重要じゃ無い。確かにクソ程どうでも良いね。

 

 ともあれ朝である。僕は最近ずっと一緒に寝たがるネマを連れて、シャワーと着替えを済ませる。

 

 シリアスの許しも出たのでもはや拒否する理由も無く、むしろネマを宥める時間が無駄だと分かったので最初から一緒にシャワーを浴びるのだ。

 

 ネマ的には甘え放題でずっと機嫌が良い。基本的に鼻歌フンフンさんだ。

 

 そうしてリビングに行くと、擬人化した神話級美少女メイドのシリアスが出迎えてくれる。これがホログラムじゃ無かったら朝の抱擁だって可能なのに…………!


『おはよう。良い目覚め』

 

「うん、おはようシリアス。今日もとびっきり可愛いね」

 

『世辞では無いと理解しているので、その言葉をそのまま受け取る。ネマもおはよう』

 

「………………おはょ、ござまふ」

 

「やっぱ何故かシリアスには敬語なんだよな…………」


 なんなんだよコイツ。

 

 僕らがシャワーを出るのに合わせて、シリアスが朝食を準備してくれて居た。メニューは、焼き魚、だと?


『海洋都市サーベイルは一部、漁業関する職業の朝が早い。この時間でも注文すれば鮮魚が届いた』

 

「…………つ、つまり、これはシリアスの手料理?」

 

『肯定。シリアスは一応、ラディアの婚約者だから。それっぽい行動をしてみた結果』


 幸せか?

 

 赤い切り身が乗った柄付きの皿に、ソイスープとライス、そして薬味が乗ったトーフなる意味不明な食べ物。

 

 これを『純ワフウ』と呼ぶらしい。そして魚はシャケって種類で、サーモンの仲間らしい。


『昨日ラディアが摂取したサーモンと、同じくサケ目サケ科の近縁で、広義的には同種。しかし、スシやサシミに使われる生食用のサーモンは基本的にトラウトと呼ばれる淡水に住む種類で有る場合が殆どで、あれはつまりニジマスであり、このシャケとは別種である。サーモンはシャケの事を指す言葉だが、一般で使われるサーモンの呼称は殆どの場合はサーモントラウトの事である。ちなみにこの見た目でサーモンは赤身魚では無く白身魚に分類される。赤いのは白身がアスタキサンチンの作用で色付いてる為』

 

「凄い。シリアスがメイドさんに成った一発目の朝から飯食うだけで賢くなる」

 

「…………ものしり、さん」


 常時ネットに繋いで情報を取得してるシリアスは、確かにある意味最強の物知りさんである。

 

 さて、僕は最愛の恋人が作ってくれた手料理を食べよう。天に祈りながら。


「シリアスの料理に文句を言うつもりは砂漠の砂粒程も無いけどさ、このトーフってなんなの? 豆類を手間暇掛けてペーストにした後、ほぼ味の無いブロックに固めるって何か意味が有るの?」

 

『世の中には風味こそが味の骨子であるとする向きも有る。トーフはその手の食物で、更に風味が豊かである薬味とソイソースを使って食べるのはその為だと思われる』

 

「…………なるほど。自分でトーフの風味をカスタマイズして楽しめって食べ物なのか。妙に奥深い食べ物だね」

 

「……おぃひぃ、よ?」

 

「あ、ネマは気に入ったんだ? 僕も嫌いじゃないけど、この良さを真に理解するのはもうちょっと先かなぁ。シリアスが用意してくれたってだけで神の食べ物なんだけどさ」


 焼きジャケ定食をモグモグした。美味しかった。

 

 はぁ、最高か? 世界で一番素敵なバイオマシンに乗れる幸運を手にしたのに、その世界一可愛い最高のシリアスが朝食まで準備してくれる? は? 大丈夫か? 僕の不幸の先払い足りてる? ちゃんと吊り合ってる?


「…………メイドのシリアスも可愛いし。ガレージに降りたらカッコ良くて可愛いシリアス本体も居るし。幸せが過ぎて怖くなる」

 

『沢山褒められて、シリアスは愉悦。ちなみに、メイドブリムからヘッドドレスバージョンへの換装も可能。髪型もゆるふわウェーブからツーサイドアップ、ツインテール、ショートボブ等など、ラディアが好みそうなラインナップを準備中』


 な、何故、僕がツーサイドアップとかが好きだとバレてる?


『第一回のオスシ会にて、タクトグループの女児達をモデルケースに、当該のヘアースタイルを見るラディアの視線の動きや回数を計測した結果である』

 

「これ世の中のカップルだったらシリアスの行動がヤンデレ過ぎるって評されるだろうけど此処まで見てくれてたと思うとひたすら嬉しい僕の頭は何処かオカシイのかな?」

 

『正直、ラディアはシリアスに関する事だと割と頭がオカシクなる。否定出来ない。申し訳ない』


 シリアスからもそう思われてた事実に笑いそう。正直が過ぎる。

 

 さて、シリアスの愛情たっぷりモーニングを食べ終わって食器を片付ける。…………それもシリアスがササッとやってくれたのだけど。マジでシリアスがメイドさんになってる。


「…………シリアス、楽しい?」

 

『肯定。割と』


 割とメイドさんやるの楽しいらしい。なら良いや。


『祖国を始め、古代文明の技術利用は少し、殺伐として居た。なので、現代人が成すこの様な技術利用を、シリアスは楽しいと感じる。兵器として産まれ、兵器として生き、そして人の真似事まで叶う今が、シリアスは気に入って居る』

 

「もうホント朝から可愛いの止めてよシリアス。僕が死んじゃうからさ。尊くて死ぬ」

 

『ラディアの当該発言はかなりの確率で真実へ至るので、シリアスこそ止めて欲しい。安心してメイドが出来ない。心臓が止まると発言して、比喩では無く本当に止まりそうになるラディアが、シリアスはちょっと怖い』


 可愛くて死ぬから止めてVSメイド楽しいから死ぬな。


 Ladyレディ、…………Fightファイッ


 でもシリアスが可愛いのが原因なんだから仕方なく無い? これ僕悪いの?


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