聖剣カレトヴルッフと聖剣専用スキル
使うなら今しかないと思った。
この剣の特性を俺は理解していたからだ。
インビジブルソード。
剣の名は『カレトヴルッフ』と言った。
聞きなれないヘンテコな名だが、この武器が
迫りくるバフォメットの“デスサイズ”を――おぉ、受け止められた。
ガンと鈍い音、凄まじい剣閃が衝突するも俺には余裕があった。一方の悪魔の化身バフォメットは、後方によろめいて
「ア、アビスさん……その剣!」
「インビジブルソードだ。初めて使うにしては手によく馴染む。まるで、昔に使ったことがあるみたいだ。そんな懐かしさを感じる」
「その剣なら、この場にいる悪魔を葬れます! 聖属性を持つその剣は、闇属性の悪魔にとっては弱点属性。通常の三倍のダメージを与えられます」
マジか。そこまでダメージが増大するんだな、弱点とは。
俺は、聖剣を構えて駆けだしていく。バフォメットも改めてデスサイズを振るってくるが、俺はその鎌を剣で破壊。
そのまま斬撃を入れた。
恐ろしいほどの大ダメージを一撃で与え、バフォメットは消滅。その事実が、周囲の冒険者、それにあの犯罪者ギルドに
「馬鹿な!! バフォメットがやられただと!!」「あ、ありえねえ!」「今まで倒されたことあったか!?」「クソが!!」
悔しがる犯罪者共だが、俺は止まらない。そのまま残りの召喚モンスターに斬撃を与えていく。
全身真っ黒のダークスライム。こいつは、C、B級冒険者を十人は喰っていた。聖剣で切り刻み、粉砕。
バイオグールは、噛みついて仲間を増やすようだった。だが、聖属性を持つ剣の前ではスライム相当。一撃で全てを葬った。
次に奇怪なフォルムをしたフィアスグレムリン。悪魔というか妖精の類だ。恐ろしい姿で怪光線を放つ。その魔力は高く、ダメージを受けたA級冒険者が骨になっていた。俺は隙を突いて背後から切り倒した。
そして、しつこく宙を飛ぶヴァンパイアロード。こいつだけは特殊で、ミランダによれば『聖水』がないとトドメを刺せないという。どうやら、一部の悪魔には『不死属性』があるようだった。
「なのでアビスさん、聖水をヴァンパイアロードにぶつけてください!」
「分かったよ、ミランダ」
【聖水】
【詳細】
聖職者系が使うアイテム。
①武器に[聖属性]を付与する
②悪魔系モンスターの不死属性を解除する
③自身の[呪い]を解除する
幸い、初回ログインボーナスで大量入手していた。アイテムボックスから『聖水』を大量に取り出す。すると、ローザとミランダが仕事を請け負ってくれた。
「わたしとミランダさんにお任せください。それくらいはしたいんです」
「ローザ様のおっしゃる通り。ヴァンパイアロードは、本来は“レイドボス”です。ここは力を合わせて戦う方が確実かと」
そうだな。他はともかく、ヴァンパイアロードだけは別格だった。自由自在に飛行し、赤い剣で冒険者を刺し殺しては吸血行為を繰り返していた。このままでは、こっちが全滅する。
「頼む!!」
「ええ、これでもわたしは
素晴らしいまでの投球モーションを見せるローザは、全力で『聖水』を投げた。ビュゥゥンと風を切っていく。
一直線に向かう『聖水』は見事にヴァンパイアロードに命中。
『ガァァッ!!』
聖水によってヤツは
いやしかし、ヴァンパイアロードは弱ったぞ。ならば、この一撃に賭ける。
疾風迅雷となっって俺は宙を疾走。
インビジブルソードを強振し、ヴァンパイアロードの体に一閃を刻む。
「コールブランド!!」
【コールブランド】
【Lv.1】
【攻撃スキル】
【詳細】
消費魔力:300。
聖剣カレトヴルッフ専用スキル。
強力な聖属性攻撃を敵に与える。
