到着。



「お、おまっ、良く出入りしてる孤児のガキだよな?」


 僕が現在住んでる、と言うか住み着いてる。いや棲み着いてる町に、たった今帰って来た。


 オアシスを利用して作られた場所で、人口は三万と五○○○人ほど。


 壁などは特に無く、外から町の様子が見て取れる。


 けど、防衛力はしっかりとあって、壁もただ見えないだけで、町を強力なパルスシールドで覆ってるのだ。


 風は通すのに砂嵐なんかは弾くので、中は結構過ごし易い。陽射しは普通に辛いけど。


 町並みとしては、町の中心に行くほどサイバーチックな見た目でシステマチックに、町の外周ほど原始的でアナログな感じになる。


 中心に行けばビル群、外側はテント、みたいな町だ。所属する国が定める人口比だと町の規模なんだけど、何故か都市と言い張る変な町なのだ。


 デザートシザーリア生産の古代遺跡が近くにある関係で、生体金属ジオメタルの輸出を主な産業としている、古代文明依存型の採掘拠点でもある。

 

 他にも砂漠で育つ香辛料なんかも産出してるけど、その辺は孤児の僕には関係無いのでどうでも良い。香辛料は高いし、金持ち用の品物だし、本気で接点が無い。

 

 と言うか仮に接点を持ちたくとも持てない。だって高価な品物を孤児に触らせてくれるわけが無い。別に触る気も無いけど。

 

 天然のお肉とか野菜だって買えないのに、香辛料だけ手に入れてどうするのか。

 

 民間レーションにかけるの? 味変したいなら違う味のレーション買えば良いと思うな。最低グレードでも十種類はフレーバーが有るんだし。


「はい、ラディアです。何時いつもゲート警戒のお勤め、お疲れ様です!」

 

「……おう。…………あー、その、なんだ。について、聞いても良いか?」


 そして現在。僕は町の入口で止められてる。当たり前だ。

 

 シリアスはデザートシザーリアであり、つまりバイオマシンだ。兵器だ。武力だ。素通しして良い訳が無い。

 

 パルスシールドで覆われた大きな町に二つあるゲートの、荒野側。つまり危ない方。

 

 野生のデザートシザーリアが出没する危険領域に向かって解放されてるゲートで、防衛用のバイオマシンが常に二機ほど警戒してる。

 

 この町の名物が、……名物? いや名物で良いか。特産? の名物がデザートシザーリアなので、防衛戦力も当然デザートシザーリアだ。

 

 銀色に赤いラインが走ったカラーリングで、シリアスと違って攻撃機としてカスタマイズされてる機体になる。

 

 そんな場所で僕は、まぁ当たり前にシリアスの件で止められた。

 

 ゲートは広くてシリアスが五機くらい横に並んでも入って行ける大きさだけど、真正面で止まってちゃ迷惑だ。

 

 兵士さんの案内に従ってゲート横まで移動して、僕が降りやすい様にしゃがんでくれた優しいシリアスのコックピットから降りる。

 

 その際、シリアスは優しいのでモタつく僕をそっとシザーアームでつまんで、ちょこんと正面に降ろしてくれた。もうシリアス大好き。


「砂漠で僕の乗機になってくれた、デザートシザーリアのシリアスです。……えと、僕、良く分からないんですけど、バイオマシンで都市に入るには、何か手続きとかお金とか、必要なんですか……?」


 ちなみに、この町はバイオマシンが出入りする関係で人口よりも巨大だけど、間違い無く町である。

 

 けど、見栄とかメンツとか色々あるから、兵士さん相手には都市って言う方が通りが良い。

 

 特に、僕みたいな孤児なんて、兵士さんに睨まれたらあっと言う間に生きて行けなくなる。


「あ? あぁ、まぁ、そうだな。バイオマシンで町に入るなら、税金やらなんやら居るが、…………まぁそうだよな。お前は情報端末とか持って無いもんな」


 おおぅ、そう言えばこの兵士さんは自分でも町って言う人だった。でもまぁ普段から気を付けてないと、事故ったら怖いし、このまま行こう。

 

 僕に対応してくれるのは、大きくてムキムキで、ちょっと爽やかな感じがする兵士のお兄さんだ。綺麗な赤髪がバッチリ決まっててカッコイイ。

 

 ゲートに居る兵士さんは当たり外れが極端だけど、この兵士さんは凄い当たりの部類だ。なんたって、こうやって孤児である僕とちゃんとお話してくれるんだ。凄い助かる。助かり過ぎる。

 

 悪い兵士さんだと、もう最悪は町に入れてくれなかったりする。

 

 そんな時はナノマテリアルを寄せ集めた襤褸服の性能を信じて、死ぬ程冷える夜の砂漠で次の日を待つ。正確には兵士さんが交代する時間を待つ。

 

 兵士さんのシフトは結構ランダム要素が強いんだけど、僕の運が悪いと悪い兵士からの悪い兵士に交代、からの次も悪い兵士さん、みたいたクソ展開が待ってたりする。丸一日中に入れなかった時は本気で死を覚悟した。


「……端末は、持ってません。税金って、どのくらいですか?」

 

「…………いや、その前に一つ答えろ。……この機体、もしかしてオリジンか?」


 ……オリジン? なんだっけそれ、聞いた事ある。


「…………オリジンって、なんでしたっけ?」

 

「あ? …………ああ、天然物のバイオマシンの事だよ。陽電子脳ブレインボックスを積み替えて無い機体の事だ」

 

「あー! はい! そうです! オリジンです!」


 そうだ、天然そのままで現代人に味方してくれる機体をオリジンって呼ぶんだった。

 

 御伽噺がどうとかで、クソ親父パワーが邪魔して記憶からハミ出てた。おのれクソ親父め。死んだら絶対に殴りに行ってやるからな。


「……………………マジか。あー、マジかぁ。すげぇ、本物かよ」

 

「あ、えと、オリジンだと、何かマズかったりしますか……?」

 

「いや、単にメチャクチャすげぇってだけだ。……あーいや、オリジン欲しさ馬鹿が馬鹿をやらかす可能性はあるから、その辺は気を付けろよ。オリジンってのは超希少で、現代人の手が入って無いのに使える陽電子脳ブレインボックスってだけで、ヤバいくらいの価値がある。だがオリジンは基本的に気難しいとも聞くし、国もその辺は気を使って権利を保証してるんだが、馬鹿はその辺を全く理解出来ないから馬鹿と呼ばれるんだよな」

 

「……え、国に保証とか、…………え?」


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