デザインの仕事。



「言っとくが、これでも安くしてるからな? 正規店だと四○万から五○万取る所もあるぞ?」

 

「マジか。正規店でボッタくり?」

 

「馬鹿野郎。正規店はその分、懇切丁寧に、微に入り細を穿つ仕事をしてんだよ。正規店って言うブランド力が値段に乗ってるのは認めるが、そのブランド力を守る為に相応のサービスを提供してるからこその正規店なんだぞ。お前、俺の事好き過ぎて忘れてるかも知れんが、此処ここはスラムの非正規店だぞ? 営業許可は持ってるから違法じゃ無いけどよ」


 いや、非正規店ならむしろ高くなりそうじゃない? ボッタくり方面でだけど。


「オリジンとその機兵乗りライダーを相手にボッタくりなんて出来るかよ。汎用装甲ってぶっちゃけ売れねぇしな。在庫処分も含めての値引きだから気にすんな。それとも、デザリアの専用装甲が良いか? それなら注文して取り寄せで、品の値段も上がるから全部で六○万から七○万シギルになるぞ。時間も四日は貰うぜ」


 シリアスに確認すると、汎用装甲で充分だそうで。


「汎用装甲で大丈夫です。お金貯めたら一気に超強化する予定なので、今は充分な性能が有るなら安いので良いってシリアスが」

 

「賢明な判断だな。さて、依頼はそれだけか?」

 

「あ、足周りってカスタム出来ます? カスタム分の重量にノーマルレッグが耐えられるか不安なので、これも出来れば戦闘用に……」

 

「あー? いや、流石にそれはパーツ取り寄せになるぞ。それとも、内部のアクチュエータを取り替えるか? 重量に耐えられれば良いんだろ?」


 シリアスに確認。僕では判断出来ない。


『データを送って欲しい』

 

「あいよ。…………それ」

 

『確認、把握。アクチュエータの取り替えで構わない。その場合の費用と作業時間はどの程度か』

 

「それなら、装甲交換と合わせて五五万シギルと四時間でどうだ? 作業用ボット共がもう少し高性能ならもっと早く終わるんだが」


 そういう事になった。

 

 ちなみに、折角なので塗装もする事に。


「じゃぁ、作業に入るからよ。その間にカラーリングデザイン決めとけや。塗装自体は専用ボットに入力すりゃ一瞬で出来るから、納品ギリギリまで悩んで良いぞ」


 僕とシリアスのお金は、基本的に等分。それで機体性能に直結するカスタムなら二人で折半。機体性能に関係無いカスタムをするなら、希望した方がお金を出すルールとなってる。

 

 つまり、装甲と足周りの強化は折半。塗装は僕の支払いだ。


「うーん、やっぱデザートカラーは活かしたいよなぁ」

 

『頭部とアームがブラックで、後方がデザートカラーなので、グラデーションで仕上げて、サブカラーであるレッドラインとブルーアクセントを後方にまで施すデザインが良いと思われる』

 

「…………いいね。それで行こう」


 シリアスに言われた通りに、端末のアプリケーションでデザインを進める。

 

 赤と青と意匠がハッキリと違うので、逆に合わせやすい。

 

 直線的なラインがオシャレに主張する赤のラインデザインと、薔薇が炎っぽく見えるピクトグラムと言うか、トライバルと言うか、そう言う曲線的な青のエンブレムデザイン。

 

 この二つを主張し過ぎない様に、でも調和する様に機体のアチコチに伸ばして行く。

 

 僕はやっぱりシリアスと言えばデザートカラーってイメージが強いので、アームとヘッドを過ぎたらすぐにデザートカラーにグラデーションするカラーバランスを選ぶ。


『テールの先端もブラックにするとオシャレかも知れない』

 

「シリアスは天才なの?」


 いや、僕のトータルコーディネートが趣味みたいだし、自分のデザインを良くする程度ならお手の物かも知れない。

 

 最終的に、シリアスの提案を受けて僕のセンスを落とし込んだデザインが出来上がり、おじさんにデータを送信して塗装準備をして貰う。


「ほーう? 良いじゃねぇか。この手のデザイナーとしても食えるんじゃねぇか? 仕事斡旋してやろうか?」

 

「あ、それはちょっと面白そう。シリアスも手伝ってくれる?」

 

『肯定。その時はシリアスも手伝う』


 半分は社交辞令だと思ったのに、シリアスのカスタムが終わるの待ってると本当に仕事を寄越された。


「その仕事分で塗装の代金は相殺してやるよ」

 

「ほんとっ!? じゃぁ頑張る!」


 貰った仕事は、アンシークのカラーデザインだった。

 

 依頼人の希望はベースが緑で、森や風をイメージ出来るデザインを希望してる。希望の通りなら基本的にお任せで、デザイナーも問わないって仕事らしい。

 

 本当はおじさんが他のプロのデザイナーに委託する予定だったらしいんだけど、デザイナーを問わない依頼だから僕にやってみろって。


「良いの? 僕、プロじゃ無いけど」

 

「構わん。その依頼人も、大して金を掛けたくねぇからデザイナーの指定してねぇんだよ。要はケチってんだ。見積もりの時点でも文句言いやがってたから、素人デザインでも文句は言わせねぇよ。それに、お前とシリアスのデザインはマジで悪くねぇと思ったしな。お前の仕事の質によってはむしろ、依頼人にとっちゃ格安で良いカラーデザインして貰ってウッハウハのはずだぜ?」


 そう言う事なら、頑張ろう。

 

 僕はシリアスにも意見を貰いながら、小型下級アリ型偵察機であるアンシークのデザインをする。

 

 風と、森。緑がベースで、緑なら種類は問わないそうだ。


「ふむ、濃さの違う緑を組み合わせようか?」


 ベースに淡い翡翠をチョイス。それから、機体の要所に濃い緑で曲線的なラインを引いて行く。植物のツタをイメージしてる。

 

 さらに植物の葉をイメージしたピクトグラムも散りばめて、全体のバランスを整える。主張し過ぎるとダサくなるから、引き算でインパクトを出して行く。


『ベースの指定を遵守すれば、他の色をアクセントに置くのもアリ。控え目に配置する事で逆に存在感が出る事もある』

 

「なるほど」


 とは言え、森と風を欲してるのに、赤とか使っちゃマズイだろう。

 

 だとしたら、なんだろう。白か? 風をイメージするなら白か淡い青か。

 

 僕は基本的なデザインを完成させたら、極々微量だけ、白い曲線を引いてみた。頭部の横や、ボディに少しだけ。


「…………こんなモンかな?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る