稼ぎの値段。
お泊まりして、食事も出て、なんか身内みたいな扱いを受けているけど、僕って普通にお客さんだからね。
おじさんにシリアスの僚機を三機も売って、それでシリアスの修理も依頼したお客さんだ。
「んで、だ。とりあえず、シリアスの修理代金の見積書…………、いやもう修理終わってるから見積もりもクソも無いんだが、とにかくそっちは後にして、まずは
結論から言うと、シリアスの僚機は合計で二八○万シギルで売れた。ビックリしすぎて僕は椅子から転げ落ちた。
「にひゃっ……!?」
「だから言ったろ。
た、大金過ぎて、意味が分からなくなってる。
三○○万シギルって、何万シギル? え? まって、水ボトル何本買える? 最低グレードの民間レーションが三○○万個買えるの?
えっと、一日三食として、………………二年と七ヶ月分の食事が買える?
「…………た、大金だッ!」
「そりゃそうよ。早いとこ口座作れよ? 流石に三○○万シギルの札束をシリアスに乗せとくもんじゃねぇだろ」
そ、そうだよね!
三○○万シギルとか持ち歩いてたら大変だよね! スラムでそんなお金持ってたら殺されちゃうよ!
納税して市民権を待ってる人ならまだしも、不法滞在してる孤児なんて、行政側からしたら『居ない事になってる』ゴミなんだから、殺されても文句言えないんだ。
…………あ、いや、だから三○○万シギルから税金払えば良いのか。そっか。そうすれば僕も行政頼れるし、市民権を持ってる僕を殺せば、口に出すのも憚られる程に凄惨な制裁が入る。
帝国は法に煩い国だから、法を破ると凄い事になる。
不法滞在してる僕ら孤児が今も生きてるのは、帝国の法律にどんな立場の人間にでも最低限の人権を与えるって言うのがあって、それと相殺される形で済んでるからだ。
だから『居ない事になってる』と、僕らは目零しされてる。
「し、市民権っていくらかな……」
「あ? 市民権なんて買わなくても、傭兵になれば良いだろ? むしろ市民権買うと都市間の移動が制限されるから、面倒だぞ?」
「……あぁ、こんな事になるなんて思って無かったから、そっちの方の知識が全然足りない」
べ、勉強しないと。なにかやらかしそうで怖い。
「いや、と言うか、極論お前、もう市民権持ってるぞ?」
「…………はぇ?」
いや、僕まだ、シリアスの入場税すら払ってないんだけど?
兵士さんが手続きしてくれて、一ヶ月以内なら待って貰える様になってる。だからおじさんにシリアスの僚機さんを売って、そのお金で色々払おうと思ってたのに。
「…………まぁ知らねぇか。いいや教えてやる。あのな、今のお前は身寄りの無い孤児で、無納税の不法滞在者で間違い無い。だが、オリジンに認められた
「……ぼ、僕が、お貴族様?」
「そうだ。例えば俺が今、お前の頭をぶっ叩いたとする。そんでお前がその時に名誉子爵身分を主張したとする。すると、俺はお貴族様の頭をぶっ叩いたクソ不敬な帝国臣民として処分される」
「うぇぇぇえええええ…………」
な、なんかとんでも無い話しになってる。
「ぼ、僕、おじさんに叩かれても、文句なんて言わないよ……?」
「んな事分かってるわ。でも覚えとけ。お前は今、何時でも貴族に変身出来る権利を持ってんだ。だからスラムのゴミ共になんかされたら、クソほど脅してやれ。なんなら、今までの鬱憤晴らす為に片っ端から殺して来ても良いぞ? 流石に何もしてない市民とか殺して回ったら子爵身分でも処分されるが、スラムのゴミくらいならいくら殺しても大丈夫だろ。不法滞在者は『居ない事になってる』からな」
「そ、そんな事しません!」
今日まで必死にトラブル回避して来たのに、自分からトラブルの争点になるとか冗談じゃない。
襲われたら殺し返すのも吝かじゃないけど、自分から殺しに行くほど僕は凶暴じゃないよ。
「いや、て言うか、たしかガーランドって伯爵領でしたよね? そんな巫山戯た事して伯爵様に目を付けられたら、死んじゃうじゃないですかっ!」
「あー、まぁ、確かに下の身分をぶっ殺すなら、上の身分からぶっ殺されても文句言えねぇかもな。流石に貴族身分で即処刑とかは無いと思うが」
なんか、町に居るのも怖くなって来た。
早急に必要な知識を手に入れる必要がある。ちくしょう、クソ親父のせいで学校にも行けなかったのが悔やまれる。
「おお、そうだ。それでラディア、お前どうする? 大金手に入ったが、シリアスのカスタムとかするか? もちろんウチでやってくだろ?」
「………………! シリアスのカスタム!」
権力とか暴力とか怖い怖いと怯えてた僕は、素敵な話題に食い付いた。
シリアスは現在、古代遺跡で生産されたままの状態だ。つまりゼロカスタム。武装も尻尾のニードルしか無くて、射撃武器すらひとつも無い。
これから警戒領域でお金を稼ぐなら、武装は僕とシリアスの生存率に直結する。
「まぁ、ゼロカスタムで三機も
「要ります要ります! カスタム! シリアスのオシャレ!」
「…………俺も長い事整備屋やってっけど、武装を乗機のオシャレって言うやつは初めて見たぜ。…………いや、ウチの客層が悪いだけか? お上品な
僕も言ってると思う。女性の
「…………あと、ラディアお前ちょっと勘違いしてそうだから教えとくが、普通は武装しててもバイオマシンの
「そう、なんですか?」
いくらシリアスが凄いからって、ゼロカスタムでも出来たことなら、ちゃんと武装したバイオマシンに乗る
「警戒領域のランクにもよるが、野生のバイオマシンは別に俺らを絶対にぶち殺したい訳じゃ無いからな。不利になれば逃げるし、下手に
「…………そっか。そうですよね。バイオマシンだって生きていたいから、同胞を食べたりするんだから。死にそうになれば逃げるし、逃げられないなら決死の抵抗をしますよね」
「そうだ。いくら稼ぎが良くても、そんな危険な仕事なら仕留めてから
…………なるほど。費用対効果って言うか、利益効率って言うか、当たり前の事なんだけど、一機で一○○万シギルとか大きい値段が着いたから意識が薄れてた。
「……今更なんですけど、現代でも
聞いてて、そんな事も疑問に思った。
今までは
「あー、そりゃお前アレだよ。…………あー説明がめんどくせぇ。色々理由があるんだが、まずお前の勘違いを一つ正しといてやる。
おじさんの説明は
けど、ビックリする内容ではあった。
「現代では作れないのに、
「もちろん、処置された正規品を買うなら結構高ぇぞ? ただ、沈静化処置にかかる手間がお前が思ってるよりずっと面倒なんだ。それに作れないとは言っても、古代遺跡からコンスタントに、無限に供給されるのも事実だろ? つまり希少価値って意味では値が付かん。警戒領域からいくらでも持って来れるからな」
「……なるほど。言われてみれば、確かに」
「そんで、現代でも
つまり、
「あと、
信じられない額が出た。
「これもお前は知らないだろうが、基本的に
「…………つまり、もしサソリ型のバイオマシンが売れなくなって、どんどん市場から消えていったら、デザリアの
「おお、そう言うこったな。やっぱお前は賢いぜ。大事な場所にちゃんと気が付く」
褒められて嬉しい。
おじさんに、こんなに構われた事も無いから、なんか朝からずっと背中がムズムズする。
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