朝食。
こんな砂漠の町でも、町はパルスシールドに守られて、個人レベルでもナノマテリアルによって快適に過ごせる。
お金さえあれば、物価に目を瞑れば普通の都市と変わらない生活だって送れる。僕はその仲間入りを果たそうとしている。
感慨深い。全部シリアスのお陰だ。毎日毎秒、シリアスの事が好きになってる。
お部屋を出て、かなりお金を使われた設備の割には見た目がレトロな内装を見ながら歩く。
都市の中心部なら個人宅でも昇降機が当たり前なのに、おじさんはレトロな物が好きだから整備屋では階段が採用されてる。
段差を降りて、居住区画から整備屋のハンガー区画に。
「…………わぁ、シリアスがピッカピカになってる」
降りたそこは、シリアスくらいのバイオマシンなら六機も格納出来る規模のハンガーで、個人が所有するハンガーとしてはかなり大きな物だ。当然、スラムにある店舗としては破格。
階段を降りれば、その一角に座る僕の愛しい相手が見えて、僕の胸はそれだけでドキドキしてしまう。もう本当にダメだ。シリアスが好き過ぎる。
昨日も、僕はなんでか、兵士さんを相手に泣きながら色々とぶちまけて、シリアスに恋した事とか全部ゲロってしまったりして、思い出したら悶絶した。僕、何やってんだろう。
でも、それを聞いた兵士さんも、完全に変態な僕の事を笑ったりもしないで、優しくしてくれた。嬉しかった。
兵士さんは、「乗機なんて
「おう、来たか。さっさと飯食っちまえ」
「あ、はい!」
ハンガー区画の一角には、おじさんのポリシーが詰まったフルオープン事務所がある。
普通、こう言うのって個室と言うか、一室用意する物だと思うんだけど、おじさんは何故か、ハンガーの隅っこに机やら機材やら、何やら色々と事務仕事に必要な物を全部詰め込んで、ハンガーを全部見渡しながら仕事が出来るようにしてある。
給湯室の役割がある場所までフルオープンで、と言うか給湯室じゃなくてキッチンがついてる。食事も居住区画で食べないで事務所で食べる。おじさんの拘りらしい。
僕はおじさんに促されるまま、シリアスに手を振って朝の挨拶をしながら事務所のテーブルについた。シリアスはアームを振り返してくれた。
帰った時には、僕の知らない間に三機も仕留めてたシリアスは結構ボロボロになってたんだけど、今はもう、自分で捻じ切ったらしいキャノピーも含めてピッカピカの新品になってる。凄く綺麗だ。僕の恋人凄く綺麗。
砂色の装甲が綺麗で、ずっと見てられる。
「…………おいおい、大好きなシリアスちゃんをずっと見てたいのは分かるが、飯を食え」
「あっ、ぇぅあ、ごめんなさいっ」
指摘されて、恥ずかしくなった僕は、言われるままに食事を始める。
お客さんと商談する為の応接用テーブルに並べられた料理は、自動調理が当たり前の現代で珍しく、材料からおじさんが手作りした物だ。
こんがりトースト。カリカリベーコンエッグ。シーザーサラダ。ソーセージにポテトのポタージュ。
これ、材料を買うだけで結構な額だと思うんだけど。
「おじさん、これ、豪勢過ぎない? 天然物だよね?」
「ん? ああ、気にしなくて良いぞ。お前のお陰で稼げそうな額から見ても、端金だからな」
「そ、そうんだ……」
現代では、古代文明の危ない遺産と、敵国と、あとなんか色々と領土を奪い合ったりして、土地が足りない。バイオマシンが出て来る警戒領域のせいで開発出来ない土地が多過ぎる。
そんな中で、農業や酪農で食料を生産するのは非効率が過ぎる。場所が足りないのに土地をバカ食いする産業なんてやってられない。
だから、現代での食べ物は基本的に、合成食だ。
遺伝子改良で生産性を極限まで引き上げた虫とか、信じられない速度で増える藻とか、そう言うのを使って動物性、植物性に限らず生成出来るフードマテリアルを作るのが一般的。
フードマテリアルは専用の調理器にセットして使い、そうするとマテリアルを消費して様々な食材のイミテーションが作られる。
食材のイミテーションを作るか、最初から調理済みのイミテーションを作るかも選べて、調理済み至上主義と手料理愛好派閥が今日もしのぎを削ってるらしい。
で、今僕が食べてる料理だけど、これは天然物だ。フードマテリアルから生成したイミテーションじゃなくて、少ない土地を使ってお金持ちの人の為に態々育てた、本物のお肉や野菜、穀物が使われてる。当然ながらめちゃくちゃ高額だ。
どのくらい高額かと言えば、多分だけど、このカリカリベーコンエッグだけで七○○シギルくらいすると思う。このカリカリベーコンエッグだけで水ボトル百本分だ。
「……と言うか、もうお前もこっち側だからな? これから、お前もこんな天然物を当たり前に食える程度には稼ぐんだぞ?」
「ふぇえ……、実感が無いです……」
一般市民が月に三○○○シギル稼ぐ中で、ちょっと警戒領域に行って
生活水準が爆上がりして、使うお金の桁が最低でも二つは上がる。死ななければバイオマシンを持ってるだけで上級市民以上の生活が当たり前なのだ。
「特に、お前なんてオリジンに見初められた
「えと、ごめんなさい。
「当たり前だろ。死んだバイオマシンやその残骸を持って来るのと、生きたまま連れて来るんじゃ価値が違うに決まってんだろ。…………ああ、そうか。お前は賢いし、情報も大切にしてるが、流石に
もう完全に上客扱いになった僕は、おじさんから色々と教えてもらう。
「良いか? バイオマシンってのは知っての通り、生きてる。だから体を構成する
「…………うぇ、知らなかった」
「だろうな。お前が拾って来る残骸は、当たり前だがもう死んじまった
現代の技術力は古代文明と比べたらクソザコナメクジだ。
だけど、現代が古代文明の技術で真似出来ない代表は、
もちろん細々とした技術はやっぱり凄まじい差が依然としてある訳だけど、とりあえずはその二つにさえ目瞑れば、バイオマシンの生産自体は可能なのだ。
と言うか
だから、僕は今まで、特に大事なのが
バイオマシンを
「…………また一つ賢くなってしまった」
「良い事じゃねぇか。その調子で、これからも俺に稼がせてくれよな」
そっか。
良く考えれば、当たり前だったのかも。だって、
「ごちそーさまでした。美味しかったです」
「お粗末さん。食器は置いといて良いぞ。片付けはボットにやらせる」
「はい」
食事が終わり、次はお金の話しだ。
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