第42話 ダンジョンボス
4階層での狩りが終わった翌日、俺はボス部屋へと続く大きな扉の前まで来た。
扉に触れながら開くのを待つこと30秒で、大きな扉は全く音を出さずに開いた。
音も無く開いたことに少し驚きながらも、扉が閉まる前にボス部屋の中へと進む。
ボス部屋の中心には、ボスであるゴーレムが一体だけ居るのが確認できる。
冒険者ギルドの図書館で得た情報によると10メートル以上離れていればゴーレムは全く動かない。逆にそれ以上近づけばゴーレムは戦闘態勢に入り動き始める。
ここは半径50メートルほどの四角い大きな部屋で、他の階層と同じように洞窟の様な空間になっている。
入り口の大きな扉と全く同じ扉が奥にあるのが確認できる。ゴーレムから10メートル以上の距離を保ちながら出口となる扉に近づく事は可能だけど、開く事はない。
出口の扉を開く方法はゴーレム討伐だけ、それ以外の方法ではどんなに頑張っても開くことが出来ないらしい。
ボス部屋を観察し終えた俺はゴーレムまで15メートルほどの距離まで近づく。
「《鑑定》」
――――――――――――――――――――
【名前】ゴーレム
【レベル】50
【HP】1600/1600
【MP】160/160
【攻撃】1120
【防御】1850(+100)
【敏捷】160
【魔攻】160
【魔防】160
<パッシブスキル>
【防御アップ(D)5】
――――――――――――――――――――
ゴーレムについては調べてあったので知っていたが……実際に鑑定して見てみると、やはり防御が凄く高いな。
俺の攻撃の5倍以上か……ステータスの差がヤバいな。だけど防御を除けば、攻撃以外はかなり低いからそこまで脅威に感じる必要のある相手ではない。
攻撃も俺の防御の3倍以上とかなり高いが、敏捷が低いから問題はない。
防御の高さを実際に見て驚いたが、それ以上にパッシブスキル【防御アップ(D)5】を所持している方が驚いた。
これは最低でもゴーレム100体は周回して俺も【防御アップ(D)】スキルを取得し、レベル5まで上げたいと思った。
ゴーレムの見た目は〈岩の巨人ダンジョン〉の名前の通り岩の巨人。そんな見た目通りのゴーレムは鉱物、砂、土などからできた大きな人形の魔物だ。
俺の前方にいるゴーレムの大きさは5メートルほどで胸の中心に窪みがあり、そこにはコアという球体が埋め込まれている。
このコアはゴーレムの弱点であり、スライムの核と同様に破壊されてしまえば体を保つことが出来なくなる。
スライムの核に比べればゴーレムコアのが耐久力は高いと言われているが、何度も攻撃すれば壊すことは可能だ。ゴーレム討伐の正攻法な狩り方はコア破壊になる。
一つだけ注意しなければならないのが、コアの防御も高いので物理攻撃で破壊する事は困難だから魔法攻撃で破壊を狙うこと。
ゴーレムはステータスでも見てわかる通り魔法攻撃に弱いという事だ。
普通のゴーレムなら魔法攻撃でコアを集中的に狙えば、そこまで苦労する事なく討伐する事ができる。
逆に魔法が苦手な人ならゴーレムをソロで討伐する事はかなりの難易度になる。
そんな弱点を持つゴーレムだが、上位種のアイアンゴーレムにもなると魔防も高くなり討伐が難しくなる。
更に上位種のミスリルゴーレムになると、魔法攻撃は弱点ではなくなってしまう。
ミスリルゴーレムはミスリルという鉱物で全身が作られているゴーレムだ。
ミスリルは銀色の金属だ。
一番の特徴は魔法的な力を宿している金属なので、魔法耐性があったり魔法の伝達性が高く『魔法銀』とも呼ばれている。
魔法に対応する事が出来て、その上で鉄よりも軽く、硬く、錆びない、叩いて伸ばす事ができるなど、優れた性能がある事から鉱物の中でも価値がとても高い。
この様な性能なので冒険者に需要がある。
多くの者は冒険者になると、最初の目標として夢見るのはミスリル製の武器防具を買えるくらい活躍して装備すること。
そんな初心者冒険者の夢で全身が作られたミスリルゴーレムにもなると弱点はコア以外なくなり、ミスリルの性質で軽くもなるので敏捷も上がる。
そうなると一部の強者以外は討伐することが出来ない。
だが俺の目の前に居るのはミスリルゴーレムではなく、魔法に弱い普通のゴーレムだ。
何の脅威も感じる必要はない。
まずはゴーレムの近くまで行き止まる。
俺の事を敵として認識したゴーレムは片腕を上げ、こちらに向かって振り下ろした。
振り下ろされた腕は地面へとぶつかりドンッ!!という音と共に地面が少し揺れる。
俺は最低限の動きで攻撃を躱し、ゴーレムの振り下ろされた腕へと飛び乗りほぼ全速力で走り肩の位置までいく。
ゴーレムの肩から胸の窪みがある方へ向かって飛び、短剣でコアを攻撃した。短剣とコアがぶつかりガキンと鈍い音がしたが、どちらも傷一つ付かなった。
俺が手にしている〈不破の重短剣〉は破壊不可能なので傷付かず、コアは俺の攻撃力が足りずにノーダメージだった。
コア攻撃直後、ゴーレムはもう片方の腕で空中にいる俺を攻撃してくる。
それに対して俺は自身に重力負荷を掛けて落下速度を速くして避ける。
地面に着地した俺をゴーレムは腕で攻撃したり、足で踏みつけたりと何度も何度も攻撃してくるが余裕で全ての攻撃を躱す。
躱しながら、躱した直後に短剣でゴーレムの腕と足を何度も攻撃してみたが、ほとんどダメージはないだろう。
「《鑑定》」
――――――――――――――――――――
【名前】ゴーレム
【レベル】50
【HP】1583/1600
【MP】160/160
【攻撃】1120
【防御】1850(+100)
【敏捷】160
【魔攻】160
【魔防】160
<パッシブスキル>
【防御アップ(D)5】
――――――――――――――――――――
ほんの少しは削れてるが……このペースで削っていくのは厳し過ぎる。
短剣での攻撃を止めて、魔法攻撃に切り替えることにした。ゴーレムの足元から胸のコアに向かって土魔法攻撃の岩弾を一発撃ち込んでみると少しヒビが入った。
地面からゴーレムの胸にあるコアまでは、約3メートル以上離れている。
少し岩弾の威力が落ちているのと、コアの耐久力がスライムの核と比べて高いのもあって一発で破壊する事は出来なかった。
続けて岩弾を更に数発撃ち込んでコアを破壊した。コアが破壊されたゴーレムは両腕と両膝を地面に付けてから一分もしない内に砂のようにボス部屋の地面へと崩れ落ちた。
それから一分ほど待っていると入り口の扉と同じように、無音で出口の扉が開いた。
扉の先はセールティエリアと同じで、部屋の中心には転移柱がある。
転移柱に触れてすぐにボス部屋の前へと転移して行きたいが、扉が閉まるのを待つ。
ボス部屋の出口の扉が閉まるまでは、転移柱が使えないからだ。出口の扉はボス部屋内に誰も居なくなった状態から一分経つと閉まる事がわかっている。
扉が閉まったのを確認してから転移柱を使って転移した。
ほとんどの人なら〈岩の巨人ダンジョン〉の攻略が終われば次のダンジョン、狩り場に向かうだろうが――俺には周回がある。
ゴーレム周回頑張るぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます