ログインボーナスのイベント配布分を開封しまくれ!

 ローザの奥義のおかげでもあり、地下二十九階まで来られた。


 死すら覚悟したメテオゴーレムも、攻略さえできてしまえばスライム相当――とは言わないけど、ギリギリ楽勝になった。


 やはり、強敵だけあってすんなりとはいかなかった。


 消耗品アイテムは、ほとんど使い果たしてしまった。



「回復ポーションは全部使い切った」

「どうしましょう、アビス様……」



 ミランダは絶望感を漂わせ、頭を抱えていた。そうだな、いくらローザのヒールがあるとはいえ、魔力量MPには限界がある。

 魔力を回復するブルーポーションも在庫切れ。


 アイテムボックスには、これまで狩ったゴーレムのドロップ品、無限初回ログインボーナスで得たレアアイテムが大量に埋まっていた。


 そろそろアイテム整理もしたいところだが、そんな余裕はない。


 全員が満身まんしん創痍そうい

 ズタボロだった。


 という俺は、元からボロボロだけど。



「安全地帯以外は、ワープポータルも開けないんだろう?」

「はい、不可能ですぅぅ……」


 目を回し、ヘロヘロになるミランダは限界が近かった。

 一方のローザもずっと奥義・真剣白刃取りをしてくれていた。そのせいか、手には血豆が出来ていた。


「ローザ、いつも白くて綺麗な手がこんなに血に塗れているじゃないか」

「……えへへ。でも、これで地下二十九階まで来れました」

「無茶しやがって。本当にお前というヤツは……よくやった」


 頭を撫で、俺はローザに感謝した。

 するとローザは目をウルウルさせ、ダバーと滝のように泣いた。我慢していたのかよっ。


「アビスさあぁぁん……もう手が痛くてたまりません……」

「分かった。もうここまで来れれば十分だ。あと少しで『地下三十階』へ繋がる階段なのだからな」


 そう、もう目の前に『階段』が見えていた。恐らく、ヴァナルガンドも全滅していなければ到達しているはずだ。


 ヘルやオーガストたちの姿は一切見なかった。


 ということは到着したか……全滅したかだ。


 だが、あのギルドのことだからしぶとく生き残っているだろうな。特に、オーガストは本当に鉄壁のようだったし。



 ともかく、この先へ向かわねば。



「二人とも、ここまでよく付き合ってくれた。あとはボスモンスターを倒すだけだ。だが、回復アイテムも尽きた今……苦しい戦いになるだろう。もし、ギブアップなら無理についてこなくていい」



 そう一応、離脱も許可すると――



「何を水臭いことを言っているんですか、アビスさん」

「そうですよ。今更ではありませんか。それに、ローザさんが言っていたでしょう。一蓮いちれん托生たくしょうであると」



 良かった、二人とも俺に付いてきてくれるようだ。

 もう迷う必要はない。


 ただ前を歩くだけだ。



 ▼△▼△▼△



 地下三十階へ降りる前、ローザは不思議なことを言った。


「あの、アビスさん。もしかしたら、なんですけど」

「うん?」


「無限初回ログインボーナスって、イベント配布分も溜まっているのではないですか?」

「――へ? イベント配布分?」



 聞きなれない言葉に俺は首を傾げた。

 なんだ、イベントって。

 さっぱり分からない。



「やっぱり。なんかおかしいと思ったんです」

「どういうことだ?」

「初回ログインボーナスとは別に項目があるんです。では、まずいつものメニューを開いてください」


「ふむ」


 指示に従い、俺はそのいつもの『初回ログインボーナス』の画面へ。まだ残り二年分が未開封のままだ。


 そこで俺はふと気づいた。


 受信ボックスの【初回ログインボーナス】別に【イベント配布分】というタブがあった。


 なんだこれ?


 それを開くと――



 XX/XX/XX:

 【ようこそXXXXXXXXXXXXへ】

 XX/XX/XX:

 【登録者数十万人記念】

 XX/XX/XX:

 【バレンタインデーイベント】

 XX/XX/XX:

 【スライムをぶっ倒せの記念配布】

 XX/XX/XX:

 【一周年記念イベント】


 ・

 ・

 ・



 などなど、これまた三年分・・・が眠っていた。

 なんだか一部文字が化けているけど……とりあえず、気にしないでおこう。



 これがイベント配布分か。



「それ、ポーションとか大量配布された分がありますよ」

「マジ? それを受け取れば何とかなる!?」

「ええ、確か【スライムをぶっ倒せの記念配布】は、レッドポーション改が実装された記念なので、1000個くらい配布されたと思います」


「すげえ気前いいな。……って、ローザ、なんで知ってるんだ?」


「それについては近々話すことになりそうですね」



 どうやら、全てを話してくれるようだな。その時を待とう。



「あの、アビス様はアイテムの受け取りを全然されていないのですね」

「ああ、そうなんだミランダ。俺は、今まで初心者以下のレベルだったからね」

「そうだったのですね。でも、これでポーションが手に入りましたね!」


「ああ、レッドポーション改1000個に、他のイベント配布分も受け取った。体力・魔力回復ポーション系が3000個、その他の回復剤もいくつか出来た。これでボスに挑めるぞ」


