旅団とお別れ。



「では、元気でな。また何時か」

 

「ええ。皆さんもどうか、お元気で」


 整備屋サンジェルマンが新しくなり、タクト達も引越し、僕の新しいお家であるシールドダングも納品されてから数日。

 

 今日は、永久旅団がガーランドから旅立つそうだ。

 

 連絡を受けた僕はシリアスで東ゲートに行き、タクトグループも総出でお見送りだ。移動はまたレンタビークルである。


「はぁ、しかし、口説けなかったな」

 

「あはは、お誘いは光栄なんですけどね」


 旅団の幹部からは、僕も一緒に旅に行かないかと誘われた。つまり旅団への勧誘だ。

 

 とても光栄だし、楽しそうでもある。けど、僕は断った。


「ああ、会計の奴らが絶対に煩いぞ。是非にと言われて居たからな」

 

「えと、機体鹵獲の件で?」

 

「それもある。そして、その件で鬼の様に稼いだだろう? 旅団の金策が手頃に行える人材は得難いからな。企画力その物も魅力なのだよ。奴ら、絶対に勧誘しろと鬼の形相だったのだ。…………勿論、私も君に来て欲しかった」


 ライキティさんにそう言われ、カルボルトさんやセルクさんや、グドランさんも頷いてる。会計の幹部さんは僕を前にすると暴走しそうなので控えてるそうだ。


「ごめんなさい。僕は、まだ砂漠をので」


 ガーランドで過ごした五年。父がくたばってから四年。まぁ人生がゴミその物だった。

 

 けど、僕はガーランドが嫌いじゃない。だって此処は、不法滞在者から見ても普通の都市だ。

 

 水は高いけど、極々普通の、善良な都市だ。

 

 何より、シリアスに出会えた。その一事だけで最高だ。

 

 そんな都市を、僕はまだ『良い想い出』で飾れて無い。

 

 せっかくシリアスとこれから楽しく過ごせるのに、僕はまだこの都市を心から『良い場所』だと思えてない。想い出が足りない。楽しさが足りない。

 

 僕の人生はもう、幸せ以外に有り得ない。なら、楽しく無い都市なんて、町なんて、嘘である。


「だから、僕はまだ行けません。それに--……」


 旅団は、旅を愛する傭兵団だと聞いた。

 

 何があっても旅を止めない。旅を続けるのに必要ならば、負け戦をひっくり返してでも無理やり旅路にしてしまう。旅の邪魔をするなら何人だって殺してみせる。

 

 そんな人達だと聞いた。


 だから…………。


「僕もその内、色んな場所を見に行きます。その時に偶然出会えた方が、楽しそうじゃないですか。それも旅の醍醐味なのでは?」


 旅団は好きに旅をする。僕も後から好きに旅して、偶然出会ったら、きっとその方がすっと楽しい。

 

 こんな場所を見た。あんな場所に行った。アレが美味くて、ソレが楽しく、ドレが綺麗で、旅が楽しかった。

 

 そんな事を話し合うのが、きっと僕と旅団の正しい距離だと思うのだ。


「くく…………、クククッ、ふふ、ふはははははッ……! 旅の醍醐味を語られたら、私はもう何も言えないじゃないかッ! ズルいぞラディア君! それはとても楽しい未来だと、私も思ってしまったじゃないか!」

 

「えへへ、ごめんなさい」


 その後も、カルボルトさんから「なぁ入れよぉ。一緒に行こうぜぇー?」と誘われ、「また会ったらお買い物に行こうね!」とセルクさんに言われ、「…………次は、俺もきっと、オリジンに」とグドランさんが言ってた。

 

 まだオリジン諦めてないの、グドランさんのハートが強過ぎる。

 

 きっと出会えると良いな。そしたらシリアスも一緒に、オリジン二機と古代機乗者オリジンホルダー二人で語り明かすのだ。


「では、また」

 

「ええ、また」


 機体に乗り込んで出発する旅団の皆を見送って、見えなくなるまで見ていた。

 

 タクトグループの男達は、セルクさんとの別れがキツいらしい。別にグループから足抜けして旅団入りしても良かったのにとタクトが言うけど、それはなんか違うらしい。

 

 と言うか、僕ら誰も、セルクさんが独身か否か聞いて無くない? 旦那さんとか居たらダメージで死ぬんじゃないの?


「せっかく東区に来たし、少し見てく?」

 

「良いんじゃないか? ウチの野郎共はセルクさんショックで数日使い物にならねぇし。…………そうだな、財布でも買うか」

 

「あ、良いね! 電子決済だけじゃ味気ないし、少ないらしいけど電子決済対応して無いお店もあるらしいし」

 

「と言うか、単純に『金持ってる象徴』っぽくて、ちょっと憧れるんだよな。カッコイイ財布に」

 

「わかるぅー!」


 タクトの案で、東区を皆で適当にプラプラして、東区特有の『外周区露店』を冷やかす。

 

 東区はガーランドの玄関なので、こう言う小さな流通単位でも商売が盛んなのだ。他の区には露店なんて見た事ない。


「おお、現金のやり取りも盛んだね。ちょっと降ろして来た方が良いかな?」

 

「そうな。郷に入っては郷に従えって言うし。露店の支払いが現金ベターってんなら、俺らも用意するべきだろ」


 なんでもドローンで運んでくれる現代でも、お金のドローン輸送はされて無い。

 

 単純にドローンを狙った犯罪が増えるし、盗まれた場合に銀行と顧客間の問題が無意味に複雑化するから。なら最初から現金の入出庫は人の手でって決まってるそうだ。

 

 それでも、簡単な金額の入出庫ならその辺のマーケットにある無人機で降ろせる。


「バイオマシンのパーツとか天然物の食べ物じゃ無くて、普通の買い物なら一○○シギル札が数枚あったら充分過ぎるよね?」

 

「アレだな。バイオマシンに関わると、金銭感覚がガッシャンガッシャン割れてくよな」


 つい最近、五○万シギルが誤差とか思ってしまった僕には耳の痛い話しだ。


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