愚帝のこと。
「で、どうなった?」
だし抜けにカルボルトさんから聞かれ、僕は少し前の事を思い出しながら喋り出す。
「はい。えっと、武装許可全部通って、免許も既に発行されてます。なんか、オリジンで都市に入った時点で都市システムにトレースされてて、その間の操縦も記録されてるから実技要らないそうです」
「おお、即日どころか即時発行だったのか。流石は
発行された電子ライセンスはもう、情報端末に入ってる。
自由臣民権やら税金やらの公文書も全部もう発行されて端末に入ってるので、僕は今日から立派な帝国自由臣民である。
本当は納税記録が必要なんだけど、オリジンに乗ってるから、…………
ほんと、どれだけ特別待遇を受けるのやら。これで居て、別に皇家から招聘されたりはしないって言うんだから、凄いよね。
僕が帝都まで行って申請すればお城にも上がれるし、皇帝陛下も会ってくれるそうなんだけど、皇家から僕に対して何かを強要してきたりはしないそうだ。
昔はそんな事もあったそうなんだけど、それでオリジンも
可能ならオリジンが持ってる技術や知識を使って帝国の発展に寄与して欲しけど、無理強いはしないよ。でも助けてくれためっちゃ助かるし、その分さらに優遇するよって感じで、帝国のオリジンに対する態度は固まってる。全部お姉さんに聞いた。
国がどれだけオリジンを敬って恐れてるか。
例の一つとして、その昔、現代人ではどうにも成らないけど、オリジンがアクセスすれば動かせる超技術の塊その物って言う、古代文明から産出した遺物がたまに、警戒領域とかで見付かる事がある。
その遺物を動かしたり、遺物の中にあるデータを取れれば、ヤバいくらいの利益が発生して、帝国に限らず周辺諸国の技術力って言うのはそうやって発展して来たそうだ。
それで、何代か前の皇帝陛下がオリジンの叡智と権限を独占したくて、色々と過干渉をした結果…………、オリジンが全員全力で他国に逃げ出して、隣国は次々とオリジンのお陰で新しい超技術が手に入れるのに自国だけ取り残された、なんて事があったらしい。
その時はガチで帝国が滅び掛けたと、お姉さんがニコニコ教えてくれた。当時の皇帝が史上最悪の愚帝として有名、らしい? いや僕知らなかったけどね。
隣国と技術に差が開き過ぎて、戦争なんかしたら何も出来ずにボコボコにされるレベルでヤバかった時代を経験して、今の帝国がある。
結局それも、新しく産まれたオリジンに救われて盛り返したって話しなので、ぶっちゃけ皇家はもうオリジンに頭が上がらない。
国に存在するだけで人権保証の無条件名誉子爵身分って制度は、そんな経験から発生してる法律だと教えられた。
なんな、凄いなぁ。
そんな訳で、最悪でも国に居てくれたらそれで良い。頼むから他国に行って他国を富ませないで、お願い! って言う理由で、オリジンは凄まじい自由を獲得してる。
国に非協力的なオリジンだろうと、他国に出られた瞬間もう損害だ。愚帝の悪夢再びだ。だから何もしなくて良いから、帝国に居てねってなってる。
「……って事らしいです」
僕は特別に実施された
「ほへぇ、愚帝の歴史は確かに有名だが、詳細ってそんな感じなのか。知らなかったぜ」
「…………下手したら、シリアスってそこらの貴族よりずっと偉いって事か?」
「かも知れない」
勿論、あんまり巫山戯た蛮行を繰り返す様なオリジンは、普通のバイオマシンとして討伐される。だって国から出られたら損害だけど、国に居ても損害なら、じゃぁ殺すよねって言う。
オリジンは確かに普通のバイオマシンよりずっと強いけど、流石に対軍で勝てる程じゃない。国がオリジンに求めてるのは、あくまで古代文明基準で扱える通信領域制御技術とアクセス権限だ。
「でも、それなら国を出そうなオリジンを殺そうって事には成ら無かったのかねぇ?」
「いえ、成ったらしいですよ」
「なったのかよ。で、そっちはどうなったんだ?」
「余程上手く囲んで殺さないと逃げられるそうです。通信領域の扱いが段違いですから、通信で作戦なんて立てたら傍受されまくって、包囲作戦なんか内容バレバレで、各個撃破を狙われたらオリジンが勝ちますし」
オリジンは強い。シリアスが同型機を三機も
単純に頭が良く、戦略が使える。
そしてオリジンのその頭脳がパイロットの技術と噛み合ったなら、オリジンは信じられない程に化けるそうだ。
多分、僕がボロボロのシリアスで僚機さんを倒せた時みたいに、あんなボロボロで死ぬ寸前の状態でも勝てる程に、オリジンはチカラを発揮出来る。
そんな相手に、下手に長距離通信なんかして作戦立てたらボロボロに筒抜けして、バレバレの包囲作戦を各個撃破で突破されるのだ。どうにも成らない。オリジンとパイロットに協力者とか居たら尚更に。
ちなみに国内で暴れて討伐されるタイプのオリジンに関しては、普通にパイロットを暗殺してから、単独でチカラの落ちたオリジンを殺すそうだ。たとえオリジンでもパイロットが居ないと武装は使えないからね。
国外逃亡も同じ方法で殺せないのかって疑問だったけど、そもそも国の横暴から逃げようとするオリジンとパイロットは相応に慎重だから、暴れて討伐される個体と違って簡単にはパイロットを狙わせてくれないそうだ。
最悪、逃亡始めてから亡命を達成するまで、コックピットから降りないって手もある。準備をちゃんとすれば、数ヶ月はコックピット生活も出来てしまう。
排泄物処理ナノマシンとか服用すれば、トイレ行かなくて済むし、風呂は我慢すれば良いし、あとは食料くらいか。怪我はコックピットの生命維持装置と医療キットがあるし。
弾薬の補給とかも、協力者がほんの少し居るだけで解決するし、最悪は全武装をプラズマ系の兵器に換装して置くのも手だ。
「そんなこんなで、結果、マトモなオリジンに対して国はもう、お願いするしか無いそうです」
そんな微妙な関係になると、中には「そんな危ない存在は優遇などせず最初から殺せ!」って人も出て来たそうだけど、そうなると実質的に愚帝の悪夢再びなんだ。だって自分で国からオリジンを消して、他国にはオリジンが居るんだから。
じゃぁ「協力しろ、さもなくば殺す」って態度ならどうなるかって言えば、そんなのオリジンが産まれた瞬間から、オリジンだとバレる前に逃げの一手だよ。
オリジンは明確に自我があって、なんなら現代人より賢いんだから。
ちょっとネットにアクセスして調べればすぐにでも分かってしまう。
そうして、パイロットを得て国のスタンスを確認したら、その瞬間逃げるに決まってる。
そもそも古代文明所属で、所属の不明な現代人とは敵対判定なのに、そこを曲げて善意で仲間になっても最終的に脅されるとか冗談じゃないよね。
「そんな訳で、その他にもなんか色々あって、今のオリジンの権力らしいです」
「なるほどなぁ」
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