剛腕のアイアンゴーレム Lv.67

 今度こそ商人さんと別れ、二階へ続く階段を探す。どうやら、フロアのどこかに最下層30階へ続く階段があるようだ。


 Lv.50のゴーレムを倒しつつ、階段を探した。それにしても、景色の変化にとぼしい。周囲は、岩かこけしかないな。

 そんな湿度高めな道をぐるぐる回る。

 ダンジョン内を回っていると、ようやく階段を発見。


「あった。あれが地下階段か」

「間違いありません。この調子でどんどん下を目指しましょう」

「そうだな。直ぐにクリアできるか分からんけど、こういうハイレベルなダンジョンは初めてだからな。慎重にいこう」


「多分、今回は到達できても五階とか十階かもですね」



 地下へ行けばいくほど敵も強くなるようだし、トラップもあるようだ。油断大敵だな。


 階段を降りて『メテオゴーレムダンジョン地下二階』へ。



「ここが二階か」

「あら、ここから他の冒険者もいるようですね」



 一階は過疎かそってたけど、二階からチラホラとパーティやギルドの姿があった。


 どうやら早くも、ゴーレムの上位種『アイアンゴーレム』が沸いて出てくるようだった。あの鋼みたいなボディを持つゴーレムか。まるで巨人のような体躯たいく。バケモノだな。



「おいおい、ローザ。アレ、すっげ~硬そうだぞ」

「ええ、アイアンですからね。防御力DEFは、通常のゴーレムの三倍・・はあるでしょう」

「ヤベェな」


 戦闘中の四人パーティを観戦。

 すると、前衛の騎士が剣を振るって物理攻撃によるダメージを与えていた。だけど、全然効いていない。逆に剣の刃が折れてしまった。


 うそー…、武器が破損しちゃった。


 とんでもない防御力DEFっていうか、ボディだな。まさに鉄のゴーレムか。



 ――って、まて。あの戦闘中のパーティ、騎士がやられちゃったぞ。



「あ! 騎士がボコボコに殴られて……酷い。しかも、前衛が崩れて、こっちへ来ますよ!?」


「ちょ、えっ! やべえ……あのパーティ、アイアンゴーレムを引き連れてきやがったぞ」



 ズンズン向かってくるアイアンゴーレム。逃げ惑う三名のパーティは、こっちへ向かってきた。



「そこの二人、邪魔だよ!!」



 ローザが押し倒され、地面へ転ぶ。

 その瞬間、俺は怒りに燃えた。



「おいっ! ローザを突き飛ばすな……ってもういない! 逃げ足早すぎだろ!」



 俺は、直ぐにローザに手を差し伸べた。



「ア、アビスさん、ありがとうございます」

「いや、さっきのパーティが悪い……うわッ!」


「え」



 目の前には『アイアンゴーレム』がいた。さっきのパーティがなすり付けてきたんだ。……こんな事って。




【アイアンゴーレム】

【Lv.67】

【地属性】

【詳細】

 HP:6220。

 剛性のあるゴーレム。

 防御力が非常に高い。

 B級以上の武器を推奨。




「うそ……アイアンゴーレムです! 逃げましょう!」

「無理だ。この距離で逃げられると思えない。それに、アイアンゴーレムは中々どうして移動速度がある。なら、戦うしかないだろッ」



 インビジブルアックスで剛腕を受け止めた。



『ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!』



 攻撃の重みで地面がへこむほどの打撃に、俺は全身がしびれ震えた。な、なんて重さだ。重すぎるッ。てか、腕がもげる!



「アビスさん! 支援します!」

「分かった。ローザは、もう少し後退しろ! 危険すぎる!」

「了解ですっ」


 指示通りローザは、華麗にバックステップしていく。へぇ、良い動きするじゃないか。


「それで、何をしてくれるんだ?」

「大聖女の力を見せて差し上げますっ」



 自信満々の顔でスキルを発動するローザ。あのスラリとした手から魔力を感じる。なんだ、あの白い光。



「――くッ、しかし、こっちはヤベェな。SSS級武器なのに、敵の攻撃がしつこすぎて動けやしない」



 アイアンゴーレムは、しつこいほど何度も何度も打撃してくる。おかげで脱出する暇がなかった。今はローザに期待だ。



「いきますっ……! イントロイトゥス!」




【イントロイトゥス】

【Lv.5】

【支援スキル】

【詳細】

 消費MP:50。

 自分/対象に対し、全ステータスをアップする。


 Lv.1:全ステータス 5% 上昇

 Lv.2:全ステータス 10% 上昇

 Lv.3:全ステータス 15% 上昇

 Lv.4:全ステータス 20% 上昇

 Lv.5:全ステータス 25% 上昇


 スキル持続時間:5分間




 白い光に包まれると、全ステータスが急上昇。それが自然と理解できた。おぉ、力がみなぎるぞ。これなら……!



「うりゃぁ!!」



 インビジブルアックスを突き上げ、敵の腕を吹き飛ばす。アイアンゴーレムは、その勢いで後方へ倒れていく。


 おぉ、俺一気に強くなった!



「ステータスアップで強くなりましたね、アビスさん!」

「ああ、そうか。俺ってベースレベルはとんでもなく低いだろうし、自分で言うのもなんだけど基礎ステータスが最低値なんだよな。忘れてたよ!」


 そうだから、ローザの支援スキルでステータスが上昇したことにより、身体能力もアップしたわけだ。ステータスも上げないと、武具ばかりの能力では限界があるってことだな。


 道理で、アイアンゴーレムの腕を弾けなかったわけだ。



「トドメを刺しますか!?」

「ああ、ここで一気に畳みかける」



 やるなら今しかない。

 俺は走り出し、加速していく。

 十分な助走をつけた俺は跳躍ジャンプ


 力をグッと込めてインビジブルアックスを振るった。



 アイアンゴーレムは、その一瞬で真っ二つに割れた。ズンッと地面へ沈んで――塵となっていった。



【EXP:5550】

【ITEM:鉄×1】



 おぉ、倒せた。



「やりましたね、アビスさんっ」

「あぁ、なんとかな。それにしても、モンスターをなすり付けられるとは……ん? さっきのパーティ、向こうで倒れてないか?」


「ええ。あの三人、別のアイアンゴーレムにやられちゃったみたいですね」

「死んだ、のか」

「いえ、ここは“ナイトメアダンジョン”ではないので死なないはず。ただ、相当なデスペナルティを食らっているはずですね」


 デスペナルティ?

 まーた、よく分からん単語が出てきたな。


 どうやら、モンスターに負けると様々なペナルティを受けるようだ。経験値を大量に失ったり、お金や装備アイテムを消失ロストしたり――下手するとステータスもスキルも全てを失うパターンもあるとか何とか。などなど、かなりキツイ内容の模様。


 うわぁ、嫌だなそれ。


 そんな仮死状態のヤツ等は、少なくとも蘇生魔法『リザレクション』で蘇生されないと復帰できないとか。


 ローザによると仮死状態後、一日経過すると本当に死んでしまうらしい。つまり、24時間の猶予はあるんだとか。


 あ~、だから、周辺に魂が漂っているんだ。コイツ等の幽霊ゴーストってところかな。


 そうか、なるべくモンスターに殺されないように心がけないとなぁ。

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