美味しい?
ペレットを一つだけ口に運んだシリアスは、口腔部をガシュって開放して摘んだペレットを半分齧った。すると予想外に小気味良い音がしてビックリする。
なに、鉄を齧ってサクリ? いやスナック菓子かよ。
『悪くない』
「悪くないんだ。…………え、食感はどんな感じ? 音の通りだった?」
『音の通り……。いや、分からない。サクッとはしていた。それと何か、繊維を断ち切る様な感触もあった。そして中心部はしっかりと鉄の硬さがあった様に思う。総評として、「分からない」になる』
「…………そ、そうか。つまり不思議な食感だった訳だな?」
『肯定』
シリアスが右ガチガチをしながらタクトに肯定した。
うーん、まぁバイオマシンに自我が無いのが当たり前な現代に於いて、バイオマシンの為に味や食感を優先して作ったとは思えないから、多分あれは
それをオリジンのシリアスが食べた結果、意外性のある食感として認識されただけで。
「美味しい? 不味くはないんだよね?」
『悪くない。不味いとは思わない。シリアスは人間が不味いと表現する感覚についてデータでしか知らない。しかし、少なくともシリアスはこの補給鋼を摂取して苦痛に思う事は無い。よって、不味くは無い。つまり、「悪くない」になる』
「……なるほど」
「その弁で行くなら、美味しいって感覚も分からないって事か? 上も下も無いから、悪くないで留まるって?」
『肯定。人間とのコミュニケーション用に入力されたデータとして理解は出来る。が、経験が伴わないので判断が付かない。本来、兵器に味覚は必要無い』
「…………なんか、悲しくなっちゃうね。古代人さんは、シリアス達とご飯食べたりとか、したく無かったのかな」
「さっきシリアスが『この発想は祖国にも無かった』って言ってだろ。つまりそう言う事なんだろうさ」
『気にしなくて良い。これから先、永遠に知る事が無い概念とは思わない。機体の改修如何によっては、シリアスも正しく味覚を感じる機能を手に入れる可能性もある。その時は共に喜びたいと思う』
「……うわぁ。もう、なんか、もうっ! ラディアお前! 本当に良い愛機じゃんかもう! くそっ、めっちゃ羨ましい……! オリジンってだけでも羨ましいのに、中身も最高とか羨まし過ぎて禿げるっ!」
「でへ、でへへ……」
シリアスしゅき〜……。
そっかぁ、そうだよね。フードマテリアルを調理するのに味を判断する機械も存在するんだから、シリアスだってその内一緒に食事が取れたりもするよね。
『それに、シリアスは現代人がとある勘違いをしている可能性があると認識している。現代人は、シリアス達が
……………………なんだって?
「…………は? え、はっ?」
「……それって、つまり?」
「シリアス、もしかして、お肉とか食べれるの…………?」
『肯定。シリアスは有機物の摂取も可能。エネルギー効率は極低効率に留まるが、
なんか、凄いこと聞いた気がする。
これって
もし、もしコレが現代で誰も知らない事実だった場合、国の研究者さんとかに教えたら大変な事になるんじゃ……?
「それって、逆に食べないと何か不具合が有るのか?」
『否定。有機物の摂取が無くても、
そんな驚きの事実を知ったところで、僕らの席にもやっとお肉が届いた。
やけに遅かったなと思ったら、お肉を持って来たドローンに機材トラブルで一時的に運搬が遅れたとメッセージが表示された。
そしてお詫びのメッセージと共に、食べ放題プランには無いお肉がちょこっと追加されてた。謝罪のサービス品らしい。
「えっと、じゃぁシリアスも、お肉食べる? あーんってする? やっぱり焼いた方が良い? それとも生肉の方が良かったりする?」
『否定。気持ちは受け取る。しかし、スキャニングの結果、その肉を摂取しても
「あ、うん。培養肉って言う、お肉のクローンみたいな物らしいよ?」
『把握。追加で質問を。先程タクトが発言した「天然物」に関する詳細が欲しい』
「天然物ってのは、ちゃんと牛とか豚とか、育てた生き物を捌いて出す肉の事だ。家畜なのに天然物ってのも微妙な区分だが、現代ではイミテーションじゃない肉だから天然って意味で使われてる」
『把握。シリアスが摂取して
世界中の研究者や学者さん達も、まさか焼肉屋でこんな事実が発覚してるとは夢にも思うまい。
いやもしかしたら既出の情報なのかも知れないけど、これは何となく新情報だと思うなぁ。
だって、もしコレが既に知られてる情報なら、天然物の肉も出せるこのお店で、バイオマシン用のラインナップに天然肉が無い理由を説明出来ない。
シリアスが推奨するとまで言う重要な要素なのに、こんなにクソ高いフードメタルまで揃える意識の高い最奥区近辺の店で、それをやらない理由が無い。
つまり、ならば知らないのだ。知らないからバイオマシンにお肉を出さない。それが自然な考え方だ。
「それはそれとして、お肉を食べてゲノムとか読める機能は付いてるのに、味覚は付けなかった古代人さんに文句は言いたい」
「それな」
『同意。祖国の技術力ならば比較的容易にそれを出来たと思われる。そうであれば今頃はラディアと共に食事を喜べた。シリアスも祖国に対して遺憾の意を表明したい』
「…………どうしようタクト、僕もう胸がきゅんきゅんして苦しい」
「だんだん普通に羨ましく思えてくんの、俺毒され過ぎな。……なんかちょっと俺もシリアスが可愛く見えきたの、マジ震えて来るぜ」
タクトが着々と僕マインドに侵食されてるらしい。やったぜ。
「ちゃんとタクトに乗機を用意するからね…………。ガチ恋してね…………」
「止めろ止めろ止めろ止めろ」
『ダブルデート推奨』
「シリアスお前もかっ!」
そんなこんな、お腹いっぱい食べて食休み。
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