金取れば。


 

 ちなみに、ホロ通信が入った時には、座席の裏からターラとリアスも顔を出して挨拶はしてある。

 

 このふにゃふにゃの空気の中、さらに三○分程かけて、ギリギリ、免許取得には余裕で落ちるだろうけど、ギリッギリでランクマッチは戦えそうな感じになった。

 

 もちろん負け前提で、悪足掻きが出来るってレベルでしか無いけど。


「流石に口頭で一時間に満たない時間教えて完璧に仕上げるとか無理だよね。そんな仕上がりになったら天才だって言うね。うん、普通はこうだ」

 

「むしろ、上出来じゃね? 歩かせ方も知らなかったズブの素人が、止まってる的になら砲撃当てられるんだし。もしかしてディアラって教えるの上手いのか? もうそれで金取れば?」

 

『凄いです! 操縦が楽しいです!』


 更に五分後、僕は口を出さずに、ポロンちゃんが自分で全部考えながらアリーナをグルグルと歩き、時には壁を砲撃してる。

 

 そうして練習後、気合も充分。ポロンちゃんが僕に挑んで来た。マジか。


『よ、よろしくお願いします!』

 

「あー、うん。えと、本当に良いの? 僕、そこそこ強いけど」

 

『大丈夫です! ボコボコにして下さい! でも、あの、この子が傷付くの悲しいので、ちょっとだけ手加減して下さい……』

 

「その気持ちはめちゃくちゃ良く分かるから、うん。じゃぁ無駄に傷付けない事は約束するね」


 お互い改めて、初期位置に戻って向かい合う。


「本気でやるか、手加減して良い感じに戦うからどっちが良い?」

 

『…………ほ、本気でお願いします! 強い人の動き、見たいので!』

 

「良い心掛け。…………じゃぁ、五秒後に行くよ」


 カウント後、一瞬で終わらせた。

 

 全同期の一斉射は読みやすく、当たる砲だけ選んでアームにて弾く。そのままスロットルレバーで出力最大、肉薄。

 

 慌てるポロンちゃんのコックピットにテールと背面の武装を突き付けて、パルス砲とプラズマ砲のゼロ距離斉射。決着。


「いや鬼畜じゃね? この流れで普通、コックピット狙う?」

 

「いや、ポロンちゃんって僕と同じタイプの人かなって思って。それなら、機体の心臓抜かれるくらいなら自分を殺せって思うかなーって」

 

『忠告、そんな行動をして機体だけ残したら、シリアもリアスもラディアを追い掛ける』

 

「うん、肝に銘じとくよ。ずっと一緒に居てね? それで、死ぬ時は一緒に死のう」

 

『約束』


 リアスの発言を最後に、僕達は転送された。

 

 シティに戻ると、沢山の機体がひしめく中で、見覚えのあるウェポンドッグを見付けた。多分ポロンちゃんだろう。

 

 いやぁ、こう言うのってギスらない様に、終わったらすぐに接触出来無い様にした方が良いんじゃ無いかと思うけどなぁ。

 

 僕らの場合はほのぼのだったけど、それは僕らが例外だろう。普通は殺した相手と殺された相手なんだから、分けた方が良いと思う。

 

 それとも、終わったら爽やかに「ナイスファイト!」って称え合うのかな。分からぬ。

 

 取り敢えず、僕はポロンちゃんの機体らしきウェポンドッグに近付いて、相手をスキャニング。ビンゴだったのでホロ通信要求。


『あ! ディアラさん!』

 

「ポロンちゃん、さっきぶりですね」

 

『ありがとうございました! たのしかったです! あと、コックピット狙ってくれてありがとでした!』


 僕はターラに「ほらね?」と言ってみせる。

 

 やっぱり同じタイプだったのだ。僕は決して鬼畜じゃ無い。


「やっぱり、機体の心臓抉られるのは嫌だもんね」

 

『ですです! この子を殺さないでくれて、ありがとでした!』

 

「あはは、殺した相手からお礼を言われるって、VRバトルは不思議な場所だねぇ」

 

『不思議です! ポロンはまだこの子の体を持ってないのに、こうやって乗れるの不思議です!』


 あらやだ純粋。ポロンちゃんピュアっピュアだよ。

 

 薄汚れた僕らには眩し過ぎる。


『最後も、バーンって攻撃弾いて、びゅーんって来られたの、凄かったです! ポロン何も出来ませんでした!』

 

「あは、うん。これでも現役だからね。初めて機体を動かした人に抵抗されてちゃ、傭兵は出来ないよ」

 

『よ、傭兵さんなんですかっ!?』


 あれ? 言ってなかったっけ? あぇ、やべっ、マズった?

 

 ターラから「馬鹿なのか?」って視線を貰う。止めてくれ死んでしまう。

 

 しかし、一度口にした言葉を、相手が聞かなかった事にする技術なんて持ってない。古代文明でも無理だってシリアスも言ってたし。

 

 試合も終わって配信外だし、少しくらい良いかと思って素直に答える。まさか機体も歩かせられない状態から配信準備とかして無いだろうし。


「えと、うん。これでも現役の傭兵だよ。……えと、ポロンちゃんは配信とかして無い? あんまり傭兵ってことバラしたく無いんだけど」

 

『大丈夫です! この子に乗りたかっただけなので、配信とか考えてませんでした!』


 良かった良かった。これでポロンちゃんが初心者でも配信してる勇者だったら、僕が死ぬ所だった。何が死ぬって、僕のハートが死ぬ。


『あの、ディアラさんは傭兵なんですよねっ!?』

 

「うん。まだ駆け出しだけど」

 

『じゃぁ、あの、えっと、その…………、い、依頼とか、しても、良いですか……?』

 

「ん? 依頼?」


 おじさんに言われて、少しずつ傭兵ギルドに狩った生体金属ジオメタルとかを降ろし始めた僕だけど、それだけだ。まだ僕、傭兵の仕事とか受けた事無いな。


「うーん、内容と報酬によるとしか言えないけど、余程変な依頼じゃないなら、受けても良いよ? ウェポンドッグの鹵獲とかなら、ちょっと断るけど……」


 まだデザリアの鹵獲さえ計画段階なのに、同等級とは言え戦闘機の鹵獲とか、僕にはまだ無理だ。


『いえ、その、違くて…………、あのっ、ポロンに、現実で、操縦を教えてくれませんか……?』

 

「ああ、そう言う依頼--……」


 ………………え、あれ? ダメじゃない?


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