アルバリオ。
ほぼ最奥区と言って良い上級区ポジションにあるこの豪邸。
見るからに『古代文明よりも昔にあったとされる
数千年前からこうですよって言われたら信じそうな佇まいだ。本当にフィクションブックに出て来そうな
シリアスに頼んで建物宛に通知を送り、依頼した傭兵が現着したと知らせるも、僕は返答が有るまで圧倒されてた。
いや、うん。正直、この建物は見た事あるよ。四年もガーランドに居て、僕は都市内を結構網羅してる方だし。
けど、まさか、僕が此処の住人に招かれるなんて思って無かった。人生何が有るか分からないものだ。
『確認致しました。ようこそアルバリオ邸へ』
ハウスキーパーなのかゲートキーパーなのか知らないけど、御屋敷の入場を管理してるっぽい使用人の人から返答があり、固く閉ざされた門が開く。
ペダルを踏んで中に入ると、もう庭の緑が多くてクラクラする。砂漠の環境でこんな場所を管理するなんて、どれだけお金を使えば叶うのか。そんなにお金有るなら僕らにくれよって、理不尽にキレたくなる。
更に追加で、この建物の駐機場までのルート案内も通信で届いて、僕はそれに従って豪邸の庭をシリアスで歩く。
「いや、ホント、凄くない? この花々とか、草木を維持するのにどれだけお水使うの?」
『相当に高価な循環器を使ってると予想される。更に、見え難いが屋敷の外壁から高度なパルスシールド反応も確認。蒸発分の水分も何らかの形で回収、再利用してると予想』
「何その無駄な超技術利用。もう此処だけガーランドじゃ無くない? 此処砂漠じゃ無くない?」
て言うかさ、此処まで稼げるならライドボックスじゃ無くて実機買えば良かったのでは? なんでポロンちゃんにライドボックス買ったの?
いや、もしかして、有り得ないけど、まさか依頼人、ポロンちゃんと全然関係が無い人が鬼みたいなタイミングで僕に依頼した?
そんな可能性の那由多に泳ぐみたいな妄想の末に屋敷の駐機場へ来て、シリアスを停める。
屋敷の駐機場はハンガー併設はされて無いタイプで、本当に駐機する為だけの青空スペースだった。イメージで言うとビークル用の屋外駐車場がバイオマシン規格まで大きくなった様な感じ。
そこには既に、依頼人らしき人とその娘さんが待ってて、僕がシリアスで駐機場に入った時点で手を振ってくれてた。そこで僕は自分の妄想を否定され、ちょっと安心出来たのだ。
そう、依頼人っぽい人の横に、ホロ通信の向こうに居たポロンちゃんが居るのだ。
ポロンちゃんはあの時見たままのライドジャケットを着てて、この規模の金持ちならやっぱりアレ特注品なのかなってどうでも良い考えが頭を過ぎる。
一応外なので、ポロンちゃんはライドジャケットに合わせた色のマリンキャップを被ってる。ちょっとラフな軍人さんっぽくなってて似合ってる。
ちなみに僕も、今はディアラちゃんドレスじゃ無くて黒のバトルジャケットにカーキ色のカーゴパンツスタイルだ。傭兵ルックだよ。
髪型も、折角なのでヘアセットマテリアルを使ってビシッと決めた。少しだけ前髪を遊ばせたオールバックだよ。
遊んでる前髪分だけオールじゃ無いけど、ほぼオールバックだよ。『ほぼ』の時点で『オール』じゃ無いけどオールバックだよ。異論は認めない。
ほら、少しだけ前髪が短く跳ねてるオールバックの方が、カッコ良くない? フィクションブックに出て来る三白眼のイケメン執事キャラっぽくてさ。
僕も最近は、ネットで色々なフィクションブックも読むんだよ。そうやって自分の可能性を模索して行きたい。レディースよりもメンズの可能性を探りたいのだ…………。
ちなみに、このヘアセットはオートメイク先輩がやってくれた。あれ、メンズにも対応してるのかよ。化学ってすげぇ……。機材から伸びたアームがウニョンウニョンって僕の髪を弄ってマテリアルで良い感じに固めて行くのだ。
ヘアセットマテリアルのお陰で、僕のこのイケメン執事風アホ毛付きオールバックは、どんな強風でも戦闘機動でも乱れ無い鉄壁のヘアスタイルだ。これを崩すにはシャワーを浴びるしかない。温水を一定時間掛け続けると鉄壁は崩れ去るのだ。
『システム、スタンバイモードに移行。降機準備開始推奨』
「了解、降機準備開始。…………やっぱり口頭で確認宣言するとカッコよくてテンション上がるよね」
『ラディアの好みかと思ってやってみた』
うん、ノッてみたけど、普段やってないもんね。降機準備開始とか初めて言ったよ。完全にアドリブだ。
そうやってシリアスが駐機場に座り、システムを落としてモニターを下げる。ホロバイザーとセーフティロッドを跳ね上げ、外のキャノピーを開いてからハッチオープン。
さて、依頼人とご対面だ。
可変ハッチのタラップを踏んで外に降りると、相変わらず燦々と降り注ぐ陽射しの元に、四人の人達が居た。
一人はご存知ポロンちゃん。シリアスから降りて来た僕を見てポカーンって顔してる。うん、ごめんね。ホントごめんね。
ディアラちゃんのイメージで待ってたら、バトルジャケット着たオールバック男が降りて来たらビビるよね。マジでごめん。帽子被っててオールバック目立たないとか関係無いよね。ホントごめん。
そして次に依頼人っぽい人、つまりポロンちゃんの父上っぽい人。この人が多分、依頼をくれたアズロン・アルバリオさんなんだろう。
見た感じは四○代も後半に見えて、ポロンちゃんの歳を考えると結構晩婚だったのだろうか? アンチエイドの有無も考えると、尚更分からない。実は大量に子供が居る内の一人がポロンちゃんだったりするのかな? まぁ良いか。
ガーランドでは黒髪の次に多い灰髪で、色素は薄目だ。ライトグレーよりちょっと濃いかなってくらいのカールヘアー。
拘りなのか、アズロンさんは着ている服も屋敷に合わせた
三人目は、…………多分、ポロンちゃんの母上かな? もしかしたらお姉さん? 若い。二○代に見える。
ポロンちゃんとそっくりのクリームヘアーを腰まで伸ばし、ポロンちゃんに似て愛らしい笑顔を、だけど落ち着いた雰囲気の笑顔を
身長がアズロンさんとポロンちゃんの丁度中間くらいで、つまり低身長でやっぱり若く見える。母なのか姉なのか謎だ。けど、母親とはかくあるべしって貫禄さえ滲み出るような、ちょっとした凄みも感じる。やっぱり母上さんなのかな?
最後に、………………そう、リスペクトしたい。僕のオールバックのモデルになった様な、ちょっとナイスミドルで目元が優しいけど、イケメン、いやイケオジの銀髪オールバック執事がそこに居た。
その四人が、アルバリオ邸で僕を待っていた人達である。ポロンちゃん以外は例外無くニコニコしてるんだけど、何でだろうね?
ちなみに全員、屋根のある待機場所に居るからノット帽子スタイルだ。ササッと屋敷から出てササッと戻るつもりなんだろう。
「…………ご依頼、有難うございます。指名依頼を受けましたランク一傭兵ラディアと、その乗機シリアスです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます