褒美は『辺境伯』!? ボス撃破を目指せ!

 階段を降りていく。

 地下一階から雰囲気がガラリと変わり、視界もあまり良いとは言えなかった。ここから先がダンジョンなのか。


「ふぅん。地下だから狭いかと思ったけど広いな」

「はい、天井も高いですね。ゴーレムサイズに合わせているのでしょうか」

「かもな。それで、どんどん地下を目指せばいいのかな」

「えっ、ボスモンスターを倒しにいくです?」


 キョトン顔でローザは、やや困惑。


「行ければな。ただ、ローザを守って行かなければならないから、大変かもな」

「わたしのことはお気になさらず。これでも聖属性の攻撃スキルもあるんですから、自分の身くらい自分で守れますっ」


 そういえば、俺を助けてくれた時に使っていたな。あの十字の光……アレか。確か『ホーリークロス』だったか。

 けど、ローザはなんか危なっかしいっていうかな。うん、コイツは俺が守るか。


「いや、前衛は俺に任せろ。ローザは、後方支援を頼む」

「えっ、でも」

「施されたら施し返すって言うだろ」

「それってつまり、わたしを守ってくれるってことですよね!?」


 ローザは、目を星のようにキラキラ輝かせる。そんな見つめられると照れるって。俺は視線を合わせられなくなって、周囲を見渡す。ちょうどいいところに!



「おぉ! あんなところに人間ひとが座ってるー! なんだろう、アレ~」

「アビスさん、恥ずかしがり屋さんですね! でも、そういうところも可愛いですっ」


 なんかボソボソ言って俺の後をついてくる。それにしても、あの岩陰に座っている人はなんだ?


 歩いて近づくと、通路の端に店を出している人がいた。



「あの~。こんなダンジョンで何やってるんです?」

「いらっしゃい。僕は、このダンジョンの地下一階で『露店』をしているのさ。商人なんだよ」


「商人さんがこんなところで露店? 危険すぎる気が」

「いやぁ、大丈夫だよ。地下一階には『ゴーレム』しかいないし、足も遅いし、逃げ切れるから」


 そういう問題なのか。

 随分と余裕があるなあ。


 それにしても『露店』ね。


「なんでこんな危険地帯でわざわざ?」

「普通はダンジョン前でするものだけどね。けど、僕はレベリングも兼ねているからさ。商売はついで。副業さ。でも、これが意外と儲かるんだ。ほら、このメテオゴーレムダンジョンって『宝箱』が沸くだろ? あれの中身を拾って売っているのさ」


「あ~、なるほどね」


 そうやって生計を立てているんだ。

 露店は、いろいろ売っているみたいだけど、どうやって覗けばいいんだか。悩んでいると、ローザが耳打ちしてきた。



「アビスさん、露店を見たいんですか?」

「ちょっと気になっただけ。まあ、今はいいや」

「そんな事言わず、少しだけ見ましょうよ。わたしも気になりますし」


「……どうやって見るんだ?」

「教えますよ。いいですか、まずは露店の前に立ちます」


「おう」


「そしたら、どちらの指でも構いません。人差し指で品物の近くを押すんです。すると――!」




【販売リスト】

・レッドポーション 200ベル

・レッドポーション改 1,000ベル

・ブルーポーション 5,000ベル

・ゴブリンの爪 500ベル

・メデューサの頭 200,000ベル

・錆びた指輪 1,000ベル

・F級シューズ 100ベル

・B級フラワーリボン 300,000ベル 

・A級オークシールド 5,600,000ベル

・ラーズグリーズ社製釣竿 500,000ベル

・エクサニウム 50,000ベル


【購入】【取引中止】




 なんか出てきた!

 これが『露店』なんだ。

 この商人さん、いろんな珍しいアイテムを売っているんだなあ。見たことないものばかり。



「ありがとう、参考になったよ」

「いいよいいよ~。欲しくなったらいつでも声を掛けて。一階にいるからさ」



 俺は、商人さんに別れを告げる。



「それじゃ、邪魔した」

「ああ、待った! お兄さん」

「ん?」


「二人は、ボス攻略まで行くつもりかい?」

「ああ、行ければね」

「本当かい!? お客さん、余計なお節介かもしれないけどさ、言っちゃ悪いけど装備がとんでもなくボロボロだよ。それで行くのは無謀むぼうだと思うけど……」


「そう見えるだけなんで大丈夫だよ、商人さん」

「? どういうことだい? まあいいや、でもね、ボスモンスター『ギガントメテオゴーレム』には気を付けて。噂じゃ、大手ギルドを全滅させた・・・・・って話だよ」


「……へ」


「リディア共和国の大手ギルドさ。確か、二十人規模だったかなぁ……騎士系ジョブが十人、後衛に魔術師ウィザード系も五人、あとは賢者とか錬金術師アルケミスト、最上級職のルーンプリーストもいたってさ。にもかかわらず、全員戻らなかった」



 その恐ろしい情報を耳にして、俺は頭が真っ白になった。嘘でしょ!


 初心冒険者レベルの俺でも、その恐ろしさは理解できた。やべぇじゃん。



「えっと、そんなのに強いのか、ボスモンスター」

「ああ、その大手ギルドには、ケイオス帝国からわざわざ加入したS級ランクの上級冒険者もいたらしい。貴族だったようだけどね。でも、やられちまった」


「マジっすか」


「でな。ケイオス帝国は、その貴族を随分ずいぶんと気に入っていたらしい。すっげー権力とか領地を持っていた辺境伯だったとか。んで、今は『ギガントメテオゴーレム』を倒すと、その褒美に“爵位”が与えられると大騒ぎ。冒険者みんな狙ってる」


「なッ!! 爵位だと!?」



 俺は、その有益すぎる情報を耳にしてテンションが一気にアップ。もともと俺は貴族で伯爵家の息子だった。今では、その地位もないし、家も何もかも失っている。全ては、あのレイラのせいだ。


 ……つまり、ボスモンスターを倒せれば、ケイオス帝国から認められて『辺境伯』の地位を授かれる!


 再び貴族に復帰できるんだ。


 辺境伯になれれば安定した生活が送れる。こんなホームレス生活とはおさらばできるはず。


 悠々自適な生活を送りたい。


 だから、俺は……!



「ローザ、聞いてくれ」

「な、なんです……改まって。ていうか、手を握りすぎですぅ!」


「そんなのどうでもいいっ。いいか、お前のくれたこの『無限初回ログインボーナス』を使って、絶対にメテオゴーレムダンジョンを攻略してみせる。ボスモンスターを撃破するんだ。それが達成できたら辺境の地で、一緒に静かに暮らそう!」


「え、え、えっ……そ、それって……えっと、あの、プロ、プロ、プロポーズですかぁ!?」


「勘違いしすぎだが、要約すると大体そんなところだ」


「えーっ!!」



 壊れそうなほど激しく赤面するローザは“ぷしゅ~”と湯気を上げ、目をグルグルを回した。あれ、なんかヘロヘロになって、ぶっ倒れたぞ。


 でも、これで当面の目標が定まった。


 ギガントメテオゴーレムを倒す。

 この一点に集中だ。



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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