「はい。ここまで来たからには、わたくしも全力でサポートいたします」

「頼む」



 俺は、ローザとミランダに回復ポーションを1000個渡した。


 これで準備は完了だ。



 ▼△▼△▼△



 最後・・の階段を降りていく。



 とうとう此処ここまでやってきた。


 最果て。

 地下三十階。



 闇は一層深くなり、黒い霧が不気味に漂う。



「……アビスさん」

「ローザ、怖いのか。手が震えているぞ」

「はい、とても怖いです。だって、大手ギルドが全滅しちゃったんですよ……。やっぱり、引き返した方が……」


「なんとなく……なんとなくなんだけど、この先に“答え”がありそうな気がしているんだよ」



「答え……そうかもですね」



 少し諦めたような言い方だった。



 ――階段を降り、広い空間に出た。



「な、なんでしょう……まるで夜空のようにキラキラしています」



 ミランダの言う通り、ここはまるで夜。

 星々のような光があちらこちらに続く。


 不思議と視界は良好。

 ここが地下三十階だっていうのか。


 まるで地上だぞ、これは。



「ヴァナルガンドの奴らは……!?」



 俺は慎重に進んでいく。

 後ろからはローザとミランダがついてくる。



 ヴァナルガンドの人たちは?

 ボスモンスターはどこにいる?



「あ……あれ!」



 ローザが何かに気づく。

 別の方向に何人か倒れて死体(?)になっていた。まさか……やられたのか。



「あっ、あの人達、ヴァナルガンドの人たちですよ、アビス様!」

「ああ、ミランダ。あれは間違いないな。……って、まだ息があるぞ」



 駆け寄ろうとすると、いきなり“ハンマー”が飛んできた。



「……っ! 誰だ!!」


「よう、アビス。お前がここまで来るとはな」


「あんた……なんで」



 闇から現れる大男。

 人殺しのような目つき、殺気を漂わせて俺をにらむ。



「フフ、正直驚かされたぜ。いや、だが……俺はお前がここまで到達すると思っていたさ」

「まて、なんで……なんでお前だけが余裕の顔してるんだ。ヴァナルガンドの人たちを蘇生しなくていいのかよ!! オーガスト!!」



 ニヤリ――と悪魔のような笑みを浮かべるオーガスト。


 ヤツは、懐から『犯罪者ギルド』の仮面を取り出す。



 ……ま、まさか!!



「そ、そんな……オーガスト。お前、まさか……ヴァナルガンドの人たちを見殺しに!!」


「まあ、そんなところさ。だが、まだ半殺し・・・に済ませてある。ヘルもその仲間たちも直に死ぬだろう」


「なんでこんなこと! 大体、ボスモンスターでそれどころじゃないだろ!!」



「まだ気づかないか、愚か者!!」



 声を荒げるオーガストの表情は、悪鬼そのものだった。コイツ……犯罪者の顔をしてやがる。



「どういう意味だ」

「分からねえなら教えてやる。この俺が全て・・仕組んだことだ!!」



「……なに?」



「レイラをお前に仕向けて奪わせたのも……。レイラの護衛をした男たちも……。それから、このダンジョン前にいたスライも……。俺の掌でピエロとなっていたギャレンも――そう、何もかもが俺が用意した“駒”なんだよ!!」



「なん……だと……」



 オーガストが全てを計画し、俺をハメたっていうのかよ。信じられない……けど、そう言われれば、あまりにも都合がいい流れだった。

 今まで怪しい男達が現れすぎなんだ。



 そうか、このオーガストこそ犯罪者ギルド『カーネイジ』の本当のギルドマスターだったんだ。



 俺は……そんなヤツを少しでも尊敬し、信頼していた。



 信じた俺が馬鹿だったんだ。



「オーガストてめええッ!! よく俺をだましたなあああああああ!!」



「フハハハハハハハハ!!! アビス、お前は良い玩具おもちゃだったよ。よくぞゴーレムダンジョン最下層まで到達してくれたッ。大変素晴らしいショーだったよ、アビス!!」



「お前の目的はなんだ!!」


「俺の目的ぃ? それはただひとつ……お前から奪う・・ことだ」



 舌をベロっと出し、狂気を見せるオーガスト。こんなヤツだったとは、残念だ。



「なんの恨みがある! 俺はお前に何もしていない!!」


「なにもぉ!? ふざけるなああああああ!! 貴様は、貴様は、貴様は!! アビス、お前という存在が憎い!!!」



 ドンッと殺気を放出するオーガストは、召喚術を使った。



「な、なにをする気だ!」


「ひとつ教えてやる。この俺は『ダークエルフ』でね。最下層のギガントメテオゴーレムを召喚するのは……この俺だ」



 巨大な魔法陣が地面に現れ――ついに、それは姿を現した。



 ギガントメテオゴーレム……!



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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