結婚出来る。
面談と講習は、恐ろしい程スムーズに終わった。
「はい、以上になります。何かご質問は?」
「ありません。ありがとうございました」
「いえいえ、ではどうぞ、素敵な傭兵ライフを送って下さいね」
とても平の職員には見えない、他とデザインの違った黒くてビシッと決まってる制服に身を包んだ優しげなお姉さんが、ニコニコ笑ってる。
面談は個室。講習もそのまま同じ部屋で同じお偉いさんっぽい若くて綺麗なお姉さんから受けた。
アンチエイドかも知れないけど、『若くて綺麗な』お姉さんで良いのだ。良いったら良いのだ。僕は命が惜しい。
僕と同じ黒髪で、長くて艶々でさらさらな髪のその人に、僕は僕を取り巻く色々を聞かされた。
取り敢えず、僕が下で予想してた事は大体合ってた。僕がシリアスに乗ってガーランドに入った時点で、都市管理システムに追跡されて、監視されてた。
何かヤラかさないか、事件にならないか、慎重で繊細なサポートを実施する為に常に監視し、あらゆる職員をそれとなく近くへ配置し続ける。
配置された職員も、僕とシリアスの事を知らずにそれとなく付けられ、あからさまな態度で僕達のストレスにならない様に気を付けての配慮。
勿論、何か起きたらすぐに近くの職員に連絡が飛んで駆け付けられる程度には、事情を知らなくても何とか出来る配置と采配を徹底して。
僕とタクトが買い物をしてたビルにも、食事をしたハンガーミートにも、専門の私服職員を配置してあったそうだ。
マシンロードの通行記録も取ってあり、僕の操縦も既に精査された後だった。なので実技試験免除。
勿論、シリアスが自分で動いた時とそれ以外で記録を分けてあって、僕が自分で操縦してた時の記録を精査した結果、実技試験は合格判定らしい。
本当は機体の記録に直接アクセスして精査したかったらしいけど、シリアスのシステムは古代文明基準のセキュリティなので干渉出来なくて、仕方ないから都市管理システムのオートスキャンで常時スキャニングを実行、コックピット内の僕とシリアスの動作の統合性を擦り合わせてやっと精査が完了したそうだ。
凄い大変だったって笑顔で言われても、知らなかったんだもん。どうしようも無いでしょ。
でも、操縦が上手いって褒められて嬉しかった。一応、シリアスから僕の操縦記録を貰えるならそれも欲しいって言われたので、後でシリアスに聞いて見る。
それから、ずっと監視されてたので、僕の人物判定も既に終わってた。ぶっちゃけ面談要らなかったそうだ。
兵士三人を殺害したところは少しアレだけど、それもオリジン関連の権利を利用した正当な行為だったから咎める事は出来ず、僕がガーランドで過ごした五年の記録を見れば二百点満点の花丸が四重丸くらい貰えるくらいに善良だったそうで、武装関連の申請は全部クリア。
僕の生活も、記録されてたのかぁ…………。
なんか、こう、変な気持ち。
そんなに見てたなら助けてくれよって叫び散らしたい怒りと、僕が僕を汚さない様に頑張って生きて来た四年を都市公認でちゃんと「綺麗だったよ」って認めて貰えた嬉しさが、ごちゃ混ぜになって僕の頭をメチャクチャにする感じ。
あとは、このオリジンの権利に対する正しい知識とか、都市の職員さんが僕をどう思ってるとか、色々聞いて、もう、いっぱいいっぱい。
一番ショッキングな出来事は、シリアスの人権が認められてるから、本気で結婚したければ法的にも問題なく結婚出来るよって言われた事。
なんか、何故か、僕のガチ告白に情報まで詳細に知られてて、僕は悶絶した。
なんでだよ。誰だよ。僕がシリアスにしたガチ告白なんて誰がバラ蒔いてるんだよ。
あれ知ってるのって、……………………ルベラお兄さんかッッ!?
ギャン泣きしながら全部ブチ撒けたから、ルベラお兄さんは僕のガチ告白を知ってるし、シリアスもなんかテキスト沢山送ってたからそれも有るかも。
マジかよ許さないからなルベラお兄さん。良い人だと思ったのに、いや良い人なんだろうけど、それとコレとは話しが別だ。
………………でも結婚はしたいので、後でシリアスへ正式にプロポーズしたいと思う。
まぁ、結婚の意志を固めたところで今は意味が無い。帝国では結婚が許されるのは男女共に十五歳からだそうなので、あと五歳分待たねば。もどかしい。
あとあと、凄い下世話だけど、外部操作が可能なセクサロイドとかも有るって教えて貰った。このお姉さん見た目に反して爆弾をガトリング砲みたいに投げて来るぞ。
本来は遠距離恋愛用で、VRモジュールとか使って遠方の恋人と肌を重ねる為のセクサロイドらしいんだけど、つまりネットワークを介してセクサロイドを動かす技術なので、人の端末にクラックかけられるシリアスなら、そういう事も出来ちゃうだろうって言われた。
………………めっちゃ興味有るので端末に資料を送って貰った。
凄い恥ずかしかった。お姉さんがニマニマしてるんだもん。あらやぁーねぇって顔するんだもん。
でも有用な情報なので貰います。情報は凄い大事だって僕は知ってる。オーダーメイドで好きな見た目に作れるそうなので、シリアスが成りたい自分に成れる様に、どんなグレードでも買えるくらいお金を稼ごうと思います。
…………お値段なんと、最低でも一五○万シギルだそうで。オプションとか色々付けるとバンバン値段が跳ね上がるらしい。くそっ、そんなに僕を誘惑して楽しいかっ……! お姉さんの悪魔め!
「…………失礼します」
「はーい♪︎ また来てね♪︎」
用事が無ければ来ないよ。
僕は明らかに権力の強そうな制服を着たお姉さんに挨拶をして、部屋を出た。
二階で待ってるカルボルトさんとタクトの元に向かう途中、僕の頭を支配してるのはシリアス・in・THE・セクサロイドだ。実に脳内の九割を持って行かれてる。
ええい消えろ僕の煩悩! まだ僕とシリアスはプラトニックなお付き合いをするんだっ! て言うかあくまでシリアスの本体はデザリアなんだから、バイオマシン並に高額なセクサロイドなんか買うよりもシリアス本体のカスタムが先だよッ!
僕はシリアスが好きになったんであって、シリアスが動かせるセクサロイドを好きになる訳じゃないやい!
たとえ触れ合うだけが限界だったとしても、僕はずっとシリアスが好きだし、別に人間規格なんて成らなくてもシリアスは最高に可愛いから問題無い。
そもそも、セクサロイドをどれだけ可愛く美人で色気ムンムンにデザインしたとしても、シリアス本体の可愛さには勝てない。
きっとフルカスタムしても、改修しても、なんなら
シリアスがシリアスで在れば、もうそれだけで可愛いのだ。だって天使なんだから。どれだけ凶悪なボディを手に入れたとしても、中身が天使なんだから実質天使。天の使い。そういう事なんだ。
「だから僕は煩悩に抗おうと思います!」
「お、おう……? なんだ、分からんが、頑張れよ………?」
「…………ああ、井戸ポンか」
「井戸ポン言うな!」
僕はギルドの二階と三階より上を繋ぐ専用エレベーターに乗って帰って来て、待っててくれた二人に宣言した。井戸ポンは止めろ。
専用エレベーターは一階と二階を繋ぐ地獄の混沌エレベーターとは違って、とても空いてた。職員から上に呼ばれた人だけが利用するので、あんな地獄は形成され無い。
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