屍の山。



 日が暮れ、朝が来て、三日目も盗賊祭り。

 

 何が嫌って、野良は警戒領域を出たら遭遇率がグッと減るけど、賊はアホなので警戒領域でも通常領域でもワサワサと群がって来るのだ。

 

 しかも五回に一回はクレイジーがバンザイアタックして来て凄い面倒。生身の奴を殺すのコスパ悪くてさぁ。こんなん想定してかなったから、遭遇し過ぎてライフルの弾も尽きたよ。シリアスでオーバーキルするしか無い。

 

 三日目の昼にはもう、僕は辟易としてた。


「なんかさ、最初は戦えて楽しかったけど、賊って雑魚しか居なくてつまらないんだけど。一番強かったのがアレだよ、ダムの仲間の二人だったよ」

 

「マジっすか」

 

「いやホント。だってあの二人は武装マトモに使えてたし、僕に突っ込んで来た奴は隠してたコンシールドの騙し討ちで殺したけど、それまではちゃんと『殺し合い』だったもん。それに僕が犬投げて撃墜した方、シャムに飛びかかった方もさ、一人が僕を抑える間に仕事を終えようとした訳じゃん? 盗賊を褒めるのはアレだけど、『仕事を成功させようとした』姿勢はちゃんとしてたよね」


 進むとアホにブチ当たるので、三日目のお昼もシャムの中で。

 

 でも今は警戒度が高過ぎるので、僕の休憩中はネマがシャムのコックピットに入り、有事の際は自律シリアスと共にシャムヘッドアタックで戦う。

 

 大型下級であるシャムの突進頭突きは当たれば超強い。そしてネマは突進が上手くなって来たので、割と強かったりする。

 

 少なくともその辺の雑魚盗賊なら、自律シリアスの援護が有ればネマだけでも倒せる。

 

 そのせいで、盗賊を次々と磨り潰すヤベェ子供二人だってダムから認識されてて、僕は当然としてネマにも「○○っすか」みたいな喋り方になってる。格下感が凄いぞダム…………。


「ダムも動けたら強かったのかなぁ」

 

「いえ、自分なんてウンコっす。ラーさんには適わなかったっす」


 ちなみに僕はラーさんと呼ばれてる。ネマは姐さんだ。何故僕の方が格下感有るの?

 

 しかしダムも、今は凄い速度で更生中だ。

 

 なんか、こう、シャムで美味しい食事が日に三度出て、寝床はふかふかのベッドだしシャワーも浴びれて、服は一着だけど高性能洗濯機にナノマテリアル製の服をポイッと入れとけば、シャワーを浴びて出てくる頃にはパリッとした服になってるのだ。

 

 衣食住足りて礼節を知るなんて言葉が有る様に、ダムはそれが足りて礼節を知り始めた。

 

 それと、なんで僕がこんなに強いのかと聞かれ、これで何度目かと言う感じだけど、僕の人生を軽く語ってみた。

 

 ロコロックルさんも気になったらしく聞き入って、ダムも、なんか、泣き始めたりした。

 

 スラムで親に置き去りにされた僕がこんな生活を手に入れるまで頑張ったのに、自分は何をしていたのか。そんな事を呟きながらガチで後悔してた。

 

 うん。えっと、ロコロックルさんはダムに情が湧いてる感じだけど、僕は正直「今更後悔してるの? 精神衛生的に良くないから最後までクズだった方が楽だよ?」って思ってる。

 

 だって、もう、どうやってもダムは這い上がれない。


「さて。僕はまた仕事に戻るね」


 兵士に突き出す時には戦闘記録も渡すから、僕の警告を無視して襲って来た盗賊行為の証拠は揃ってるし、何よりダムは既に仕事を成功させた経験があるのでアウトだ。

 

 孤児は例外として、普通の人は大体、誰もが情報端末を持ってる。

 

 その端末にはどんなしょっぱい雑魚端末でも備わってる『緊急時オーバードライブ』って言う機能があって、これは所持者のバイタルが危険域に達すると発動し、エネルギーパックの残量を全て使って端末機能をオーバードライブさせ、周囲の状況を読み取って一瞬だけ中距離通信を発する物だ。

 

 その効果は、要するに端末所持者が絶命する瞬間にどんな状況だったかを近くの都市に送信する物で、余程端末のエネルギー残量がゴミじゃなかったら十中八九『端末所持者を殺した相手』に関するデータを都市に届ける。

 

 物にもよるけど端末に使われるエネルギーパックは交換せずに二ヶ月は持つ。

 

 その残量を全部消費して端末その物まで自壊させながらの瞬間的なオーバードライブ通信は、劇的に運が悪くなければ殆どの場合が近くの都市回線領域に届く。

 

 普段ならそんな通信能力なんて無い端末だけど、オーバードライブしたうえで、ほんのゼロコンマ秒だけの時間なら都市に届くのだ。

 

 つまり、ダムが殺した相手全員が余程のエネルギーゴミ残量端末所持者か、余程の不幸体質だったとかじゃないなら、十中八九ダムの犯罪記録は都市にある。

 

 ほら、情報端末って簡単なスキャニング機能も着いてるから、もしダムが間近で殺してたりしたら、生体情報までバッチリ残ってるはずだよ。


「と言うか、都市の外に出るなら端末のエネルギー残量は満タン推奨ってのが市民の常識らしいし」


 待たせてたシリアスに乗りながら、独りごちる。

 

 殺せば殺す程情報が溜まる。

 

 勿論戦争とか、当たり前に人が死ぬ地域からのオーバードライブ通信はカットされたりもするけど。そのせいで戦地の近くは盗賊が多いらしい。

 

「…………あれ? もしかして、殺せば殺す程データが溜まるシステムなら、もしかして懸賞金とか着いてたりする?」

 

『肯定。規定数以上のを上げた盗賊を討伐した戦闘データには、賞金が発生する制度がある。なので、生体金属ジオメタルでは無く賞金を狙う狩人も存在する。また、襲われる事を小遣い稼ぎに護衛を請け負う運び屋も同様』

 

「マジか。いや、確かに人狩りマンハントとは言うけどさ」


 そっかぁ。じゃぁ僕もこの旅路でボコった雑魚共の内の少しくらいは、賞金が着いてたりするのかな?

 

 うーん、怪しいな。だって基本的に雑魚かったもん。


「皮算用は止めようか。依頼を熟せば充分なお金が貰えるんだし」


 下手に期待すると、ガッカリ感も凄いし。

 

 その後もやはり、盗賊が襲って来る。日が暮れ始める頃には屍の山だった。嘘。移動してるから山なんて築かれない。けどそれくらいは殺した。


「…………嘘でしょ? こんな事ある? もしかして何処かに盗賊が繁殖してる専用の都市とかある?」

 

『肯定。都市とは言わず、村や町単位なら可能性は充分』

 

「て言うかダムに聞けば良いか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る