帰る場所。
カルボルトさんへ、幾重にもお礼を言って僕らは帰る。
食事をしてた超高級店『鮨処ハナヨシ』でカルボルトさんと別れ、僕はシリアスに乗り、タクト達はレンタビークルに乗る。
信じられないくらい美味しい食べ物でお腹を膨らまし、新しい服まで貰った皆はホックホクの顔で帰路に着く。その後ろを僕はシリアスと一緒に追い掛ける。
着替えは流石に無いから、皆は何回も何回も服を洗ってずっと着続けるのだろう。単純に性能が良いので、それだけでも僕らの生存率に寄与してくれる。なので多分、毎日ずっと着続けられるはずだ。
「…………やっぱり、プリカのディアストーカー良かったなぁ。プリカに似合ってて可愛かったけど、あれ元々男性用のデザインだよね? 多分カッコよくも着れるよね?」
『肯定。由来はラディア達現代人が言う古代文明である祖国の歴史よりも古く、原始的な時代にまで遡る。鹿を狙う狩猟者の為の帽子で、それが連綿と続いて現在のオシャレとなった模様。元は狩猟用の装備なのでメンズ向けではあっても、ディアストーカーへ合わせるに適したポンチョ等は女性に映える為、結局はユニセックスであると思われる』
「つまり、僕も使えるよね?」
『肯定。ラディアには女性用コーディネートも男性用コーディネートも似合う為、同じ物を使っても着こなしだけで二倍楽しめると予想出来る。シリアスもオススメする。ディアストーカーコーディネートは推奨行動』
めっちゃプッシュされた。
プリカが着てたのは、落ち着いたベージュを用いたチェック柄
あれ、ポンチョをトレンチコートとかジャケットにするだけで落ち着いた大人のカッコよさを演出してくれそうなカッコイイデザインだなって思った。
まるでフィクションブックに出て来る名探偵、ホームズなんとかを彷彿とさせる帽子だった。フィクションブック読んだことほぼ無いんだけどさ。見た目は知ってて、僕あれ凄い気に入った。
ガーランドの住民は陽射しから身を守る為に帽子が必須なので、帽子には煩いのだ。ガーランドは帽子ファッションに一家言ある町なのだ。
他の都市の市民なら正式な名前も知らない様な帽子も、ガーランドの民は大体全部知ってる。
命を守るアイテムなので、重要度が全然違うのだ。そりゃ覚える。
そして僕ら孤児も、ターバンを卒業したくて素敵な帽子を夢見てるところがあるから、孤児でも帽子に詳しい奴は詳しい。
「ディアストーカー良いなぁ」
『予算が厳しい。服は現在までに購入した物で我慢する。新しい物は稼いだ後に購入を検討する』
「そだね。何故か半分程が女の子の服だったけど、我慢するべきだよね」
『…………似合うから仕方ない。シリアスは悪くない』
あたふたして可愛いシリアスに乗って、スラムまで戻って来た。
タクト達は自動運転で行けるところまで行き、そこで降りたら端末からビークルの返却申請をしてビークルを送り返した。
『ラディアとシリアスもじゃぁな! おやすみ!』
「おやすみー!」
『良い夜を』
もう日が暮れ、燦々と肌を焼いた陽射しと気温が反転する時間。
寒々とした砂漠の町のすみっこで僕らも別れる。
目指すは整備屋サンジェルマン。シリアスのカスタムを依頼するので、まだ僕は住処には帰らない。と言うか、シリアスと出会ってからまだ一回も住処に帰ってない気がする。
まぁ何も無い寝る為だけの場所だし、別に良いか。
「…………ああ、そうだ。IDの紐付けも依頼しなきゃだよ。マシンコードがまだ仮IDなの忘れてた」
『ラディアは基本的に
「……シリアスも弾薬費の計算忘れてたじゃん」
『お、覚えていた。シリアスはちゃんと覚えていた。忘れてなど無かった』
シリアスは、大事な時に嘘を吐かないけど、普段は割と誤魔化したり嘘吐いたりするのだと段々分かって来た。
でも、その嘘の吐き方などがお茶目だったりして可愛いので、結局僕がメロメロになるだけなのだ。
今だって子供が「忘れてないもん! 覚えてたもん!」って慌ててるみたいで可愛い。可愛過ぎる。血を吐きそうだ。
「とうちゃーく。そして、おじさんタダイマー」
『帰投した』
『……あー? ああ、ラディアか。スシは美味かったか?』
スラムの中にある、レトロ風なのに設備が立派で綺麗だから場違い感が凄い場所、整備屋サンジェルマン。
開きっぱなしのハンガーブロックゲートを潜ると、そこではまだおじさんが仕事をしてる。
整備屋サンジェルマンはスラムに有るけど、実は結構人気の整備屋だったりする。
ハンガーが六個しか無いし、ハンガーサイズも中型下級がギリギリって大きさなので誰でも利用出来る訳じゃないけど、西ゲートから警戒領域に出てる傭兵は、帰りにスラムに寄って整備する人も居る。西ゲートから近いからね。
他にも、正規店では断られる様な際どい改造とかも、おじさんは請け負ってくれるし、何より腕が良いし仕事も早い。だから町のちゃんとした正規の整備屋じゃ無くてスラムのサンジェルマンを好んで使うって傭兵も居るのだ。
本当はバイオマシンなんて無縁に近いスラムにも、しっかりとシリアスが歩ける道が残ってるのは、おじさんがお客を集めてるからに他ならない。
もしバイオマシンの往来がゼロだったから、今頃はスラムのマシンロードなど不法滞在者によって色々と改造されて潰されてたはずだ。勝手にテント張ったり、賭場が作られたりとかで。
そんな訳で、おじさんは結構忙しい人なのだ。常に仕事が入ってる。個人でやってる整備屋にしては破格の忙しさだ。
スラムでおじさんの真似をして整備屋を始めた他の闇店舗なんか、一日に一機の整備でも依頼を受けたらハッピーな方なのに、おじさんは朝から晩まで機体を弄ってる。
一日にスラムへ訪れるバイオマシンの平均は十機で、その内、補給と整備だけで良いなら八機は受け持てる仕事の速さだ。カスタム依頼が入ってると手が埋まるけど、それでも腕が良いので人が集まる。
「おいしかったー!」
『美味しそうにしてた』
「そいつぁ重畳だ。で? 住処じゃなくてウチに来たって事は、何か仕事か?」
空いてるハンガーに駐機させて貰って、シリアスから降りた僕を、おじさんはタバコを吹かしながら出迎えてくれた。
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