ねまがいい。



 僕がダング購入の意志を強めると、何の気なしにおじさんが聞いてくる。


「そうか。しかし、どれ買う? ダングはデザリアと違って人気も高いから、正規品でも最初からカスタムしてある機体も多いし、用途によっても違うぞ」


 そう、ダングは人気の高いバイオマシンだ。輸送機と言えばコレっていう決定版。どの都市、いやどの国でも輸送機はだいたいダングらしい。

 

「そうですねぇ…………。まぁ取り敢えず、当初の予定通りに基本はガレージダングが良いです。ただ居住区画も欲しいんですよね」

 

「お? ついにウチの居候は卒業か?」

 

「あははは! まさかですよ。新サンジェルマンのガレージを当てにしてるので、寝床が居住区画からガレージのハンガーに成るだけです」

 

「占有料は貰うからな? 月に五万シギルでどうだ?」

 

「高くないです? 五万シギルあったら大型ハンガー付きの賃貸借りれますよね?」

 

「その分、整備は無料にしてやるよ。補給もお前が使ってる弾薬を纏め買いで安く仕入れて、お前にも安く流してやるし。それにカスタムの工賃も多少はマケてやるよ」

 

「おなしゃーす!」


 高待遇で僕の新居が決まった。

 

 居住可能なダングに住み、そのダングはおじさんのガレージに住む。

 

 おかしいな。ダングとは言え、持ち家を買うみたいなモンなのに、なんで家賃が掛かるのか。


「あ、じゃぁシリアスはダングの中か?」

 

「そのつもりです」

 

「ふむ。じゃぁその分も値下げしてやるか。シリアスの整備もダングの中でやるなら、こっちのスペース食わねぇしな。二重取りは良くねぇだろ。…………三万でどうだ」

 

「おなしゃーす!」


 おなしゃーすリターンズ。


 最初の五万は二機分のスペースでカウントしてたらしい。なるほどね。

 

 そんな訳で、僕ら皆大忙しだ。それが理由でシリアスのコンシールド加工が出来なかったんだけどね。

 

 あれは流石に、内部の調整とか改造が避けられないので、時間の掛かるカスタムなのだ。仕事が激早いおじさんでも三日使うと言えば、どれだけ大変な作業かは分かると思う。

 

 で、おじさんは今まさに移転作業中で、既に移転先の建築も大金ぶち込んで急速に進めてる。

 

 数日で移転先も完成して、サンジェルマンは向こうに移るのだ。そんな状況で三日も掛かるカスタムとかしてられないので、今は保留になってる。

 

 ちなみにカスタムパーツはもう届いてるので、準備さえ終わったらシリアスはまた進化出来る。

 

 はぁぁプラズマブラスター楽しみだなぁ!

 

 勿論VRバトルで試してるので、買うのに躊躇いは無い。


「よし。おじさんは忙しそうだし、ネムネマに免許取得させる準備でもしようか。じゃないとダング買えないし」

 

「………………がん、ばぅ」

 

「〝ます〟を付けろよデコスケ野郎」


 もう良いと思ってたけど、この子なんか僕がこれ言わないとちょっと寂しそうな顔するのだ。これ言うと眠そうな顔で少しだけ笑う。

 

 眠そうな無表情からの微笑って、なんか化学反応でも起きてるのかって疑うくらい幸せそうなので、ちょっとだけ絆された僕は定期的にデコスケ野郎と口にする事になった。


「で、ネムネマは--……」


 読み書き出来るのか。そう聞こうとしたら、バトルジャケットの袖をちょいちょいされた。摘んで引いてるその手はなんだね?


「なに?」

 

「…………ねま。が、いい」

 

「………………どゆこと?」

 

「よび、かた」


 ああ、ネムネマじゃなくて、ネマって呼んで欲しいと?

 

 ふむ、なるほどね。


「なにちょっと距離詰めて来てんの君」

 

「………………だめ?」

 

「〝ですか〟を付けろよデコスケ野郎。いや別にダメじゃ無いけどね? どしたの? 仲の良い人が居なくて寂しいの? でも孤児ってそんなモンだよ? 慣れないと辛いよ?」


 まぁ必要以上に厳しくするつもりも無いので、呼び方くらいは応えよう。

 

 そうだよなぁ。孤児初心者だもんなぁ。いきなり知らない都市に放り出されて、何も分からないまま飢えたんだもんなぁ。

 

 せめて身近な人が居ないと、不安が消えない。けどネマには身近な人が居ない。だから、自分で距離を詰めないとずっと一人なのだ。


「ねま、も。らでぃあ、って、……よぶ」

 

「〝さん〟を付けろよデコスケ野郎。…………わぁ凄い、ちゃんとしたバージョンが言えたのちょっと嬉しい」


 フィクションブックで見たセリフそのままが言えた。

 

 とても嬉しいので褒めてあげよう。サラサラになった頭を撫で撫でしてあげる。


「…………えへっ」

 

「眠そうな顔で笑うともっと眠そうだね」

 

「………………かわ、い?」

 

「まぁ、可愛いんじゃない?」


 ネマの顔はまぁ、とんでもなく綺麗なんだけどね。

 

 でも僕としてはどっちかって言うと、ポロンちゃんの方が可愛いと思う。何時もニコニコしてるし、喜怒哀楽がコロコロ変わって、見てて飽きない。

 

 ああ、僕の最愛最高最強最優な完全無欠の一位がシリアスなのは確定的に明らかで語るまでも無いって前提で、普通の感性ならこう感じるよねってお話しだ。

 

 多分、造形美に点数を付けるならポロンちゃんよりネマの方が高得点なんだろう。けど、僕は本人の気性まで入れたらポロンちゃんが可愛いと思う。頑張り屋で「ですぅー!」って言ってるポロンちゃんは癒されるぞ。

 

 なんと言うか、首輪付けてリードに繋いでお散歩したい。芸を仕込んで、成功したらヨーシヨシヨシヨシって撫でて上げたい。きっと尻尾をブンブンして喜ぶはずだ。

 

 いや、今はポロンちゃん飼育方法を考えてる場合じゃ無い。


「で、ネマは読み書き出来る? まぁ出来ると思うけど」


「…………でき、ぅ」


 うん、まぁそうだろうね。アレだけ高価そうな服が着れる箱入りだったんだし、教育くらいは受けてるはずだ。

 

 むしろ、そんな状態の子供を都市にバレず捨てる為に、父親は何をしたのか、どんな方法でネマを連れて来たのか……。

 

 うん、気になる所だ。闇商人でも使ったかな?


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