お会計。


 

 食べ放題プランは二時間あったけど、孤児の貧相な胃袋なんてすぐ埋まる。というかこれ、食べ放題じゃなくて個別に頼んだ方が安かったかも知れない。

 

 シリアスのペレット全部食べて、現在エネルギーが八割まで回復したそうだ。


「うぇえ、流石に凄くないか? シリアスもチマチマ食ってたが、あれ精々二十粒くらいだったろ? それで八割?」

 

「元が二割ちょいだったから、回復量は六割だね」

 

『シリアスの機種、現代人がデザートシザーリアと呼ぶ機体のキャパシティが小さいから、相対的に回復量が多く見えと言う見方もある。このフードメタルと呼称される補給鋼は、祖国の補給鋼と比べても変換効率は精々が並。つまり普通』

 

「つまりシリアスは少食女子?」

 

「お前取り敢えず嫁を可愛い感じにしないと死ぬ病気なのか?」

 

「うんっ!」

 

「返事が元気」

 

『シリアスは少食女子』

 

「そして乗っかる早さ。いやシリアスお前結構お茶目って言うか、硬い喋りの割には性格がフランクだな?」

 

『……シリアス、褒められた? 貶された?』

 

「どっちかって言うと、褒めた?」

 

「少なくとも貶した意図はねぇよ。事実をそのまま口にしただけだが、まぁ褒め言葉かな? 要は付き合いやすい性格だよなって事だから」

 

『把握。シリアスはお茶目』


 シリアスの可愛さが留まる事を知らない。

 

 間違い無く世界で一番可愛いお茶目さんだ。


「でも、そうか。確かにもっとグレードの高いフードメタルが幾つも有るんだから、少なくともそれでキャパが溢れない機体も居るって事だよな。そうすると、シリアスは本当に少食って事になるのか」

 

「あー、なるほど。確かに」

 

『基本的に、キャパシティは多い方が有利。なので、シリアスも後にエネルギータンクを改善したい。目指せ、大食い女子』

 

「あ、そうだ。おじさんとシリアスのカスタムについて相談もしなきゃだよ。あとシリアスの修理の見積り書、受け取るの忘れてた。結局幾らだったんだろう?」

 

『シリアスに施された修繕は装甲の交換と研磨、装甲自己回復補助と歪んだ頭部パーツの交換に喪ったキャノピーの追加。作業量から推測してもそう高額になるとは考え難い』

 

「…………そうなの? なんか、今聞いた感じだと凄い色々やって貰ったみたいに聞こえるけど」

 

『基本的にボット任せで八割方が終わる程度の軽作業で、専門技術が使われたのはほんの一部だった。交換したパーツとキャノピーも、シリアスが持ち込んだ僚機からの持ち出しであり、パーツ代はかかってない。つまり費用はほぼ工賃のみ。活動領域流通通貨シギルに着いての現段階に於ける理解力で判断しても、一万シギル請求されたらボッタくりと断言出来る。よって支払いは余裕』


 …………おお、僕、奥さんにお財布握られてる。なんだろう、ちょっと嬉しい。


「出来た嫁さんじゃん」

 

「でしょ!」

 

『シリアスは良妻』

 

「自分で稼いで自分を治してラディア食わせて兵士からも守って、ラディア、お前ヒモじゃん」

 

「…………ッッ!? ほ、ホントだっ!? どうしようっ、それは嫌だっ!?」

 

『シリアス、ラディア養う。養いたい』

 

「嬉しいけどなんかちょっと嫌だー! 僕も稼いでシリアスのパーツとかフードメタルとか買いたいぃー!」


 和気藹々わきあいあい。楽しくはしゃいで食休みで疲れる始末。

 

 そんな僕らは良い時間になったので、取り敢えずお会計。

 

 端末買って電子決済が可能になったけど、口座がまだ無いのでニコニコ現金払いだ。店員さんを呼び付けて残った所持金の大部分を支払った。もう所持金がスッカラカンだ。


「……………………あの、すいません」

 

「はい?」

 

「もしかして、お客様の機体って……?」

 

「あ、はい。オリジンです」


 会計に来た女性の店員さんが大興奮してちょっと騒ぎになったけど、取り敢えずお店を辞する。

 

 あの店員さんさんは無類のバイオマシン好きであり、本物のオリジンとかもう、出会えたら嘔吐するレベルのバイオマシンマニアらしかった。サインとか求められたけど、自分のサインの書き方とか分からないので次回来店時まで待ってもらう事に。

 

 お店にはお客の安全管理の為に様子を確認出来るシステムがあって、店員さんはそれで自由に動きまくるシリアスを見てもしかしてって思ってたそうだ。


 会計の時に現金払いで呼び出しが入った時は他の店員を押し退けてやって来たって言ってた。

 

 それで意を決して聞いたら大当たりで大興奮。宥めるの大変だった…………。


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