孤児流サウナ。



「まぁ良いか。気に入らなかったらそれまでの給料を払って追い出せば良いし」

 

「………………がん、ばう」


 〝ます〟を付けろよデコスケ野郎。もう良いよ。良く考えたら八歳の子供とか幼くて当たり前じゃん。スラムで暮らした経験が無いならこんなもんじゃん。


「て言うか、歳は? 八歳であってる?」

 

「…………ぅん、やっ、つ」


 八つね。八歳で正解らしい。

 

 ちょこちょことネムネマの事を聞きながら、歩いて三分。

 

 ダイレクトに汚い幼女を連れてテント村へ到着した。


「………………はぁぁぁぁあ、シリアスが尊い」

 

『苦笑。まずスピカを呼ぶべき』


 苦笑された。でもそんなシリアスが僕は好きだ。

 

 テント村で待ってるシリアスは、また少しカスタムされてカッコよく成ってる。

 

 グラディエラは僕が買える最大グレードの物にアップグレードして、コンシールドパルスライフルも片側二門ずつに増えてる。

 

 交互に発射する事で連射力を上げ、小型パルスライフルのままで火力を増やす試みだ。

 

 ウェポンテールも炸薬砲のエキドナから、長距離用中型パルスライフル『GRT32ccグラムスター』へと換装してある。装弾数は驚きの五○発! エキドナと比べ物に成らないね!

 

 グラディエラの装弾数もアップグレードで増やしてあって、片側一二○発装弾可能。左右で合計二四○発だ。

 

 脚部も太く力強いシッカリとした物に変えて、まだ背部のコンシールドブラスターは未実装だけど、かなり完成系に近くなった。

 

 当然生体金属心臓ジェネレータも乗せられる最大サイズの最大グレードを選んであって、タンクも大容量化。グラディエラとグラムスターにもマガジンタンクをオプションで付けてある。


「はぁぁしゅてきぃ………」


 何回見ても溜め息が出る。

 

 カラーリングは少し変えて、ベースの九割はデザートカラーに戻してある。

 

 シザーアーム、レッグ、テールの先端を黒くして、デザートカラーまでグラデーション。そして銀色のワイヤーラインで控え目なフレイムパターンを描いてみた。

 

 これで後は、背部にコンシールド加工をしてバーニア機動系を一式入れたら理想系だ。ああ、生体金属副心臓サブジェネレータとサブタンクも必要か。


「…………あ、あの、ラディア君?」

 

「ふぇ? ああスピカ。ボケっとしてごめんね?」

 

「う、ううん。良いの。えっと、その子が洗う子?」

 

「うん。お願いしても良い? ほら、ネムネマも」


 汚い頭に手を乗せて、頭を軽く下げさせる。特に抵抗も無く、ネムネマは素直にペコッと頭を下げた。

 

 さて、砂漠の孤児がどうやって体を清めているのか。その方法はまぁ人それぞれ何だけど、タクトグループではサウナを利用してる。

 

 此処は砂漠なので、手頃な石を陽が射してるその辺に放置すれば、立派な焼き石になるのだ。それを専用のテントの中に運び、焼けた石の上に水を掛ければジュワァァアッと気化して、テントの中をサウナに出来る。

 

 当然、焼き石でも加熱し続けてる訳じゃないので、水を掛ける度に冷める。

 

 けど陽射しに置くだけで何回でも無料で再利用出来るので、石を積んだカゴを何個か用意してローテーションすれば、ずっと熱い石を使って充分サウナに出来るのだ。

 

 これが、少ない水を効率的に使って身を清める為に、タクトグループが辿り着いた答え。

 

 自分の汗を利用してゴッシゴシと垢を落とし、最後に良く搾った濡れ布巾でササッと拭けば、ほら清潔!

 

 勿論毎日入れる訳じゃない。ガーランドは水が高いんだ。毎日サウナで水を消費出来るほど、余裕なんて無い。

 

 普通の市民だって、オアシス水道の定額契約をしてるからシャワーとかお風呂とか入れるんだ。

 

 使う度に利用料が掛かるなら全員が一瞬で破産してるさ。ボトル一本で七シギルだからね? お風呂に水なんて張ったら月給の一割か二割は吹っ飛ぶんじゃない?


「サウナ風呂に入れてる間、こっちで服の用意とかしとくから」

 

「うん。着てる服を洗っても良いけど…………」

 

「まぁ、高そうなナノマテリアルだろうし、洗えば綺麗になるんだろうけどさ、そこまで汚れてると気分的に嫌じゃないかな?」

 

「…………えへへ、私達って、『気分的に嫌』だからって、服を選べるくらいに成ったんだね。嬉しいなぁ」


 スピカの素朴な喜びが、僕の胸にも刺さる。

 

 本当に、その通りだ。ほんの少し前までだったら、僕は何がなんでも汚れたナノマテリアルクロスを洗って使っただろう。『気分的に嫌』だからって他のを選べるって、思わずそっちを選ぶ精神性を持てたって、これは僕の成長だろうか? それとも堕落?


「…………まぁ、良いか。底まで堕ちなければ、多少はね」

 

「ん? どうしたの?」

 

「いや、何でもないよ。ネムネマをよろしくね」

 

「わかった! ラディア君も、この子の服と、あと私の操縦訓練、よろしくねっ?」


 この場に来た時点で、シリアスがネムネマをスキャニングしてるはずだ。そのデータで適当に注文すれば、端末の座標までドローンが配達してくれる。

 

 なので、まぁ「用意する」とか言っても特にやる事無いのだ。端末でピピッとすれば終わりだし。


「……さて、じゃぁネムネマの雇用条件とかを決めておこうかな?」


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