このスキルは『冒険者ランク』に影響される。ランクが高ければ攻撃力が上昇する。冒険者ランクが一位の時、聖属性攻撃力 +10000%。消費魔力が『30』になる。
聖地アヴァロンに滞在している場合、このスキルの攻撃力は二倍になる。魔力消費は『0』になる。
Lv.1:聖属性攻撃:1000%。
有効範囲:小
Lv.2:聖属性攻撃:2000%。
有効範囲:小
Lv.3:聖属性攻撃:3000%。
有効範囲:中
Lv.4:聖属性攻撃:4000%。
有効範囲:中
Lv.5:聖属性攻撃:5000%。
有効範囲:大
聖剣専用スキルが大砲並みの魔力を放射。まともに受けたヴァンパイアロードは、バラバラに砕け散り――消滅した。
俺は、犯罪者ギルド共の前に立つ。
「諦めろ、犯罪者共!」
「……馬鹿な。馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なッ!! ありえない! ボロボロ装備の貴様にこんな力があるなんて……ありえない!!」
「そんな事はどうでもいい。お前は、スライを殺した」
「ス、スライ? ああ、あのダンジョン前でよくクエストアイテムを配っていた愚か者の事か! ヤツは元々は俺たちのギルドに所属していた。だが、いつしか罪の意識に苛まれるようになり、その贖罪だとかであんなバカげた行為に走っていたわけだ。そして、たった今、ゴミのように死んでいった。他人の女なんて
この男にスライを侮辱する権利はない。
それに、スライは勇敢だ。
ローザを守り抜き、俺に勇気を与えてくれた。
その事実だけは本物だ。
「そうか、聞いた俺が馬鹿だったよ。最後に聞かせてくれ、あんたの名を」
「いいだろう、俺は名は――ぶふぁあああああああああああ!!」
ギルドマスターが名の名乗る前に俺は、インビジブルソードを投げつけた。ヤツの胸部に剣が突き刺さっている。
倒れた男は、そのまま
この決定的瞬間に、周囲の部下共は青ざめた。
「……なっ、ギルマスがやられちまった!!」「リーダーなしでどうするんだよ!?」「おいおい、あのガキがやったのか? んな、アホな」「どうする、逃げるか!?」」
俺はもちろん、部下共も逃がさない。
部下共の足を切りつけ、身動きできないようにした。
「ぎゃあああああ!」「うあぁぁ、足がっ!!」「う、動けねえ……」「な、なんでもう斬られているんだよ!!」
これでいい。
後は無念に散った冒険者の仲間達がコイツ等をボコるだろう。
「みんな、犯罪者ギルドのリーダーは俺が倒した! あとの部下共は好きにするといい!!」
残ったのは十五人前後。
仲間を失って怒り心頭の生き残り組は、犯罪者ギルドの残党をボコボコにしていく。
「よくもやってくれたな!!」「かなりの人数が死んじまったんだぞ!」「僕のパートナーは、もう二度と蘇生できなくなってしまった」「こっちもだ。絶対に許さん!」「この犯罪者!!」「生きて返さねえ!!」「今まで散々奪ったものを返して貰うぞ」
残党は、徹底的にボコられ――顔などが変形するほどダメージを受けていた。やがて、トドメを刺されて幽霊化した。
ヤツ等を蘇生するものは誰一人いない。
あとは放っておこう。
「ローザ、お疲れのところをすまない。蘇生できる人だけ頼む。ブルーポーションだ」
「分かりました。急いで蘇生してきますね!」
こうして、犯罪者ギルドは消滅。地下十階を奪還できた。しかし、あまりにも多くの犠牲が出た。まさかダンジョンでこんなことが起きるとはな。
だけど、それでも立ち止まってはいられない。俺は進む。何があろうとも。人生を取り戻す為に――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます