生け捕り。



 結局、クソザコナメクジ君は生存を許された。

 

 コイツの為にルート変更するのもムカつくし、目的地の海洋都市で司法に引き渡そうと決まる。

 

 うん。こんな遠方で遭遇した『人ですら無い獣』を引き渡されるサーベイルの兵士さんも、困惑するよなぁ。今から申し訳ない気分だ。

 

 というか、クソザコナメクジ君もさ、今を生きて司法に引き渡されても、多分ほぼ確実に人体実験とかの材料にされるよ? サクッとプラズマ砲で消し飛ばされた方が幸せだと思うけどなぁ。


「まぁそんな訳で、君の活動圏も特に制限はしないよ。必要無いからね。でも、分かってるとは思うけど、余計な事したら悲惨な事になるから、やめた方が良いよ?」


 クソザコナメクジ君はシャムの居住区画に置いて、その内部なら特に制限無く動ける事になった。勿論僕達それぞれの個室に入ったら殺す。

 

 クライアントと一緒にして、しかも拘束しないなんて普通は有り得ないけど、安全管理は今のところ完璧だ。

 

 まずクソザコナメクジ君には、投降時にコックピットから出て貰って、その場で全裸になって貰った。何を隠し持ってるか分からないからね。

 

 それから僕がライフルを突き付けながら、ロコロックルさんが提供しくれた着替えを着せる。ロコロックルさんは殺害を決断しなかった自分の責任だからと、服の一着はタダでくれた。

 

 それから、スキャニングで爆発物とかを体内に持ってないかを確認してから、クソザコナメクジ君にはとある首輪をして貰う。

 

 シャムの居住区画に『こんな事も有ろうかと』的に備え付けられてたアイテムの一つ、犯罪者拘束用ネックバンド。


 

 通称『ギロチン』である。


 

 別に首を落としたりはしないけど、これが首にハマった時点で人生終わりって意味でその通称となってる。

 

 これは、装着者の行動を読み取って、許された行動以外をした場合に作動し、即座に『それ食らうなら万回死んだ方がマシ』ってレベルのパルスショックを食らう。死にはしないらしい。

 

 それがどんな物かと言えば、人間の体に走る痛覚神経全てをピンポイントで攻撃する装置だそうだ。装着者の体から読み取った致死量ギリギリの痛覚で責められ、しかも持続する。本当の生き地獄らしい。

 

 装置の設定は、まず僕ら三人への攻撃的な行い。これはルールの穴を突いて、みたいな緩い事が出来る設定じゃなく、装着者の脳波まで読み取ってるらしくてどうやってもすり抜けられない。

 

 そして、もう一つの設定は活動領域の侵犯。居住区画から逃げようとしたり、僕らの部屋に入ったりするとパルスショックが始まる。

 

 しかも元の活動領域に戻るまで終わらない。そしてパルスショック食らってる間は瀕死ギリギリの痛覚を突かれてるので動けない。

 

 つまり、一歩でも逃げようとしたら僕らが戻してあげるまで無限に生き地獄を食らう。

 

 当然、首輪に干渉しようとしても発動するし、僕らを脅して外させようとしても発動する。


「まぁ、ウチのシャムは設備良いから、最後の贅沢だとでも思って過ごしなよ。手向けとして滞在費も取らないし、高級フードマテリアルを使った高級フードプリンターが出す料理も食べ放題だよ」


 そんな訳で、クソザコナメクジ君は居住区画でのみ、海洋都市サーベイルに到着するまでは自由だ。

 

 贅沢出来る喜びか、未来を思っての悲哀かは知らないけど、名前をダムロと言うらしいクソザコナメクジ君は号泣していた。


「て言うかさぁ、ウェポンドッグ持ってるなら、普通に傭兵やれば良かったじゃん。なんで盗賊なんてやってるの?」

 

「…………ぐずっ、あれっ、は。いじょうさくせん、あたって」

 

「えっ!? 君も生身で移乗攻撃やっちゃうクレイジーだったの!?」


 マジかよ都市外領域クレイジー過ぎるだろ。

 

 でもまぁつまり、移乗攻撃で機体を奪ったって事は、その時に相当数殺してるはずだ。自業自得だね。

 

 色々と用意が終わったから、そろそろコッチも再出発だ。


「じゃぁ、僕は機体に戻るけど、本当に余計な事しないでね? 最後に死なば諸共とかやられても、多分僕ら、君の死体の処理が面倒でちょっと困る程度にしか成らないし」

 

「…………おど、おとなしくっ、してるっ」

 

「良い子だねぇ。でも盗賊だから悪い子だねぇ」


 呑気に呟いて、僕はシリアスに戻る。

 

 クソザコナメクジことダムロ君は、…………微妙に呼び辛いな。ダムで良いか。

 

 ダムは最初に、馬鹿な事をしない様に一回だけ、態と活動領域の外に一歩だけ出して有る。その時にパルスショックの激痛を理解し、どんな場合にそれが発動するかもしっかりと教えてある。

 

 だから余程彼が、言葉も理解出来ない本物の猿じゃ無いなら馬鹿な事はしないはずだ。してもその瞬間にその場で瀕死に成るからコッチは困らない。

 

 一応、逆に、ギロチンとまで呼ばれる確殺アイテムを装備してもこの場から逃げ出せる程の頭脳の持ち主だった場合は困るかも知れないけど、そんな頭があったら盗賊なんてやってないでしょ。


「では、出発!」

 

『了解。エネルギーは回復済み』


 シリアスもキッチリ三機のお犬様をモグモグしていらっしゃるので、エネルギー残量もかなり回復した。

 

 コッチもタンクをアプデしたし、専用精製されて無い生の生体金属ジオメタルではエネルギー量もお察しなので全回復とは行かないけど、それでもかなり回復した。

 

 今思うと、二機目にあんな乱射する事無かったな。アレが無ければ全快してたかも。


『警告。センサーに感』

 

「…………またか」


 ダムを捕虜にしてからコッチ、野良より賊の方が増えて来た。て言うかそんなに居る? ってレベルで盗賊が来る。

 

 盗賊は何か、装備がショボイって縛りでも有るのか、大体弱い。

 

 基本的にゼロカスタムで、中にはゼロカスのアンシークで突撃して来るアホも居る。君それ機体の使い方間違ってるよ?

 

 途中から多過ぎる盗賊に切れたネマも参戦して、でも武装が無いから真正面からの体当たりでブッ飛ばしてた。

 

 有効な手だけど僕が戦える内はシャムの装甲が痛むから止めなさい。


「………………そんなに都市外で生きて行ける物なの? 多過ぎない?」


 盗賊、頭の出来から生態まで、謎過ぎる生き物だ…………。


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